『おもてなし接客術』㉖―「おもてなしの品質管理」
Posted on 2017-08-23
旬刊旅行新聞8月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉖です。
「おもてなしの品質管理」
普及しているマーケティング用語に「PDCA」がありますが、「接客」もれっきとした商品です。マニュアルの作成や研修といった「P」や「D」も大切ですが、接客・おもてなしレベルを維持するには「C」で品質管理を行うことが重要です。
〝作りっぱなしの商品〟にならないようにしましょう。過去に集中的な研修と接客マニュアル作成を担当した旅館で、再度研修の依頼を受けました。手前味噌で恐縮ですが、研修とマニュアル作成を担当してから、お客様の評価がぐんと良くなった旅館で、集中研修やマニュアル作成から4―5年経過した今でも研修の依頼があります。
さて、今回初めて私の研修を受けるという方は若干1名。それ以外のメンバーは以前にも私の研修を受けたことがあるというベテランメンバーでした。ベテランとはいえ、社員は1人。ほかは全員パートです。
口コミ評価や館内アンケートで、接客の評価は良かったものですから、さほど問題もないだろうと思って臨んだ研修でしたが、いざ始めてみると、なんとなく流れは踏襲できているものの、ところどころ抜け落ちてしまっている動作が見受けられました。また、ちょっとした質問をしてみると、途端にあたふたしたり、一気に崩壊してしまうような惨状でした。表面的には感じの良い接客ができているものの、中身が伴っていないのです。
「このレベルの接客で、良くこんなに高い評価を貰えていますね」と苦言を吐いてしまう結果となってしまいました。
研修を総括すると、行動の意義や目的が抜けている部分が多く、なんとなく小手先の接客技術に意識が向いていることがわかりました。
「目的」と「手段」を混同してしまい、目的が無いまま手段に徹してしまっているような印象を受けました。なぜこのようなことが起こるかというと、スタッフが一つひとつの動作の意味合いをしっかり理解していないのです。
単純に「マニュアルで決まっているから」という覚え方ですと、それ以上になろうとは思わないし、時間の経過とともに少しずつ動作が脱落していってしまうものです。
スタッフの一つひとつの行動や言動で、お客様にどのような印象を与えることができるか、宿側にとってどのような効果やメリットがあるかを理解できていれば、このような事態にはならないはずです。
表面的ではなく、中身を伴った接客・おもてなしを提供できてこそ安定的な評価を頂けるものです。
お客様評価も大切ですが、宿として求めるレベルが十分達成できているかという視点での評価も忘れてはいけません。お客様評価が高いと言っても、是非定期的な点検をするよう心掛けていただきたいと思います。
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株式会社観光文化研究所 井川今日子
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