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外国人の土地取得に規制のない日本

Posted on 2020-07-20

先日ご支援先にあるM&Aの会社から「お宅の旅館を買いたい韓国企業があるのですが、お売り頂けませんか?」という電話が入ったとの話がありました。
売る気も無いので、即お断りしたとの話でしたが、いま各地でこのような話が相次いでいるようです。

 

そもそも外国企業が日本の土地・建物を取得するのにどのような規制があるのか、「日本の土地は海外諸国に比べて買いやすい」という大雑把な知識位しか持ち合わせていなかったため、個人的に調べてみることにしました。


結論から言うと、日本は外国人(企業)の土地購入に関して全くの規制が無いということが判りました。日本人と同様の扱いが適用され、所有者・使用者の権利が国内外差別なく保証されているのです。所有者との売買契約が成立すれば何ら問題はないということです。

 

これは諸外国からすると異常な有り様です。

 

例えば、中国、インドネシア、フィリピン、タイは原則不可としていますし、その他諸外国も、国に事前の届け出を行い許可を受けていることを条件としたり、エリアや面積や数、期間、権利を制限しているのが普通です。
アメリカに至っては、大統領権限で売買後であっても土地買収の中止を求めることができるという徹底ぶりです。

 

翻って日本では土地の利用目的欄に「資産保有」「転売目的」「不明」等、と書いてしまいさえすれば、その後追跡されることもありませんし、所有権や抵当権の登記が任意の為、外国人が所有して所有者が不明となっている土地も少なくありません。
なお、後者の不動産登記の問題は、昨年に法務省が所有者不明の土地が増えている問題を解消するため、民法と不動産登記法を見直すと発表しています。

 

特に北海道や九州、特に対馬での中国・韓国を中心とした土地買収を耳にしますが、このような日本の制度であれば当然の流れなのだと思います。

 

本来であれば諸外国に倣って、外国人の土地購入に対しての法改正等を行うべきなのでしょうが、なぜ日本はこんなに外国人土地買収に対する規制が無いのか、何故このような状態が実体化してしまったのでしょうか。
理由には、詳細の説明は省きますが、憲法や過去のサービスの貿易に関する一般協定(GATS)が障壁となっているといいます。

 

観光業の視点でこの問題に対峙すると、巨大外国資本が入って観光施設(リゾート)開発をすれば、そもそも持っている外資のブランド力も手伝って、メディアがこぞって取り上げることもあり、莫大な集客力が期待できるでしょう。
地域観光振興に繋がり、経済の活性化、雇用の創出に繋がるというのは一理あります。

 

加えて、特に現在のコロナ禍で経営が苦しい観光関連企業程、好条件で買ってくれるというのであれば国内外問わずに売りたいと考える方も少なくないでしょう。経営者であれば従業員の雇用の維持も考えるでしょうし、一企業、個人レベルで考えれば当然の感情だと思います。ここに「土地所有」が絡むとそう簡単な問題では無くなってきます。

 

中・長期的には、その外資企業が周辺の土地を買い占めて、自国の企業や人材を誘致し、1つの“タウン化”してしまうのではないかと懸念されます。
そうなるとこれまで地元経済に貢献しているという恩恵も一切受けられなくなることが予想されます。
日本にとっては、人のふんどしで相撲を取られるばかりで、全く旨味が無いものになってしまいます。

 

またそうなってしまった観光地自体のイメージが落ちて周辺の観光地にもマイナスの影響が出ることも容易に想像できます。そうすると日本人観光客は益々遠のいていくのでしょう。
極端な考え方かも知れませんが、実質的にはその土地を乗っ取られているという構図にもなりかねません。
(※全ての外国人土地購入の案件がそうというつもりはありません)

 

日本でもファンドやREITを活用したり、M&Aを繰り返して規模の大きい経営を行っている宿泊産業・レジャー産業等の観光関連会社がありますが、こういった企業が安易に外資系企業に身売りすると取り返しのつかないことになりますし、残念ながら既にその流れも加速しています。

 

個人にしろ、企業にしろ、行政にしろ土地所有者は自分にとって得な方を選ぶので買いたい人が現れれば売ってしまうのは仕方ありません。法律や条例で規制をしないとこの流れは止められないでしょう。

 

最近の大型案件としては、IRカジノ誘致があります。
カジノは諸外国での実績のある外資系企業が行う説が有力なようですが、その場合の土地所有権がどうなるのかは注視すべき問題だと考えます。

 

本来であれば、カジノを設置場所である行政や国がその土地を持ち続けて、カジノ事業者に土地を貸借することが望まれます。

大型クルーズ客の利用も見込んでいるIR施設ですので、湾岸に設置されることが前提となります。その場合、陸から海への要所である港を外国に押さえられることで想定されるマイナスの面を十分に考慮し事前に手を打っておく必要があると強く懸念しています。

 

観光振興にブランド力や資本力のある外資企業を活用するのは、国内外からの集客に有効な手段かも知れませんが、将来的に国益を脅かす懸念がある権利がらみのことに関しては慎重になる必要があります。
後で買い戻そうにも、不動産価値も上がってしまっているでしょうし、そう上手くいくとは思えません。

これ以上手遅れにならない為に国民1人1人が制度について理解を深めることが必要と考えされられます。


※外国人の土地購入の規制等については「領土消失」(角川新書・著者:宮本雅史、平野秀樹)を参考にしました。非常に示唆に富み興味深い本でした。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子 *観光文化研究所公式HPはこちら。

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