気軽に、気安く 旅行を“辞退”できる体制を整える
Posted on 2020-10-27
10月21日、読売旅行のプレスリリースにて、10月中旬に北海道3泊4日パッケージツアーの参加者が新型コロナウイルスに感染していたことが明るみになりました。
概要は下記の通りです。
2020年10月23日 NHK「読売旅行」のツアー新たに2人新型コロナ感染確認計14人に(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201023/k10012678421000.htmlより引用)
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大手旅行会社「読売旅行」は、今月中旬に実施したツアー旅行で新たに参加者2人が新型コロナウイルスに感染していたことが確認されたと発表しました。これで参加者と乗務員41人のうち、感染が確認されたのは14人になります。
東京に本社がある読売旅行は、関西を出発し北海道を3泊4日でまわるツアーを今月中旬に実施し、22日までに参加者と乗務員41人のうち男女12人が新型コロナウイルスに感染していたことを発表しています。
23日は新たに参加者の女性2人の感染が確認され、これで感染が確認されたのは14人になりました。
このツアー旅行では、感染が確認された参加者の1人が出発前の健康状況のチェックシートで、「せきなどの呼吸器症状や味覚障害はあるか」の問いに「はい」と記入して提出したのを会社が見落としていて、観光庁は感染拡大を予防するガイドラインが守られていなかったとしています。
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秋の行楽シーズンを迎え、GoToトラベルもあり、各地で募集型ツアーをようやく目にするようになった矢先です。まさに出鼻をくじかれた格好となってしまいました。察するに、これからツアーを申し込もうとしていた人が予定を先延ばししたり、既にツアーを申し込まれていた方がキャンセルしたケースも相当数出ていることでしょう。
ところで、どうしてこのような事態になってしまったのか、2つの視点で考えてみたいと思います。
1、なぜ、会社(添乗員)が健康状況のチェックシートを見落としたのか?
2.なぜ、自覚症状のある参加者はツアー参加を遂行したのか?
まず、1ですが、添乗員の「自覚症状がある人はそもそも参加しないだろう」という思い込みや、その思い込みを前提としたチェックシートの確認作業であったためさほど重要性を意識しないまま、パフォーマンス化してしまっていたのだろうと思います。
記入された健康チェックシートを受け取る際に、病院での問診表確認のように、相手の顔を見て二言三言でも会話をしながら確認すれば見落としは防げたはずです。
また、万が一チェックシートで問題があった場合に、そのツアー参加者(3泊4日分のツアーのそこそこ大きい荷物を携帯している)を帰らせるというのは何とも気が引けるでしょうし、何も起こらなければ結果オーライという“事なかれ主義”の心理も働いたのでしょう。
このような思考回路になってしまうのを全く理解できないわけではないですし、仕方ないよなと同情してしまう方も少なくないと思います。人間が関わると、理性より【感情】【思考】を優先してしまうのは良くあることです。
今回の件は報道された断片的な情報でしか把握ができていませんが、仮に、健康チェックシートの確認&参加の可否判断を添乗員一人任せにしていたのであれば、そもそもその仕組み自体が間違っていますし、可能ならばAI等、【感情】【思考】が一切入り込まない装置にツアー参加の可否判断をさせる方が理にかなっているように思います。
2.についても、やはり【感情】と【思考】が影響していると考えます。
例えば、
・体調は悪いけれど、まさかコロナではあるまい
・せっかく旅行の日程を確保したのに行けなくなるのは嫌
・せっかく3泊4日分のツアーパッキングをしたのに行けなくなるのは嫌
・自分が行けなくなったら同行者も行けなくなってしまうかもしれない
・キャンセル料を払うのは嫌だから、意地でも旅行に行ってやる
体調不良の参加者は、このように色々な考えが頭を巡るはずです。
上から4つまでは、1.で言及したように装置に判断を委ねれば解決しますが、最後のキャンセル料については別次元の問題となります。
体調不良が原因で参加できなかった場合には、医療機関を受診する等、何らかの条件を設けてキャンセル料を免除にできるといった保険的な仕組みが普及すれば、潔く参加を見送る人は今よりもはるかに増えて、今回のような感染リスクも下がるでしょう。
観光業界として、今後のあらゆる形態での旅行活動を促進する上で、旅行を気軽に、気安く“辞退”できる体制を整えることも重要な取り組みになるように思います。
当然、観光事業者にばかり不利益を被ることがあってはなりません。(2019~2020年にかけての年末年始に起こった「旅館無断キャンセルで総額280万円」という腹立たしい事件は記憶に新しいと思います。)
業界内で、キャンセル保険の種類を拡充するとともに、加入を条件とした旅行商品などの普及を推進するのも一考の余地ありと考えます。
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株式会社観光文化研究所 井川今日子
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