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東京湾に浮かぶ唯一の無人島「猿島」の事例にみる誘客多角化の商品造成

Posted on 2021-07-19

昨年度観光庁で公募のあった「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」の実証事業成果報告がありました。

https://www.mlit.go.jp/kankocho/topics08_000187.html

ナレッジ集は実に211ページにもおよび全国各地の取り組みが紹介されていて、非常に興味深いものでした。

神奈川県在住の私はやはり同県の取り組みが気になり、チェックしていたところ、神奈川県横須賀市の
「日本遺産・国史跡の無人島「猿島」を中心とした横須賀ベイエリアの「夜間および早朝」活用事業 ─withコロナ時代、「密」を避け「質」を高めた新しい「貸切+宿泊」観光コンテンツの開発─」
がモデル事例として取り上げられていました。

猿島は東京湾に浮かぶ唯一の無人島で「都心から1時間で行ける無人島」というキャッチコピーもついていて、京浜急行線「横須賀中央」駅近くの定期船乗り場からアクセスします。
釣りやバーベキュー、夏には海水浴ができる一方で、宿泊ができない島として知られており、朝9時30分に出航して、17時00分の便で戻ってくるという日帰り滞在を楽しむというのが私達神奈川県民が知る猿島の常識です。
当然昼間に観光客が集中して混雑するため、無人島という実感を持てずに帰ってくる方も少なくありません。

それが、今回の誘客多角化事業で、
・観光客の分散
・島の新しい魅力の再発見
という視点から、夜間、早朝にも島を開放することにし、観光コンテンツを企画したようです。

夜間の無人島レストランや、ナイトツアー、カクテルクルーズ、早朝のサンライズツアー 等の旅行商品が紹介されていました。

基本的には1日1組(2名~)限定の“一島貸切”を前提にするようでして、レストランでは、
“地産地消の取り組みとして、三浦半島産の食材を活用し、フードコーディネーター監修によるフルオーダー式の食事提供や、事前にリクエストのあった演出(誕生日、記念日、プロポーズ等)に応じた空間のコーディネートも行ない、「今だけ・ここだけ・あなただけ」のプレミアムな時間をつくり出した。”
とのことですから、高額な旅行商品として十分販売が可能だと思います。
このような商品が無ければ、恐らく富裕層が猿島に目を向けることは今後も無かったでしょう。

そして感心したのが、夜間・早朝を開放するだけで、引き続き島での宿泊はさせない点です。

宿泊となれば、何かしらのハード(いわゆるハコモノ)が必要になり、少なからず島を開発する必要が出てきます。就寝自体はテントでもできるでしょうが、入浴等のことを考えると、何もしないわけにはいきません。
無人島レストランのディナーで折角富裕層を獲得できたとしても、宿泊がセットになってしまうと、それなりの設備が必要となり、かえって売りにくい商品となってしまうでしょう。

これまで守ってきた島の自然環境に影響を与えることなく、新たな時間帯を開放し、新たな客層を集客するという点では、レスポンシブツーリズム、サスティナブルツーリズムのポイントも押さえつつ、今回の観光庁の事業テーマにも合致した非常に良い取り組みと評価することができます。

是非、この猿島のコンテンツを実現・商品化して欲しいと願います。


さて、いま日本はまだwithコロナ期ですが、ここ最近ワクチン接種が進んだことにより、afterコロナ期を見通せる段階に来たと思います。

先週の米国コロラド州で行われた大谷翔平選手のホームランダービーの様子を見て、「これはコロナ前の映像か?」と目を疑うほどスタジアムは満員で、マスクを付けている人がいないという光景を目にしたり、英国がコロナ規制を撤廃しコロナと共存する方へ舵を切ったことからも、欧米諸国ではafterコロナ期に入り、旅行予約も回復してきているようです。

アジア諸国に関してはまだまだwithコロナ期の国々が多いですが、遅かれ早かれ世界的な旅行需要は確実に回復し、特にアジア諸国の経済力の向上も追い風となり、各国がオーバーツーリズム・観光公害による弊害をを真剣に考えないといけない時期を迎えます。

それに先立ち、今のうちから猿島のような視点での取り組みに着手する必要があると考えています。

昼間しか開放していないところが夜間も開放するという視点では、これまでも水族館や動物園、博物館・美術館が取り組んでいて、時には寝袋を用意して宿泊させるというケースがありました。
日中と違って夜間は人数を少人数に制限していることが多く、ゆっくり作品を見られるだけでもプレミアム感がありますが、それだけでなく、生き物や作品の夜間の表情を楽しめるというこれまでに見たことが無いものを見られるという希少性があり、それが自ずと新しい魅力の再発見につながります。

工場地帯の夜間の煌々とした照明を観光夜景化したり、農村地の民家に泊まる農泊等も良い事例です。

このように、これまでの常識に囚われることなく柔軟な視点を持った誘客多角化が各地で求められています。

まずは日本政府、そして各観光地、観光施設、宿泊施設が、レスポンシブツーリズム、サスティナブルツーリズムの視点を踏まえながら、「観光客の分散」と「新しい魅力の再発見」につながる施策を考えて、オーバーツーリズム、観光公害に備えていかなければなりません。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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