blog

人を介さないデジタル化を推進するほど、高度な人材育成が必要になる

Posted on 2021-08-16

『スマホの付属アプリにホテルのチェックイン機能を搭載、ホテルの業務フロー がどう変わるかを考えた』
―――
アップルは2021年6月、同社のウォレットアプリに、ホテルのキーを格納する新機能を加える計画を明らかにした。モバイルでのチェックイン手続きが簡単になり、宿泊客にとっては大きな前進だ。
―――
https://www.travelvoice.jp/20210807-149319
より抜粋

最近のニュースでは上記のアップルの計画発表があった様に、宿泊業界でもデジタル化が進んでいます。

ひと昔前から遡れば、
・予約
・チェックイン
・ルームオーダー
・レストランオーダー
・混雑状況の可視化
・精算
・チェックアウト
等、場面によっての導入率の開きはあれど、あらゆる場面でのデジタル化が進んでいるのは皆様ご承知の通りです。

デジタル化をする主なメリットには以下のようなものがあります。

1.業務効率向上≒人件費の削減
2.待ち時間を極力無くすことができる≒単価が上がる
3.証拠が残る
4.間違え(人的ミス)を減らせる
5.クレーム(トラブル)を未然に防げる

オンライン予約は予約内容の証拠が残ります。
一方、電話予約の場合は、会話録音機能を導入していない限りは、口頭でのやり取りで何の証拠も残らないため、予約の齟齬が生じれば“言った言わない”のトラブルになるのが目に見えています。

チェックインも、例えばお客様のスマホがホテルのキーになれば、客室を間違えるというリスクが限りなくゼロになります。チェックイン処理のし忘れも無くなるでしょう。

ルームオーダーを内線電話ではなくデジタルでオーダーするようにすれば、注文内容が提供されるまでにかかる時間の短縮はできないかもしれませんが、注文するまでにかかる時間は限りなくゼロにすることができ、「お客様を待たせる」という行為を極力減らすことが可能となります。

従来は、“注文の電話対応に待たせる”リスクと“注文内容提供に待たせる”リスクという2つのリスクがありましたが、それを1つに減らすことができるのです。

またルームオーダーシステムをPMSと連動させておけば、従来のように、手書き伝票から手動で入力する手間を省くことができ、それに付随するヒューマンエラーを防ぐことができます。

レストランでのオーダーシステムもルームオーダー同様、「お客様を待たせる」場面を1つ少なくし、ヒューマンエラーを未然に防ぐことができます。併せて、オーダーのタイミングを気にしなくて済むことは単価向上にもつながります。例えばドリンクを頼みたい時になかなか注文できない状況が続くと食事とのタイミングも合わなくなり、『もういいや』と注文を断念するケースも出てきますが、タイミング良くオーダーできれば、プラス1杯の売り上げに繋がります。

特に今回の新型コロナウイルスの影響で導入が加速しましたが、混雑状況を可視化するシステムも、「お客様を待たせる」場面を減らすことに大いに貢献しています。
客室からレストランや大浴場等の混雑状況が把握できれば現地で苛立ちを募らせながら待つ必要が無く、空くまで客室で快適に過ごすことができるのです。

精算では、自動精算機や事前オンライン決済システムの導入が進んでいます。特に事前オンライン決済システムでは、滞在中に精算専用のURLが送られてきて、そこにアクセスして決済を完了させることができます。
従来はチェックアウト時間ギリギリまで滞在しようとすると、フロントの長蛇の列に並んだり、事前精算で朝の早い時間にフロントに立ち寄って会計を済まさねばなりませんでしたが、それが客室内から瞬時に精算を済ませることができるのです。
ここでもやはり「お客様を待たせる」場面を減らすことができます。

この自動精算機や事前オンライン決済の導入はホテル・旅館側の会計・経理業務の効率化にもなります。
オーダーシステムと連携されたPMSからは自動で料金明細が出力され、それが“人手を介さずに”精算されれば、現金チェックや仕分けの手間が大幅に削減されます。

チェックアウト処理も自動化されて、清掃スタッフに通知が行くようにすれば、即座にチェックアウト済の客室に清掃に入ることができ、業務時間の短縮に繋がることは言うまでもありません。


このように、デジタル化の恩恵は非常に大きく、導入費用やランニングコスト等の問題さえクリアできれば採り入れない手はありません。
対顧客視点では「待たせる」というクレームの温床となる行為を省いたり少なくすることができ、社内に目を向ければ業務効率な大幅な向上につながります。いまでこそ違いますが、万年人手不足に悩まされている宿泊業界においては少ない人手で効率良く運営できるという点だけでも十分価値があります。

“デジタル化”とは“人を介さないこと”と言い換えることができます。
皮肉にも、“人を介さないこと”でこれだけのメリットが生まれるのは紛れもない事実です。

しかしながら、この“人を介さないこと”でヒューマンエラーを限りなくゼロに近づけることが宿泊業界のロールモデルとされてもてはやされてしまうと、各宿泊施設の差別化が、立地(景色・景観)、施設、料理でしかなくなってしまい、接客やおもてなしの評価基準が脱落してしまうことになります。
宿泊特化型のホテルなら良いですが、特におもてなしを売りとする旅館には不相応です。

人を介さなければ、感動する接客体験等は生まれようがありません。
接客で差を付けるためには、スタッフを教育した上で、人を介す場面を設ける他ありません。

デジタル化を推進すればするほど、スタッフのスキルアップが求められます。
導入したシステムが上手く機能しないときにお客様はスタッフに質問するでしょうから、これまでアプリやシステム等に無縁だったスタッフでさえも少なくとも初期レベルの対応や説明ができる必要があります。

それに加えて旅館では、スタッフが今まで対応していたことの多くがデジタルに置き換わる分、いままで以上にスタッフがお客様に積極的にかかわり、おもてなし力やコンシェルジュ的役割を発揮する必要があるのは明らかで、そこまで体制を整えられてこそ、ホテルとの差別化ができ、選ばれる旅館になることができます。

人を介さないデジタル化をすればするほど、高度なスタッフ教育が必要になるというのは興味深いものです。

 

******************************************************************************

株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。

*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。

*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる!おもてなし接客術」

Comment









2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

アーカイブ

サイト内検索