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『観光ガイド』が今後も価値を提供し続けていくためには

Posted on 2021-12-06

先日、秋田県由利本荘市の観光ガイド向けの研修を担当させていただきました。

対象者は、鳥海山、桑ノ木台湿原等の有償ガイドとして活躍されている方です。元教師や元専業主婦等、様々な経歴をお持ちの中高年の方がメインでした。

さて、通訳ガイドという職業は、皆さんご存じの通り、観光地にまつわる歴史・地理他、幅広い知識を以って案内しなければなりません。

“訪日外国人向け”ガイドという観点では、2018年に『改正通訳案内士法』が施行されるまでは、元々「通訳案内士」の国家資格を持った人しか有償の通訳ガイド業ができませんでした。

このことからもわかるように、ガイド業はその地域の情報を正確に伝える必要があり、ガイドの質が担保されないと務まりません。
またガイドの予約が入れば、ガイドする場所の最新の状況を把握するために、現地調査に出向くことも少なく無いようです。

そもそも観光ガイドを頼むような旅行者は、事前にご自身である程度のことを調べた上で、観光ガイドにはより踏み込んだ質問をしたい、ネットやガイドブックには載っていない情報を知りたいとお考えの方も少なくないようです。

屋外ガイドの場合は当日の天候によっては急遽キャンセルになることもあり、折角の準備が水泡に帰す可能性も多々あります。
このように非常に高い能力や不断の努力が求められるのが観光ガイドの仕事です。

ところで、総務省の令和2年版情報通信白書の「情報通信機器の保有状況」によると、
―――
2019年における世帯の情報通信機器の保有状況をみると、「モバイル端末全体」(96.1%)の内数である「スマートフォン」は83.4%となり初めて8割を超えた。
―――
との記載があります。

これだけスマートフォンが普及すると、観光地を訪れてわざわざ有償の観光ガイドを手配する必要性が薄れてくるのであろうことは容易に想像がつきます。

例えば由利本荘市の観光協会のサイトを訪れれば、観光スポットの情報が充実していますし、空港や駅の観光案内所のパンフレットラックに置かれている紙媒体の観光ガイドの表示やダウンロードもできてしまいます。

各種ウェブサイトからアクセスできる情報は無料かつ24時間365日アクセスできるのに対し、ガイドを手配すると有料かつガイドを依頼したい日の遅くとも2週間ほど前迄には予約を完了させる必要があります。

様々な情報が無償で手に入る現代。そして、交通や宿泊の予約手配が間際化・直近化している今の旅行形態からすると、通訳ガイドを手配する旅行の優位性がなかなか見出しづらくなっています。

また自分から情報にアクセスする場合は、自分の関心がある項目だけを集中的に調べることができますが、ガイドを依頼する場合は「どのような観光案内が聞けるか当日行って(会って)みないとわからない」という一種の賭けのような状況になってしまいます。

先述の通り、観光ガイドの皆様は様々な職歴をお持ちで、それぞれ得意分野も異なります。歴史ガイドが得意な方もいれば、植物ガイドや子連れ旅行客の対応が得意な方もいらっしゃいます。

本来「(旅行者が興味・関心がある)〇〇の分野に精通している」とか、「この客層の対応が得意」等の条件を指定してガイドを選べれば良いのですが、現状ではこのような指名制度は取り入れていない観光地がほとんどの様です。

当日割り当てられたガイドが相性の合うガイドであれば良いですが、相性が合わない場合は、その日の半日~1日が台無しになってしまう危険性もあります。

いまや各地の観光地で旅行者のGPS情報を使って音声ガイドを用いた観光情報提供システムの実証実験が推進されているというニュースも耳にします。
例えば、ある観光スポットに足を運ぶと、自動で観光案内が表示されたり音声ガイダンスが流れるような類のものです。
観光ガイドとの相性を懸念する旅行者はこのようなシステムの方が選びやすいのかも知れません。

現代のような時代の変遷の渦中において、有償観光ガイドが今後も価値を提供し続けていくためには、ガイドの接客レベルを上げてやコミュニケーションスキルを磨く他ありません。

ウェブサイトにアップされている情報や音声ガイドで、知識を深めることは出来ても地域の印象を良くすることは出来ませんし、旅行客それぞれの状況を踏まえた最適解を提示してくれることもありません。

文字や音声で一方的に発信される情報に勝るためには、双方向のコミュニケーションから痒い所に手が届く情報をテンポ良く提供できることが求められます。

例えば、
・ガイドをしているその時期、その時刻に見える景色に価値を見出したガイドをする
・天気に恵まれず絶景が臨めなかった時の為に「晴天だとこんな景色が見られるんですよ!」と動画や写真を準備しておく
・「いま見えている景色は別の季節だとこのような景色になるんです」と動画や写真を準備しておく
・子連れの場合は、子供にわかりやすく喜びそうな案内の仕方にやツール(虫 眼鏡等)を用意しておく
・ガイドの後の行き先や滞在地、明日の予定を聞き出し、そのルート上にあるいま話題のスポットを紹介する
・自分の得意分野を磨き、興味がある旅行客には惜しみなく情報提供し、他者との差別化を図る
といった具合です。

由利本荘の観光ガイドの皆様には研修中に実践練習に取り組んでいただきましたが、相手の状況を考えた案内や対応が非常に良くできており、さすがプロのガイドの皆様だと感心したことを覚えています。


【DX】というキーワードがまん延する今日です。
今回の話は観光ガイドに限った話ではなく、様々な接客現場で同じような局面を迎えています。
接客業で働く皆様は「デジタルでは提供できない、人間(自分)にしか提供できない価値とは何か?」を常に問い続けて、益々市場価値・存在価値を高めていっていただきたいと思います。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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