「2020年11月」の記事一覧

GoTo期間中の“普段とは異なる”属性のお客様へどう対応するか?

Posted on 2020-11-25

GoToトラベルキャンペーン期間中は、普段とは異なる属性、明確に言及すると、普段とは異なる“旅行予算帯”のお客様も多くお見えになります。

言わずもがなですが、客単価4万円の宿に旅行予算が2万円のお客様がお見えになるし、客単価2万円の宿には1万円のお客様がいらっしゃっています。あるいは、普段は1泊朝食付きで10万円の海外のホテルにしか泊まらないようなお客様が、海外旅行が思うようにできない現在、1泊2食付きで5万円の宿に泊まりに来ています。

上記の括りでGoToトラベルキャンペーン期間中のお客様を分類すると、

1.普段通りの予算帯の宿に宿泊するお客様

2.普段よりも高い予算帯の宿に宿泊するお客様

3.普段よりも安い予算帯の宿に宿泊するお客様

の3分類に分けられます。

1.に関しては普段通りの客層であって、リピーターも含まれます。特段の注意は必要のないお客様です。トラブルが起こりやすいのは、2.3.のお客様であるのは言うまでもありません。

普段とは違う客層のお客様がいらっしゃるということは、それだけ新規客の割合が高くなることを意味します。

客単価が約4万円、平常時のリピーター比率が全体の約50%の御支援先(A旅館)の事例ですが、この10月のリピーター比率はGoToトラベルキャンペーンの影響により29%にまで落ち込みました。

仮に1日の平均宿泊人数を10組30名とすると、普段は5組15名の新規客と5組15名のリピーターを接客すれば良いのですが、いまは7組21名もの新規客と3組9名のリピーターを接客しなければならないという状況が続いています。

新規客とリピーターでは、館内・客室案内等にかかる時間が圧倒的に違いますし、宿側が把握できているお客様の情報量にも各段の差がありますので、一般的には新規のお客様はリピーターよりも時間を使うし、気も遣うという構図になります。

新規客が多い=相手の“常識(認識)”が判らない からこそのトラブルも少なくありません。

私の勝手な憶測で上記2.と思われるお客様を受け入れたケースを紹介します。客単価が4万円前後の御支援先(B旅館)の事例ですが、夕食を配膳する人員不足により、当該日は一泊朝食付きプランを販売していました。一泊朝食付きのプランでも2万円弱という金額になりますが、販売すれば直ぐに予約が入る人気温泉地の宿です。

あるOTAからの一泊朝食付きのプランで滞在したお客様からクチコミ評価1点を付けられたのですが、その投稿内容が「夕食が付いているものと思った。夕食が付いていない旅館等あるのだろうか」というものでした。プランタイトルや内容の表記にわかりづらいものになっているなら反省&改善の余地もありますが、今回のお客様が初めてのケースであり、そういう訳ではありません。

宿側に非が無いにもかかわらず、お客様の勘違いにより評点が下がってしまったということがありました。

お客様の“予算帯”や、そのお客様の“常識”からすると、「旅館である上、この金額なら朝食が付く」ということなのでしょう。

続いて、やはり私の勝手な憶測で上記3.と思われるお客様を、御支援先(A旅館)が受け入れたケースです。

新規客かつ連泊のお客様に、2日目にお部屋のお掃除やリネン類の交換、アメニティの補充の為にお部屋に入って良いものかどうかを確認しようと「お部屋はいかがなさいますか?」と聞いたところ、「そのままにしておいてください」と言われたそうです。

もし皆さんがこちらスタッフの立場であったら「そのままにしておいてください」と言われた場合、どのような対応をしますでしょうか?ちなみに私は話を伺いながら、「そのままにしておいてください」と言われたということはお部屋に入らなかったのだろうな、と推測しました。

その推測通りこちらのスタッフも、「そのままにしておいてください」ということはお部屋に入ってほしくないということだ、と判断し、お客様が外出先から戻られてからリネン類の交換やアメニティ類を届けにお部屋に伺おうと考えていたそうです。

ところが、お客様が外出から戻ってお部屋に入るなり「ゴミの回収やタオルの交換も何もしていないとはどういうことだ!」と物凄い剣幕で怒られたそうです。お客様曰くは、他の宿では「そのままにしておいて」と伝えても、ゴミの回収やタオルの交換位は当たり前にしている。とのことでした。

加えて、金曜日チェックイン、日曜日チェックアウトの2泊3日の滞在で、1泊目よりも2泊目の方が高い土曜日料金での宿泊であったことも怒りを助長する要因となってしまったようで、「1泊目よりも2泊目の方が高い料金を支払っているのにタオルも何も交換しないなんておかしいでしょ!」とまで言われたようです。

恐らくこちらのお客様は同等クラス或いはそれ以上の国内外のホテルに泊まり歩いており、「Don’t disturb」という看板をドアノブに下げない限りは部屋に入ってタオルの交換等必要最低限のことをするのが当たり前、というホテルタイプの“常識”をお持ちのまま旅館に泊まりにいらしたのだと思います。「そのままにしておいて」というのは荷物や私物、テーブルの位置を変えないでという意味だったのかも知れません。

このように、国内の観光需要喚起の為に政府や自治体からの多額な旅行補助が出ていたり、海外旅行という旅行スタイルが制限されている間は、普段とは異なる“予算帯”で、異なる“常識(認識)”をお持ちのお客様も多くお見えになります。

今の時期に接客・おもてなしをする上では、このことに留意しなければなりません。

昨年までのような平常時に戻れば、2.と3.に属するお客様の比率は自ずと少なくなります。つまりは、1.に属するお客様と比較すると、2.と3.のお客様はリピーターになる確率が圧倒的に低いと言えます。

だからと言って「どうせ普段のうちの宿の客層じゃないし」とか「GoToトラベルキャンペーンが終わったら二度と来ないだろうし」等と考えてぞんざいな対応をするのはお勧めしません。

GoToトラベルキャンペーン期間中は、これまで接点を持てなかった沢山のお客様と出会う絶好のチャンスでもあります。先述の通り、せっかく時間を掛けて接客をして認識の共有を図ったお客様ですので「リピーターになってもらおう!」と思って対応しないのは勿体無いことです。

平常時にお越しになるお客様(リピーター)と比べて利用頻度は少ないかも知れませんが、目の前のお客様の常識(認識)を理解・共有しようと努めて、再度足を運びたくなる宿として印象に残せるよう、普段以上のきめ細やかなおもてなしを提供していきたいものです。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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近い将来・再発するであろうオーバーツーリズムを見据えて

Posted on 2020-11-11

中華街を歩いて「オーバーツーリズム(観光公害)」という言葉を懐かしく感じました。

コロナ以前は週末に中華街を歩くと、ちょっとしたお祭りのような混雑具合で、中華まんを食べ歩きしている人や自撮り棒を持ちながら歩いている外国人をかき分けながら歩いた記憶がありますが、いまはそんなに気を付けなくてもスムーズに歩ける状況でした。

中華街内にある民泊施設の入り口には「空室」の看板が掲げられ、恐らく去年までは連日満室で、周辺とのトラブルも多かったのだろうなと憶測が及びます。

今回は足を運びませんでしたが、2020年5月と緊急事態宣言の最中にオープンしたハイアットリージェンシー横浜は、売上計画の大幅な下方修正を余儀なくされていることでしょう。

オーバーツーリズムといえば、海外では、スペインのバルセロナやイタリアのヴェネツィア、クロアチアのドゥブロブニク等が有名です。人口の数倍~数十倍を超える観光客が各地を押し寄せ、環境問題や地価の高騰を含んだ住環境の悪化を招いていて、住民が「観光客に乗っ取られた」「観光客が町を殺す」とさえ表現している地域です。

日本のオーバーツーリズムは、ご承知の通り、近年京都や鎌倉をはじめ各地で問題となっていました。

京都では駅と寺院を中心とした観光地を結ぶ路線バスが観光客で混雑しすぎて、それを通勤・通学に利用している市民に影響が及んでいたり、国内外資本の宿泊施設の乱立で土地の高騰等も問題となっていました。観光客の増加やそれに伴うトラブルによって「祇園白川さくらライトアップ」が安全の為に2年連続中止になるといった事態は記憶に新しいと思います。

鎌倉でも、江ノ電の鎌倉駅での大混雑が問題となり、京都と同様に日常的に利用している市民に迷惑が及んでいたり、閑静な住環境を求めて移り住んだ市民からの不満が続出していました。

他にも、大型クルーズ船が停泊するようになった博多港や長崎港では、クルーズ客の地域に及ぼす問題(人は降りるけれども、お金は落ちない)も物議を醸していたことで有名です。

そんな最中、全世界的に“コロナ禍”に苛まれ、出入国もままならない今となっては、2019年には年間3188万人を記録した訪日外国人観光客が、2020年5月単月では1,600人にまで落ち込みました。直接的に被害を被った人でさえ「そんなこともあったなぁ」と懐かしく回想しているかもしれません。

ここで考えなければならないのは、コロナ以前にオーバーツーリズムで悩まされていた地域では、訪問客が激減している今のうちに、観光客が戻ってきたときのことを考えて対策を講じる必要があるということです。

例えば、諸外国の例を見ると、

バルセロナ

・民泊の取り締まり、摘発を強化する住宅法の改正

・観光客の宿泊を目的としたマンションの固定資産税の引き上げ

・観光客向けマンションの認可の中止

・一定地域での新たなホテルの建設禁止

・バル、カフェ、レンタサイクル、24時間営業のスーパーの開業の抑制

 

ヴェネツィア

・クルーズ船の市街地への入港規制を設ける

・住民以外の立ち入り禁止区域を設ける

・宿泊税に加えて、「訪問税」を設ける

 

クロアチア

・一日辺りのクルーズ船観光客の受け入れ人数に制限を設ける

等があります。

 

日本の各観光地もオーバーツーリズムの問題をそのまま放置しておいたわけではなく、慢性化する交通渋滞が問題となっていた京都ではバスの運賃を上げる一方で鉄道の運賃を下げて鉄道への誘導を促したり、鎌倉では江ノ電を市民を優先的に乗車させるといった取り組みを導入しました。

上記で挙げた国内外の対策事例も、導入して問題が解消されたかというとそうではなく、1つ1つの対策が少しずつの成果を挙げながらトライ&エラーを繰り返しているといった状況です。オーバーツーリズムの問題解決には、時間を掛けて複数の施策を軌道修正しながら組み合わせていくことが求められます。

いつになるかは明言は出来ませんし、期待を込めての意見となりますが、2019年のように国内外からの観光客が大挙して押し寄せる状況に戻ったときに、これまでよりも周辺住民が快適に過ごせる居住地・観光地になれるよう、国内外の事例を検証・施策の導入準備をしていく必要があると考えています。

 

※オーバーツーリズムの事例や対策等については「観光公害」(祥伝社新書・著者:佐滝剛弘氏)を参考にしました。非常に示唆に富み興味深い本でした。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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