「2021年04月」の記事一覧

Googleホテル予約リンクの掲載無料化が、宿泊予約の勢力図を書き換える

Posted on 2021-04-29

グーグルがそれまで有料広告扱いだったホテル予約リンクの掲載を無料化したことが話題となっています。

Googleホテル検索
https://www.google.co.jp/travel/hotels

このサイトから宿のページを開くと、
【広告・注目のオプション】と【すべてのオプション】という欄が設けられ、この【すべてのオプション】という箇所が無料で開放されたということです。

【広告・注目のオプション】の箇所は、入札価格が高い順に表示されるリスティング広告方式ですが、【すべてのオプション】ではオーガニックリスティング方式で、閲覧数や価格の安さが上位に掲載される仕組みだそうです。

無料枠【すべてのオプション】に掲載される予約エンジンを全て表示させるにはワンクリック(ひと手間)加えなければならないのが難点ですが、少しでも安い価格で泊まりたいというユーザーにとっては容易い手間でしょう。

この【すべてのオプション】に掲載される為には、グーグルにフィードを提供しているサプライヤー(Googleホテルの掲載パートナー)になる必要があります。

国内外のOTAの多くは既にGoogleホテル検索に掲載されているため、これまでもGoogleホテル検索を経由して予約が入っていたでしょう。
どこのOTAの手数料も似たり寄ったりの為、宿泊施設側はGoogleホテル検索を経由してどこのOTAから予約が入ったかなんてさほど気にしていなかったと思います。

ところが、この掲載無料化によって、Googleホテル検索をした際に、OTAと並ぶ格好で自社サイト(直販)で販売している料金を提示し、自社サイトに導線を設けることができるようになりました。
(※自社サイト(公式サイト)の予約エンジンが当該サプライヤーになっていることが条件です。)

従って、自社サイトの予約エンジンで販売するプラン料金に価格優位性を持たせて販売すれば、特に少しでも安い価格で泊まりたいと考えるユーザーを誘導することができ、余計な手数料を取られずに直販を推進することができるようになります。

更に言うと、Googleのプラットフォームで予約・決済までが完結する【Book on Google】も日本国内で導入が始まりました。宿泊施設側にとっては、手数料10%、CRMの機能も無さそうなので、現時点ではさほどの旨味はないかも知れません。
特に料理内容や食事スタイル、特典を内包した“宿泊プラン売り”が主流となっている旅館との相性はまだまだ悪そうです。

一方で、“部屋売り”が主流のホテルのユーザーにとっては抜群に相性が良いと思っています。OTAのサイトに遷移せずに、Google上での数クリックで予約・決済が完結するのは、ユーザーにとって魅力に感じるでしょう。

いまや日本の検索エンジンシェアでGoogle検索が占める割合は、PCでは80%、スマホでは75%と言われています。
このようなGoogleが主動するホテル検索および予約・決済のプラットフォームの改良は、宿泊施設を取り巻く環境を劇的に変化させています。

それだけでなく、ユーザー(宿泊客)の宿探しや予約スタイルの潮流が変わってきているのも注目すべき動向です。
これまで通り宿の公式サイト(=宿側が“厳選して、選別して”掲載する写真や情報)を見はするものの、SNSが普及したいま、実際に宿泊したユーザーのSNS投稿を必ずチェックします。

それもそのはず、宿側が自社サイトに掲載しているリニューアル直後の客室やお風呂の写真、季節外れの料理のイメージ写真よりも、自分が宿泊する1週間前にSNSにアップロードされた写真を見る方がより鮮度の高いリアルで信頼できる情報を得ることができるのです。

いま現在はSNSを使い倒している世代に限られるとは思いますが、上記の理にかなった考え方は今後益々普及し、例えば「Instagramから宿を知り予約」という予約スタイルが確実に増えてくるでしょう。
宿選びにOTAを使わないという消費行動が主流になる日もそう遠くないかもしれません。

翻っていまの宿泊予約の主流であるOTAに言及したいと思います。

国内OTAの動向はいうと、タイムセールのオンパレード・・・。
SALEの乱発を繰り返すしか策が無いのか?というのが私の印象です。具体的には、〇〇SALEの終了日の翌日から別の●●SALEが始まるといった具合で、常に何かしらのSALE企画が走っているという状況で、まるでSALEの希少性が無くなっていて、宿側はもちろんのこと、ユーザー側も飽き飽きしているのではないかと思います。

目新しい動きとすれば、近々楽天トラベルがユーザー画面をリニューアルして、写真や動画を中心とした見せ方を変えるというぐらいでしょうか。
その点、SNSに注力しているReluxは他のOTAと比べて特長が出せていて差別化できているというのが私の個人的な意見です。

海外OTAに関しては全世界が対象となるので、集客母数が国内OTAとは比にならないくらいのユーザーを有している上、各サイトごとに得意とする国やエリアが異なる為参画する価値はありますが、SALEやポイント付与でしか顧客を引っ張ってこられない国内OTAは特に、今後益々厳しくなっていくものと予想されます。

Googleが宿泊予約の勢力図を書き換えようとしているこの時流に乗って、予約エンジンだけでなく、利益率を意識した直販強化の策を取っていくことが求められます。
今後のOTAとの付き合い方の見直しや、自社サイトからの予約増のためにどのような改善点があるか、どのような施策が取れるかをしっかり検討する必要があります。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㊽―「接客の極意・3つのポイント」

Posted on 2021-04-21

旬刊旅行新聞4月11・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊽です。

「接客の極意・3つのポイント」

今年の新入社員研修では「接客の極意・3つのポイント」をお伝えしています。

 1.接客は掛け算である
 お客様は、無意識にも常に宿を評価していますが、評価の仕方は足し算・引き算ではなく、掛け算であるということです。

 たとえば、身だしなみはしっかりできているけれど表情に問題があるスタッフには、身だしなみ◎(2点)、表情×(0点)というように評価されます。

 この時の計算(評価)式は、「身だしなみ(2点)+表情(0点)=2点」ではなく、「身だしなみ(2点)×表情(0点)=0点」となることです。

 他の項目でいくら◎や○(1点)の評価を得られても、1項目で×の判断をされると、評価は0点にしかならないということです。

 

 2.接客業は信頼業である
 顧客満足とは、リピーターやクチコミを生み、集客や売上を左右する非常に重要なものです。この顧客満足の獲得とは、お客様の信頼を獲得することを意味します。

 信頼は【失わない】ステップと、【獲得する】ステップの2階建てだと考えています。まずは、常識のある対応を通して【信頼を失わない】体制を徹底したうえで、お客様のようすを観察しながら咄嗟の対応をすることで【信頼を獲得する】という段階に進むことを推奨しています。

 

 3.コミュニケーションを正しく理解する
 そもそもコミュニケーションには「気持ち・意見などを、言葉などで相手に伝えて通じ合う、社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達。動物個体間での、身振りや音声・匂いなどによる情報の伝達」という定義があります。

 つまりは「気持ちや意見、知覚・感情・思考の伝達」というのがコミュニケーションであり、客室案内や料理説明はコミュニケーションとは言えません。

 スタッフがお客様を気遣って行動したことや、興味や感心を持って質問したことこそがコミュニケーションです。

 また、言葉だけでなく、身振りや音声、においもコミュニケーションの手段です。

 やはりスタッフ自身の気持ちや意見を表すもので、相手にとって失礼な状態であれば、相手を侮辱していることにもつながりかねません。非言語の部分からも、お客様を尊重している姿勢を伝えなければなりません。

 ところで、宿泊業界でも生産性向上やコロナ対応を目的として、自動精算機やチャットボット、ブュッフェ会場での自動盛り付け機などの導入が進んでおり、人を介さない接客場面が徐々に増えつつあります。

 そのようななかで、わざわざ生身の人間(スタッフ自身)がする接客というのは、どういう意味を持つのかを考え、自分自身が対応する価値を最大限に発揮してほしいと願っています。

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ワクチンパスポートとデジタル健康証明パスポート

Posted on 2021-04-12

様々な「経済・社会活動を活性させる切り札」としてのワクチンパスポート、「旅行再開の切り札になる」としてデジタル健康証明パスポートが取り上げられています。

ワクチン接種が最も進んでいるイスラエルでは、ホテル、ジム、レストラン、バー、コンサートに行くのにワクチン証明を必要とし、EU諸外国では入国規制を緩和するために、ASEAN諸国でも導入に向けての議論が進んでいます。
一方、アメリカではつい先日、差別やプライバシー・権利保護の観点から「ワクチンパスポート」導入しないと政府が決定しました。

翻って日本はというと、当初パスポート導入に否定的な見方でしたが、諸外国に倣って導入を検討する姿勢になりました。

ところで、4月8日時点の日本国内のワクチン接種は、
・必要回数のワクチン接種完了者が42万人(人口比:0.3%)
・ワクチンを 1 回以上接種者が107万人(人口比:0.8%)
 (Google>新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)>統計情報より)
という状況です。

4月9日現在、人口100人あたりの累計接種回数は、首位がイスラエルの112.5回であるのに対し、日本は僅か1.2回。主要先進各国に大幅な遅れを取っている状況です。
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/#cumulativeVaccinationsPer100000ByCountry

国内でのワクチンパスポート導入の是非ですが、COVID-19のワクチンを接種するか否かの議論でも、「ワクチンパスポートの有無によって旅行や消費活動が妨げられてしまうのであれば、接種する」という意見も耳にします。
従って、ワクチン接種を促進したいのであればワクチンパスポートを導入するのが効果的だと考えます。

仮に導入された場合に、旅行・観光・宿泊業界がいかに活用するのか、業界全体としてパスポートの提示を義務化するのか、それとも個々の施設に委ねるのかも気になるところです。


続いて、デジタル健康証明パスポートですが、日本ではTeCOT(海外渡航者新型コロナウイルス検査センター/厚生労働省と経済産業省が運営)が医療機関からの委託を受け発行することになります。
国内外の航空会社を中心に導入が進んでいるスイスの財団が運営するコモンパスなどの国際規格への対応も視野に入れているとのことです。

経済産業省の「海外渡航者新型コロナウイルス検査センター運営委員会」の資料を見ていると、当初は渡航者自身の体温や症状・感染者との接触の有無に関する記述があったものの、これらは削除し、「健康状態」ではなく「陰性検査結果」を証明する内容に変更して進められているようです。
https://www.meti.go.jp/shingikai/external_economy/overseas_travelers/pdf/007_03_00.pdf 他)

ちなみに、TeCOTモバイルアプリ・デジタル証明機能が先週リリースされ、試しにアプリをダウンロードしましたが、ログインごとに登録メールアドレスに届くワンタイムパスワードを入力する必要があったり、ログインパスワード以外に4桁のPINコードの入力、生体認証も求められたりと、セキュリティ面はしっかりしているという印象でした。

さて、この仕組みが構築されればPCRの陰性を条件にした海外渡航をスムーズにできるようになるはずですが、実際にボーダレスに運用が開始される迄には相当な時間がかかることが予想されます。

というのも、まずは国ごとに承認しているワクチンが異なること。
日本では米ファイザー社と英アストラゼネカ社のワクチンを承認し、接種が進んでいるわけですが、逆を言えばモデルナ社やJ&J社他のワクチンは未だ承認されていません。
ワクチン接種をしていても、訪問先の国で承認されているワクチンでなければワクチン接種証明にならないということになるのでしょう。

それだけでなく、国ごとに求める様式も異なります。
例えば、
・米国、英国、オーストラリア、インド、台湾、カンボジア、チリ等は、陰性証明があればOK。<様式A>
・ロシア、オランダ、インドネシア、マレーシア、エジプト は<様式A>+署名・押印(医師、医療機関)等
・ベトナムは <様式A>+署名・押印、渡航情報詳細(滞在先)
といった具合です。

従って、現時点でデジタル健康証明パスポートのプラットフォーム自体は機能していても、国ごとに求める条件が揃っていないため、運用はできない状況です。

ワクチンの接種が進めば、近い将来、国内旅行はもとより海外旅行も夢ではない!、と思っている人も少なくないかも知れませんが、当面先になるものと考えています。
諸外国との出入国をスムーズにするためのこれらの摺り合わせを、今から進めて行くことを考えると、日本国民のワクチン接種希望者全員に接種が完了するのと、このプラットフォームが活用される段階になるのどちらが先になるのか等と憂慮してしまいます。

恐らくは、相手先国の国内のワクチン接種完了者の割合も渡航条件となるのでしょうから、先述の通り日本が先進国に比べて大幅に遅れを取っていることを考えると、日本にインバウンドの波が押し寄せるのは、世界的に海外旅行が再開してからしばらく後になってからになるのだろうと懸念します。
日本人が海外旅行に出られるのも然りで、まだしばらくは、国内のお客様の集客に専念せざるを得ない続きそうです。


ところで、ワクチン接種は旅行再開の切り札になることは間違いないでしょう。
“BEFORE COVID-19”の国内旅行を牽引していたのはアクティブシニアの客層であった訳で、その客層が感染を懸念して出歩かなくなっているのは旅行業界にとって大きな痛手となっているのは皆さんご承知の通りです。

日本ではまだまだワクチン接種対象者が限られており、ワクチン接種を拒む人の割合がどの程度あるのかは見えてきませんが、ワクチン接種に懐疑的な方も少なくないはずです。

観光・旅行・宿泊業界の発展・再起のことを考えると、業界を挙げてワクチン接種を促進するような働きかけをしていく必要があるのかも知れません。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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