「2021年06月」の記事一覧

ワクチン接種後の旅行は、『安近短』から『高遠長』へ

Posted on 2021-06-22

高齢者の優先接種に続き、旅館業界でも職域接種の話を耳にするようになり、いよいよ身近にワクチン接種者済者がいる環境になりました。

先週は、高齢者が20名程集まって、屋外でマスクを着用したままグラウンドゴルフを楽しむ光景を目の当たりにして、徐々にかつての日常が戻りつつあることを実感しました。
恐らく皆さん1回目のワクチン接種が終えられたからのことでしょう。
※こちらのグラウンドゴルフを提供するご支援先の宿では、「このところ、 屋外で愉しめるグラウンドゴルフの予約の動きが良くなっています」と仰っ ていました。

今回の新型コロナウイルスが私達の生活をガラリと変えたように、今回のワクチン接種も私達の生活をガラリと元に戻してくれると期待されています。

例えば、マスクが不要になったり、大人数での会合やアルコールを含む飲食がOKになったり。
宿泊施設側の立場では、検温やアクリル板の設置、接客中の手袋が不要になったり、ビュッフェの再開等が挙げられます。

とはいえ、ワクチン接種の時期には個人差があり、ワクチンを接種したからと言ってすぐに元の生活に戻れるわけではありません。

一部のワクチン接種済者がマスクを外して旅館に泊まりに来て、ワクチン接種済か未接種かに関わらず、マスク着用主義者と揉めるのでは・・・?という場面が容易に想像でき、いまから懸念をしています。
その点、近所のスーパーでは動きが早く、「ワクチン接種済の方も引き続きマスクの着用をお願いいたします」というアナウンスを流していて感心しました。

ワクチン接種が進み、18歳以上の72%が少なくとも1回のワクチン接種を終えているという米・カリフォルニア州では、「新型コロナ関連の規制がほぼすべて撤廃され、経済活動が全面的に再開。ワクチン接種済者は、屋内でマスクをしなくて良い」。
というニュースがありましたが、日本で正式にマスク不要が告知されるのはい
つ頃になるのでしょうか。日に日にマスクが暑苦しく感じるここ最近の陽気で
は、待ち遠しくて堪りません。

さて、感染者拡大でGoToトラベルキャンペーンが一時停止してからというもの『安近短』の旅行需要が定着していますが、ワクチン接種が進むと『高遠長』の需要が一気に伸びることが予想されます。

■『安⇒高』へ
まずは『安⇒高』へのシフトですが、第一には旅行補助が再開し、1人あたりの消費単価が上がるという点です。

いまは地域によって域内の補助が出たり出なかったりとバラつきがありますが、ワクチン接種が順調に進んでまた全国一斉のGoToトラベルキャンペーンがスタートすれば、旅行にかけるお金が一気に増えます。

従来のルールに即して言えば、GoToトラベル事業は地域独自のものよりも補助額が大きくなる傾向にありますし、上限はあるものの宿泊料金に比例した補助が受けられるため、通常よりも高単価のプランが選ばれ易くなります。
各宿で不良在庫化している地域共通クーポンも再度使えるようになるでしょうから、ドリンクや売店等の付帯売上が増えることも期待できます。

宿泊中のお酒提供に制限がかかった地域も少なくなかったため、晴れて旅行が“解禁”された後の旅行では特にお酒が進むのではないでしょうか。

従って、売店やお酒のラインナップを充実させるのはいまから考えておきたいところです。

また、感染拡大予防のための制限や自粛も無くなるでしょうから、テーマパークやアミューズメント、アクティビティ系の観光施設も通常営業をするようになります。
宿泊とチケット料金をセットにしたプランも選ばれやすくなりますので、改めて商品企画をすることをお勧めします。

『安⇒高』へのシフトは、1組当たりの消費単価にも当てはまります。
コロナが始まってからというもの、高齢者への感染を危惧して帰省をしていない子や孫が大勢いて、ワクチン接種が済んだら今すぐにでも会いに行きたいという人は少なくありません。
感染のリスクが少なくなると、自ずと3世代旅行の大幅な需要増が期待できますので、3世代向けの商品企画も企画しておくのも良いでしょう。

■『近⇒遠』へ
次に、『近⇒遠』へのシフトですが、これまでは感染予防の為にマイカーで行けるところにしか旅行に行かないという旅行者が非常に多かったと思いますが、徐々に新幹線や飛行機を使った旅行に回帰し、旅行先の範囲が広がっていきます。

それもあっていまは多くの宿で、県内・隣接県向けの施策を中心に行っていることと思いますが、今後は徐々に宿泊客の発地が広域化していくことを視野に入れる必要があります。
具体的には、コロナがはじまってから狭域に留めていた広告やDMの送付先を、広域にすることです。

特に東京・大阪といった大都市圏では、緊急事態宣言がなかなか解除されず、
GoToトラベルの恩恵を最小限にしか受けられなかったり、これまで虐げられて
来ましたから、今度は東京・大阪在住の方を“ひいき”する商品企画も視野に
入れると良いかも知れません。

■『短⇒長』へ
最後に、『短⇒長』のシフトですが、先述のように目的地(旅行先)が離れれば離れる程旅行日数も伸びる傾向にあります。

また、これまでは「リフレッシュの為に1泊位なら許されるでしょう」という後ろめたい気持ちで旅行に出ていた人も、各種宣言が解除されれば、誰にとやかく言われる(という心理になる)ことも無くなり、2泊・3泊と滞在日数が増えていくはずです。

特に観光スポットが周辺にある宿では、1つの宿に連泊して観光に出かける人が多くなることが予想されます。
その際に、連泊向けの宿泊プランを用意しておくことも宿選びの1つのフックになるでしょう。


ワクチン接種が進んで行く中での旅行需要の回復が見込める時期には、上記のような『高遠長』を見据えた販売戦略に舵を切ることが求められます。

このように、近い将来、宿泊客が戻ってくることが前提で話ができるのは嬉しいものです。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㊾―「滞在中の顧客評価を集めよう」

Posted on 2021-06-14

旬刊旅行新聞6月11日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊾です。

「滞在中の顧客評価を集めよう」

 宿泊予約の際、宿のクチコミ評価が最後のひと押しになるのは、今も変わりません。

 顧客評価は、“滞在後”だけでなく、“滞在中”にもしてもらえれば、最終的な評価を上げられると考えています。
 
 滞在中の不満がその場で解消されれば、お客様の評価の下げ幅は、最低限に留められるのですが、それができないことで、不満指数はどんどん大きくなり、顧客評価が最低にまで下がってしまいます。そのタイミングで滞在後のアンケート評価を依頼されると、自ずと評価点が下がるのは言うまでもありません。
 
 ただ、アンケートが滞在後だけではなく、滞在中にもできれば、宿側がお客様の不満に即対処でき、お客様も今以上の満足度が得られるはずです。
 
 それでは、どのようにすれば滞在中にお客様評価(とくに不満点)を集めることができるでしょうか。それはやはり接客を通して確認していくほかありません。
 
 この時、着目したいのが、「お客様が意見を言いやすい環境を整えられているか」という点です。
 
 例えば、旅館の夕食提供の時に、スタッフからお客様に「お部屋ではお寛ぎいただけましたか。至らない点はございませんでしたか」などと聞けば、お客様も意見や不満を言いやすくなります。
 
 一方で、スタッフが料理の説明だけをしていると、お客様が部屋への意見や不満を言うのは、相当にハードルが高いと思います。
 
 接客中にお客様の意見や不満を吸い上げる仕組み作りをすれば、顧客評価を収集できますが、収集だけでは不十分です。 
 
 大切なのは、お客様からいただいた意見や不満に即座に対応できる体制を整えることでそこに価値が生まれ、顧客評価向上という結果に結びつきます。
 
 宿側に不満を伝えたお客様は、その解消を期待しています。それがチェックアウトの時間になっても解決されなければ、当初の不満に加えて「わざわざ不満を伝えたのに無視された」と、不満指数は倍増して、かえって顧客評価が悪くなります。
 
 また、お客様の不満を吸い上げるのと合わせて、既にいただいた(過去の)クレームを活用しながら、不満を未然に防ぐ取り組みも効果的です。
 
 たとえば「貸切風呂の温度が熱すぎて入れなかった」とクレームがあった場合、その後に貸切風呂をご利用になるお客様には、「一度浴衣のまま、浴槽の温度をご確認いただけますでしょうか。調整が必要でしたらお知らせください。直ぐに伺います」と声を掛けるといった具合です。
 
 このように既存のクレームを踏まえた声掛けひとつでも、お客様が意見や不満を言いやすい環境を整えることができ、不満を未然に防ぐことにつながります。滞在中の顧客評価の収集こそが、最終的なお客様評価を上げる近道です。

 

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ワクチン接種の高齢者からGotoキャンペーンの適用を!

Posted on 2021-06-07

先週伺っていたご支援先で、「ワクチン接種を受けたから…と宿泊予約を入れてくださる高齢者の方が増えました」という嬉しいニュースに触れました。

ここ数週間で新型コロナウイルスのワクチンの供給量が大幅に増え、各地で集団接種や大規模接種会場の創設が進み、65歳以上(=高齢者)の接種率が加速度的に増えています。

日本経済新聞の特設サイト
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/#firstIntakeStatusOfElderlyPeopleMap
によると、6月3日時点での国内のワクチン接種人数は1164万人で、全人口比の9.3%になりました。

高齢者に限って言えば、対象者3549万人のうち18.5%(656万人)が少なくとも1回の接種を完了しています。

地域別の高齢者接種割合を見ると、最も進んでいるのは和歌山県で32.6%、最も遅れているのは栃木県で11.7%という状況です。(恐らくは人口に対するワクチン接種のできる医療従事者の数の差が出ているのでしょう。)
なお、東京都は20.7%と5人に1人は接種ができているようです。

現時点で未接種の高齢者は2893万人いることになります。
また、現時点での1日あたりの接種回収は53万回ですので、いまの接種ペースで全高齢者が少なくとも1回目の接種を完了しようとすると、あと55日はかかる計算になり、ちょうど7月末頃になる見通しです。
(※高齢者に先行して接種が進んでいる医療従事者(480万人)の接種状況は、1回接種が99.7%、2回接種が69%ということですから、そちら側にもワクチン接種回数がいくことを考えると、高齢者が接種完了する時期は数日間遅くなることが考えられます。)

ところで、最近のニュースで、
「ハワイ州、ワクチン接種率7割超えで渡航制限撤廃へ PCR検査なく渡航可能に」
https://www.traicy.com/posts/20210605211131/
というものがありました。
ハワイ州知事が「ワクチン接種率が70%を超えた場合に渡航制限を撤廃する見通しを示した」というものです。

ハワイで新たに確認されている新型コロナウイルスの症例のうち99%が、ワクチン未接種者だというのですから、ワクチンの効果は絶大と言って良いのでしょう。

ちなみに同州では接種を促すために「ハワイアン航空の100万マイル」や、「高級車の1年間リース」、「ピザ1年食べ放題」等の賞品が当たるユニークな宝くじキャンペーンを始めたという事ですから、あまり接種をしたがらない州民が一定数いると推測できます。
現時点での日本では、高齢者に対してのみ接種予約を受付ており、接種したくても予約が取れないという状況ですが、仮に今後接種率が鈍化した地域等が出ればこのようなキャンペーンを打ち出すのも良い取り組みかも知れません。

さて、このハワイ州のワクチン接種率が7割を超えた時点で渡航制限を撤廃するという指標に則れば、日本もワクチン接種率が7割を超えた時点でGoToトラベル等の消費喚起策を再開しても良いことになります。
(ここではハワイ州と日本の人口差は敢えて度外視します)

日本の人口が1億2500万人ですから、その7割の8750万人が接種完了する時期を試算すると…
対象者は、8750万人から既に接種完了している1164万人を引いて7586万人となります。
この数字をいま現在の1日あたりの接種回数53万回で割ると143日後=約5ヶ月後と試算でき、11月頃には全国民の7割が少なくとも1回の接種を終えていることになります。

“接種率”を2回の接種と定義すると、途中の計算式は端折りますが、300日後=約10か月後となり、2022年3月頃には全国民の7割が2回の接種を終えているという計算になります。

(※あくまで計算上のペースで、ワクチン接種を拒む国民が一定数いることを踏まえると理想と現実には開きが出ることが予想されます)

上記を踏まえると、早くて11月、遅くても来年の3月頃には全ての都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、都道府県市区町村の行政レベルを越えた全国的な旅行補助制度、Gotoトラベルキャンペーンが再び活発になっているのでは?という予測が立ちます。

しかしながら、特に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けていて、域内の旅行補助が出ていないエリアではそんな頃まで待っていられないというのが本音だと思います。

そこで、日本では高齢者のワクチン接種が進んでいる為、地域にこだわらず、まずはワクチン接種をした65歳以上を対象にGoToトラベルを再開させるべきだと考えています。

厚生労働省のQ&A
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0069.html#:~:text=%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E5%BE%8C%E3%80%81%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91,%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
によれば、

―――
Q.ワクチン接種の証明書は発行されますか。

A.接種後、接種を受けた日付・場所と接種したワクチンの情報が記載された 接種済証が発行されます。
 接種を受けた後、接種を受けた日付・場所と接種したワクチンの情報が記載 された接種済証が発行されます。この接種済証を見れば、いつ、どこで、ど のワクチンを接種したのかが分かります。
―――

という記載があり、紙ベースか何かの「ワクチンパスポート」が発行されているはずですので、接種歴の有無はこちらを証明書にすれば事足ります。

これまでも観光業界にとって、
高齢者は、
 ・時間がある
 ・平日に旅行をしてくれる
 ・マーケットボリュームがある
 ・旅慣れている
 ・お金がある
という5大特典を持った有難い客層でしたので、この客層が戻ってきてくれるだけでも業界にとって目に見える形で恩恵が現れます。

今後は行政区分に囚われず、年齢及びワクチン接種の有無を条件に、GoToトラベルをはじめ、イート、イベント等のGotoキャンペーンの補助を受けられるような柔軟な制度構築が、段階的かつ確実な経済回復を進めて行く上で重要な手段ではないでしょうか。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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