「2022年07月」の記事一覧

スタッフの不満をあぶり出し離職を防ぐ社内アンケートの活用

Posted on 2022-07-18

従業員を雇っている以上、スタッフの離職は避けられない問題です。

スタッフの離職はコロナ如何にかかわらず発生する問題ですが、特に2020年~2021年にかけての深刻なコロナ感染対策で、勤務形態が一変したことで転職を考えたスタッフは少なく無く、例年以上に離職率が高くなった企業が多いように思います。

あるご支援先でもここ1年間で日本人・外国人問わずスタッフが相次いで離職していったことを受けて、女将が「社内に問題があるのでないか」と懸念され相談を受けました。

客室規模も小さく、いわゆる家族経営の旅館であったため、スタッフ数名が辞めたことによるインパクトが大きかったようです。
当然スタッフが辞めていったのには個々の事情があるはずですが、この夏に新たに新入社員を迎え入れるにあたって、いちど既存のスタッフが会社や仕事に対してどう思っているかを洗い出すことにしました。

外部の人間(=私)がスタッフ一人一人を面談をするというやり方もあるのですが、本音を引き出すためには匿名のwebフォームを利用した社内アンケートをするのが良いのでは?と提案し、採用頂くことになりました。
webのアンケートは紙のアンケートとは違って、筆跡で個人が特定できることもないですし、集計に手間がかからない点でもお勧めです。

なお、折角匿名のアンケートでスタッフの本音が聞き出せても、それに対してのフィードバックが無ければスタッフの士気が今以上に下げることになるのはわかっていたため、アンケート結果は全体研修で報告することは予め約束しています。

アンケート項目は以下の内容で英語も併記し、外国人スタッフには英語でも回答できるような環境を整えました。
===================================
1.一般論として、どんな上司・仲間と一緒に働きたいと思いますか?
 特に一緒に働きたいと思う上位3つを選んでください。

 ア.社会人としての基本ができている(身だしなみ、挨拶、言葉遣い、礼儀ほか)
 イ.夢やビジョンを持っている(会社をこういう風にしていきたい)
 ウ.嘘をつかない(時間や約束を守る)
 エ.言動が一致している(言葉だけでなくて行動も伴っている)
 オ.言ったことに一貫性がある(発言をコロコロ変えない)
 カ.機嫌の良し悪しの起伏が無い(常に同じテンションで接しやすい)
 キ.自分のことを評価してくれている(良い面も悪い面も)
 ク.仕事を任せてくれる(単純作業だけではなく責任のある仕事も)
 ケ.その他 /7.の回答欄でお知らせください

2.一般論として、どんな上司・仲間と一緒に“働きたくない”と思いますか?
 特に一緒に”働きたくない”と思う上位3つを選んでください。

 ア.社会人としての基本ができていない(身だしなみ、挨拶、言葉遣い、礼儀ほか)
 イ.夢やビジョンを持っていない(会社の将来像が語れない)
 ウ.嘘をつく(時間や約束を破る)
 エ.言動が一致していない(言葉だけで行動が伴っていない)
 オ.言ったことに一貫性がない(発言をコロコロ変える)
 カ.機嫌の良し悪しの起伏が激しい(顔色を伺う必要があり接しづらい)
 キ.自分のことを評価してくれてない(仕事に対するフィードバックが一切ない)
 ク.仕事を任せてくれない(期待や成長が感じられない)
 ケ.その他 Others /7.の回答欄でお知らせください

3.働いていて、やりづらい点や困っている点、悩んでいる点はありますか?

 ア.ある
 イ.ない

4.上記3.で「ある」と答えた方、具体的にどのような点がやりづらくて、
 どのような悩みがあるのかをできるだけ詳しく教えてください。

5.皆さんにとってより働き甲斐のある職場になる為に望むことはありますか?

6.上記5.で「ある」と答えた方、具体的にどのような望みがあるかをできる
 だけ詳しく教えてください。

7.その他、このアンケートの機会に上司や同僚に伝えておきたいことがあれば
 ご自由にお書きください。(感謝の気持ちでも苦情でも意気込みでも何でも
 結構です!)
===================================

匿名とはいえ、どのくらい本音が引き出せるかと不安をしていたものの、思いのほか率直な意見が飛び出し驚いたと同時に、あまりに率直過ぎる意見に社長・女将に報告するのも戸惑う程でしたが、本音が出ない形骸化したアンケートになるよりは遥かに良かったと思います。

あくまで今回のご支援先に限ったアンケート結果ですが、簡単にの1.2.についての報告をすると・・・
1.で最も得票が多かったのが、
―ア.社会人としての基本ができている(身だしなみ、挨拶、言葉遣い、礼儀ほか)
で、最も少なかったのが、
―ク.仕事を任せてくれる(単純作業だけではなく責任のある仕事も)
でした。

2.で最も得票が多かったのが、
―エ.言動が一致していない(言葉だけで行動が伴っていない)
―カ.機嫌の良し悪しの起伏が激しい(顔色を伺う必要があり接しづらい)
で、最も少なかったのが、
―キ.自分のことを評価してくれてない(仕事に対するフィードバックが一切ない)
―ク.仕事を任せてくれない(期待や成長が感じられない)
でした。

いずれも【仕事を任せてくれる】という項目の関心が低かったのが印象的でした。

3.以降の記述式の回答に関しては、全38個のコメントがありました。
どこの企業でも挙がるような、・給料が安い、・休みが少ない、・シフトが出るのが遅い 等が挙げられていた他、経営陣に対する非難や文句も少なくありませんでした。私から報告するのも憚られるような内容のものもあり、社長・女将も報告した際には相当なショックを受けていました

しかしながら、直ぐに冷静に受け止められて、非は認め、誤解がある点は説明をされていた姿は素晴らしく、そこから一緒になって改善策・対応策を考えていきました。
その後の全員参加の研修の場で、全38個のコメント1つ1つに丁寧に回答して社内アンケートを締めくくりました。


今回の社内アンケートのご支援をして感じたのは、普段ニコニコと挨拶をしてくれて働いているスタッフ達の中にもこのような批判や不満を抱えて働いているスタッフがいたという衝撃とともに、その一方で、いままで会社側が敢えてそのことについて聞いてこなかったから当然と言えば当然、ということでした。

また、いまこのタイミングでスタッフが会社や経営者に対する文句を言える機会があって(ガス抜きするタイミングを持てて)本当に良かったという安堵の気持ちも生まれました。
というのも、もしアンケートをしていなければスタッフはこの後もずっとこのネガティブな感情を引きずったまま仕事を続けていくことになり、それが離職の引き金になったのではと考えられるからです。
研修で経営陣のフィードバックを受けてのスタッフの本音は、正直なところよく判りませんが、恐らくそれまで以上にはスッキリしたことでしょう。

経営者側もスタッフから不満や批判をぶつけられてそれについて言及することで、気付かされる面が多々あったり、日常業務ではなかなか改めて説明するタイミングがもてなかったことを解説したり、誤解を晴らしたり、反論する機会を得られたこともアンケートをした甲斐があったと思います。

経営陣への批判に対する返しで特に印象的だったのは
「好きな子と嫌いな子の接し方に差がある」という批判に対し、
「話掛けやすい雰囲気の人と、話し掛けづらい雰囲気の人がいます。自ら話し 掛けづらい雰囲気を作っていませんか?」
というものでした。人の振り見て我が振り直せ、とはまさにこのことだと強く共感しました。


スタッフから批判・不満を引き出し、それに理解を示し対策を取ることで少しでも離職を防いだり、或いは経営者の考えを改めて伝えることを目的に、スタッフの意見を引き出す上でも、社内アンケートを活用してみることをお勧めします。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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GoToトラベル取消料問題についてGoTo事務局に思うこと

Posted on 2022-07-04

観光庁より「取消料対応費用の配分に関するアンケート調査結果について」の報道発表がありました。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page05_000185.html

GoToトラベル事業で、2020年末~2021年始の期間に一時停止措置となった際に発生したキャンセル分の補填として、一律35~50%が旅行会社や宿泊事業者に支払われた取消料に関してのことです。

アンケート結果のポイントとして、以下のように報告されていました。
―――
○今回のアンケート調査で適切な対応を行っていた事業者※の割合は、旅行事業者で85.4%、宿泊事業者で67.1%。
 ※関連事業者へ配分を行った、配分を行う予定、配分の必要がなかったと回答した事業者の合計。

○適切な配分を行っていることが確認できなかった回答としては、
 ・ 資金繰りから配分を行う余裕がなかった
 ・ 配分ルールがわからなかった、知らなかった
 ・ 取扱要領上の「適切な配慮」という記載がわかりづらかった
などの回答がありました。
―――

適切な対応を行っていた事業者の割合が多いか少ないかはさておき、当初より「このような結果になるだろうな」と予測出来ていたことです。

適切な配分が確認できなかった回答で、
 ・ 資金繰りから配分を行う余裕がなかった 
はともかく、
 ・ 配分ルールがわからなかった、知らなかった
 ・ 取扱要領上の「適切な配慮」という記載がわかりづらかった
というのは共感しかありません。
弊社のご支援先でも当時、この配分問題はよく話題にあがり混乱を来していたなと思い出します。

と言いますのも、下記の通り当時通達された資料からは、旅行業者に対するルールは詳しく明記されているにも関わらず、宿泊事業者に対する明確な指針が何ら示されていなかったのです。
GoToトラベル事務局の“宿泊事業者に対する興味の無さ”がこれ程までにあからさまなのには驚きました。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001488572.pdf

―――
【旅行業者】
旅行業者は、受領した取消料対応費用について、旅行商品に含まれるサービスを提供する宿泊事業者、交通事業者、観光施設等に対し、公平に配分するものとします。具体的には、その旅行が実施されていれば、 それぞれの者に支払われるべきであった額の50%又は35%(※)を配分額として提示してください。
なお、旅行商品をリテーラーを通じて販売している場合には、旅行業者(ホールセラー)は上記の考え方に基づき、旅行が実施されていれば支払われるべきであったリテーラーの販売手数料額の50%又は35%(※)を配分額として提示してください。 (※)旅行代金の50%又は35%が上限(2万円又は1万4千円)
を超える場合には、それぞれの者に支払われるべきであった額の割合に応じ配分。

【宿泊事業者】
また、宿泊事業者においては、受領した取消料対応費用について、食材の卸売り業者やリネン業者など、取消の影響を受ける関連事業者に適切にご配慮をいただくよう、お願いいたします。
―――

旅行業者にはこれだけのボリュームを割いて配分ルールを詳しく説明しているにもかかわらず、宿泊事業者には「よしなに」の4文字で済ませているようなものです。
これだけ旅行業者に明確なルールを決めているのは、保身のために他なりません。
それに対して、宿泊事業者に対しては「我関せず」の姿勢です。「事務局としてやるべき最低限のことはやった、あとは知りません」という意思表示とも受け取れます。

この部分を読めば、GoToトラベル事務局が旅行会社のまとまりであって、宿泊事業者がほぼ関与していないことが、業界のことをよく知らない方でも分かるのではないでしょうか。

「取消の影響を受ける関連事業者に適切にご配慮」と聞いて、何をすれば良いどう行動すれば良いかが明確にわかる宿泊事業者がどれだけいるでしょうか。

・「取消の影響を受ける」とは、例えば業者に発注する前であれば対象外との認識で良いのか?
・「関連事業者」とはどこからどこまでを指すのか?
・「適切に」とは何をもって適切というのか?基準は何か?
・「ご配慮」とは金銭を絡める必要があるのか?
と突っ込みどころ満載で、情報を受け取る側がどう捉えるかによって認識が大きく異なってきます。

そもそもアンケートで 
・ 配分ルールがわからなかった、知らなかった
・ 取扱要領上の「適切な配慮」という記載がわかりづらかった
との項目がある時点で、制度設計が間違っていたと認めているようなものです。

今回の報道発表には、
―――
○適切な配分を行っていることが確認できなかった事業者に対しては、引き続き適切な対応と報告を求めているところです。
―――

とありますが、
・明確なルールを設けないと、
 ⇒自社にとって好都合なあらゆる解釈が生まれる
 ⇒不正の温床・不正の助長となる
のは容易に想像できることです。

宿泊事業者が頭を悩ませるルールを設け(むしろ設けず)、適当に処理をして【おしまい!】、にしていたところ、会計検査院から調査の指摘が入り、アンケートを取ったら問題が発覚した・・・というのが今の状況です。

ルールが不明瞭であるがゆえに、配分をしなかった事業者へのペナルティを促すのではなく、こうなることが容易に想像できたにもかかわらず、明確なルールを定めずに業務を遂行し、このような事態を招いたGOTOトラベル事務局も何らかの責任を取るべきだと思います。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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