連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㊹―「おもてなし場面の縮小を質で補う3要素」

Posted on 2020-08-26

旬刊旅行新聞8月11・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊹です。

「おもてなし場面の縮小を質で補う3要素」

 日本国内では旅行を促進する施策が動き出し、宿泊需要も活性しています。一方で、宿泊者数の増加に比例するように、宿泊施設では運営方法(コロナ対策)の見直しに迫られています。

 自館での感染者を出してはいけないと必死になるなかで、極力お客様にはリラックスしていただいて、料理や温泉、おもてなしを満喫していただきたい、というのは宿泊業の根底にある想いです。

 宿側としては、お客様と密接にならないように(お客様もそれを求めている)と考え行動しますが、良かれと思ってしていることが裏目に出てしまい、コロナ対策をし過ぎることで顧客離れを招いてしまっては元も子もありません。

 コロナ対策を講じた接客を行ううえで、顧客満足度を下げないポイントがあります。

  ①お客様に手間や面倒を掛けないこと

  ②共感や利点を示すこと

  ③代替案を用意すること。

 以上の3つをお勧めしております。

 ①に関しては、感染対策を行ったうえで、極力お客様に手間を掛けないように工夫することが求められます。

 感染防止対策のためにと、部屋に荷物を運ぶサービスや、荷物の台車の貸し出しを止めるといったことがお客様は不便に感じます。提供するサービスを無くすのではなく、スタッフが手袋をつけて、台車を消毒すれば済むはずです。

 ②は、宿側が発するメッセージを受け取るお客様が、どう感じるかという心理を最大限に考慮した言い回しをすることをお勧めしています。

 例えば、館内でマスクを着用してくださらないお客様を見かけた時に「マスク着用にご協力をお願いいたします」と言うだけではなく、「ご面倒ではありますが、他のお客様がいらっしゃるところでは、お客様ご自身の感染防止のためにもマスクの着用をお勧めしております」と、共感と利点を伝えた方が聞こえは良いと思います。

 それは、お客様をバイ菌扱いしていないという姿勢を示すことにもつながります。

 ③は感染予防に対する感度は人それぞれ違いますので、個々のお客様になるべく寄り添いアレンジしてあげることが好ましいです。

 例えば、チェックインの際にお客様の往来が集中するからと客室までの案内を控えている場合でも、とくにご高齢のお客様などがフロントでの館内地図を使った説明だけでは不安を感じていらっしゃるようであれば、時間をずらして案内するなど、代替案の提示もできるはずです。

 コロナ対策では、目に見える形で省いてしまう接客対応も少なくなく、お客様からすると対応不足や不便を感じる点が増えたのではないでしょうか。

 接客の場面数としては引き算となる格好ですが、その分、対応の質を足し算して“おもてなし”の強化、顧客満足度の維持・向上に努めることをお勧めします。 

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㊸―「コロナ禍中のおもてなし」

Posted on 2020-06-15

旬刊旅行新聞6月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊸です。

「コロナ禍中のおもてなし」

 

 コロナ禍中(収束前)に再開する宿泊施設では、接客場面ごとに3密「密閉・密集・密接」のどれが問題になるのかを考え、3密を避けることを前提とした対応策を考える必要があります。

 

 「密閉」は、窓やドアを開けるなどして回避できます。「密集」も、時間帯を区切るなどすれば、ある程度は防げます。「密接」は、口頭での説明をなるべく省き、紙面や動画での説明に切り替えれば、密接する場面を少なくすることができます。工夫次第では3密を回避した接客対応は十分できそうです。

 

 このように「宿側でコントロールできる」のは良いのですが、問題は「宿側でコントロールできないこと」への対応です。

 

 そもそも、感染の疑いのあるお客様の入館をどう防ぐかは、悩みの種ではないでしょうか。入館時に検温を行う動きも出てくると思います。ただ、検温の体制を整えても、発熱があるお客様をどう扱うかまで、考えておかなければなりません。

 

 とくにビジネスや、予定を合わせて企画した知人との旅行の場合は、体調不良を隠してでも旅行をしたいと考える人が多いのではないでしょうか。

 

 発熱が確認されたお客様が、検温を担当したスタッフを、時には強引に言い含める、という場面が出てくるのではと容易に想像できます。

 

 館内の公共スペースでのマスク着用要請に従っていただけないお客様にどう対応すれば良いのでしょうか。

 

 滞在時間の短い展望台や展示館などの観光施設であれば、体調不良や感染防止に協力しない人には、外で待ってもらうなどの入場拒否ができるでしょうが、宿泊の場合は、そう簡単にはいかないでしょう。

 

 新型コロナウイルスの封じ込めに成功している台湾の宿泊施設では、公式サイトのトップに次のようなお知らせがありました。

 

 「*ホテルでのチェックイン時、お客様へ体温測定の協力をお願いします。*もし37・5度以上の発熱、また咳などの症状があった場合、ホテルスタッフが医療手配のお手伝いを致します。*ホテルには保健局への届け出の義務があり、お客様の入場を拒否する権利が御座います」。

 

 発熱者を隠して宿泊させた場合は、宿泊施設にペナルティが課せられることや、宿泊施設に宿泊拒否権があることを明確にし、医療手配を手伝うことまで定められていることが分かります。

 

 日本の宿泊施設にも同様の権限を持たせ、宿泊客に周知させないと本当の意味での感染防止策は講じられないと思います。

 

 良くも悪くも国民に「要請」しかできない日本。宿泊施設を始めあらゆる業界の施設側が、利己的な消費者に屈せずに徹底した水際対策を講じられるようにし、スタッフが安心しておもてなしを提供できるよう、時には「強制」も必要であると考えます。

 

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『おもてなし接客術』㊷―「研修をムダにしないためには 」

Posted on 2020-04-14

旬刊旅行新聞4月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊷です。

「研修をムダにしないためには」

 スタッフに接客研修をしても「なかなか実務に結びつかない」とか、「研修直後は接客が良くなるが、定着せずに時間の経過とともに研修前のスタイルに戻ってしまう」という悩みをお持ちの方も少なくないと思います。

 研修内容を実際の接客の現場に定着させるには、スタッフ自身が欠点を自覚し、改善策を提示してもらうことが重要です。そのためには、グループワークを上手く活用していくことをお勧めします。
 
 先日行った研修先の旅館のグループワークでは、次のテーマで議論を行ってもらうことにしました。
 
 1つは「どうしたら顧客の目的を知り、お役に立ち、期待値を上回れるか」。2つ目は 「どうしたら感動サービスができるか。記憶に残してもらえるか」など、いずれも旅館に泊まるお客様を意識したテーマです。
 
 まずは、各グループがそれぞれのテーマでの現状の課題を認識し、次に実行への取り組みを考え、最後に発表していきます。
 
 テーマごとに各グループが発表したあとには、発表を聞いた一人ひとりが発表に対して、意見を言ったり、質問をしたりする時間を設けました。すると、議論が活性化し実現に向けての筋道が見えるようになり、充実したグループワークを行うことができます。
 
 テーマごとに、毎回グループメンバーを入れ替えれば、同じような思考パターンに陥ることを防げます。
 
 このようなグループディスカッションでは、テーマだけを漠然と与えてもスタッフには取り組みづらいため、私の方で考え方のヒントや課題、事例を挙げて方向性を示し議論を進めてもらいました。それぞれ同じようなテーマでしたが、いずれも奥深い議論を行うことができました。
 
 おもに中堅クラスのスタッフが参加していたため、すぐに取り入れられるナイスアイデアの数々に関しては、さっそく取り組もう、と行動に移す姿勢が見られました。その一方で、当たり前のことができていないという現状の課題も浮き彫りになりました。
 
 例えば、テーマ2で提案された取り組みの1つは「お客様に話し掛ける」という基本的なことでした。結局実際の接客現場ではこの基本ができていなかったのです。「来館前にどこに行ったのか、〇〇県は初めてか、来館後はどこに行くのか」といった些細な会話すらできていない事実に気づかされます。
 
 そこで、お客様との会話のトークスクリプトを作るとか、顧客カードを作成するといった具体的なツールを作成すると意気込んでいました。
 
 文章にすると当たり前で、初歩的なことと思われるかもしれませんが、この基本的なことが徹底できていないことが多いのです。
 
 研修内容の徹底が思うように行かないと悩まれる際は、研修と併せてグループディスカッションも行ってみてはいかがでしょうか。

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『おもてなし接客術』㊶―「クラブメッドに学ぶおもてなし」

Posted on 2020-02-15

旬刊旅行新聞2月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊶です。

「クラブメッドに学ぶおもてなし」

 先日、タイ(プーケット)のクラブメッドに滞在しました。クラブメッドは、近年、新興の宿泊施設で取り入れられることも多くなってきた「オールインクルーシブ」発祥の企業です。

 クラブメッドに滞在していると、どうしても日本旅館と比較してしまいますが、その違いはマトリクスで言うと対極の位置にあります。

 たとえば、利用者の滞在日数は旅館が主に1泊2食型なのに対し、クラブメッドは長期滞在型です。

 食事スタイルは、旅館では時間や内容が定められているのに対し、クラブメッドでは、時間も内容も自由です。

 アクティビティは、外に出掛けて楽しむ旅館に対し、クラブメッドでは敷地内で楽しむといった具合です。

 このように、旅館と対極のクラブメッドではありますが、そこから学べるおもてなしもあります。 

 具体的には、わかりやすい形で、こちらの情報を事前に頭に入れて、さまざまな対応を取ってくれます。滞在中のようすを気にかけてくれるという点でも、感心することがとても多かったです。

 たとえば、到着時に子供の名前をすぐに呼んでくださったのには驚きました。

 海外旅行ということで、家族全員の名前を事前にホテル側に知らせていたこともありますが、会ってすぐに名前を呼ばれたことで、子供たちも嬉しく安心したことと思います。

 また、食事中に「何か気になることが無いですか」と、こちらの反応を気にかけてくれ、食事を残したときには「口に合わなかったですか」とわざわざ聞いてくれました。

 また、食事中に私たちの席が空いていれば、スタッフが「座っても良いですか」と聞いて来て、スタッフと宿泊客が一緒に食事を楽しむスタイルを採用しています。

 その間に、コミュニケーションを取りながら滞在中の困り事を解消し、アクティビティやショー、イベントなどその後の過ごし方を提案してくれるというように、顧客満足度を上げています。

 このような対応は、明らかにこちらのことを“気にかけてくれている”ということが伝わります。

 日本では、お客様に直接聞くことをせずにようすを伺いながらスタッフ側で推測・判断することが多く、この「察する」とか「言わずもがな」という対応が、日本の接客のレベルの高さにもつながっています。

 ただその一方で、クラブメッドのようなあからさまでわかりやすい接客スタイルも、とくに外国人観光客や子連れのお客様の場合などは、時と場合によっては、効果的であると気づかされます。

 日本のやり方に固執するのではなく、海外リゾートで学んだ接客・おもてなしも、旅館をはじめとした接客の現場で効果的に取り入れたいと考えております。

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『おもてなし接客術』㊵―「おもてなし上級者のいるUSJ」

Posted on 2019-12-20

旬刊旅行新聞12月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊵です。

「おもてなし上級者のいるUSJ」

 開業18年目にして初めて、USJを訪れました。開業当初はトラブル続きで、ディズニーの2番煎じとも言われていましたが、いまやTDLを凌ぐ勢いのある人気テーマパークとなっています。

 USJ滞在中は、ついTDRと比較をしてしまいますが、その印象はUSJの方が、お客様を楽しませようとする気持ちが強い(強く伝わってくる)というものでした。

 TDRがゲストをゲスト扱いする招待型とするならば、USJはゲストも一緒に作り上げる参加型を意識しているようです。

 同じテーマパークでも、コンセプトがまったく異なるということはスタッフの対応を見ても明らかでした。

 私の経験からすると、会話のきっかけがゲスト発のTDRと、スタッフ発のUSJという違いが見えてきました。

 TDRのスタッフ「キャスト」は、以前から接客本のテーマとして取り上げられるなど話題性も高く、優秀とされています。

 一方で、USJのスタッフ「クルー」は、ようやく最近、テレビでその教育ぶりが取り上げられるようになってきたぐらいです。

 そのため、スタッフの対応などはTDRに比べて劣るのだろう、と勝手な思い込みをしていたのですが、良い意味で期待を裏切られました。

 最も感心したのは、ファストフードスタイルのレストランスタッフが、話術巧みに待ち時間を感じさせない工夫をしていたことでした。テーマパークと言えば「待ち時間」がつきもの。USJでもアトラクションはもちろん、食事をとるのも列に並んで待つのが当然でした。

 私もその行列に並び、ようやく自分の順番になり食事を注文すると、レストランの女性スタッフは、会計中にこちらから聞きもしないのに、間もなく始まる園内イベントのことを話し始めました。

 しかも、後ろに誰も並んでいないのならまだしも、ずらっと行列が続いているのも構わず、呑気に話をしてくるのです。

 私には価値のある話で助かりましたが、後ろに並ぶ人のことを考えると気が引ける思いがしました。そして話が一段落する頃に、丁度商品が提供され「いってらっしゃい」と送り出されたのです。

 絶妙のタイミングとはこのことです。これは、次の順番の人にも同じような対応をしていたのは言うまでもありません。

 ふつうゲストはレジに並ぶのに待たされ、注文が終わると再度商品口で待たされるという流れとなり、2回は待たされることになるわけです。ところが、ゲストと会話をして場をつなげば、レジ待ちの1回待てば良く、「待たされた」というマイナスの経験を1回に軽減できるというメリットがあります。

 1―2分の短時間で、このようなテクニックを駆使できるスタッフは、おもてなし上級者と言えます。

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