連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㉚―接客外スタッフも“おもてなし”の心を

Posted on 2018-04-13

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉚です。
「接客外スタッフも“おもてなし”の心を」

 当日の人数変更や追加料理、お客様からのリクエスト、誕生日の演出などに旅館の料理長が良い顔をしない、という話はよく聞きます。

 予約やフロント、仲居スタッフが「お客様から受けた注文や要望を調理場に通しづらい」とか、「注文を通しても返事をしてもらえない」などという話を耳にすることがあります。昔ながらの旅館を中心に、まだまだ調理場が実権を握っていて、従業員ひいては経営者までもが調理場の顔色を伺いながら仕事をしていることも少なくありません。このような状態だと、接客スタッフは積極的に追加料理を売りづらくなって、売上増につながらないだけでなく、お客様に提供する料理にもマイナスの影響が出ると思います。
 
 現に、接客中のお客様との会話の中で、今日が誕生日という情報をキャッチした仲居さんが、調理場にバースデーデザートの提供がしたいと相談すると、渋々了承してくれたものの、出てきたものは冷凍のカットケーキをただ並べただけというお粗末さだったそうです。仲居さんは、お客様に提供するのもためらわれた、ということでした。
 
 他方では、視察などで旅館に泊まると、客室のテレビを付けた際にボリュームが大音量だったり、ドライヤーのコンセントを差し込んだ瞬間に強風が出て驚くことがあります。前の人が使った状態のままだと分かりガッカリするのです。
 
 非常に細かいことなので、その配慮に気づかないお客様もいますし、気がついても何とも思わないお客様も多くいらっしゃると思います。ただ、こういった場面に出くわすと、清掃スタッフにもおもてなしについて考えたり、理解を深めてもらいたいとつくづく願うばかりです。
 
 調理場スタッフにしろ、清掃スタッフにしろ、従業員の心がけとしては「このひと手間でお客様の滞在の価値を高めることができるのだ」という意識を持って仕事にあたってもらいたいものです。その意識を持っているのとそうでないのとでは、仕事の仕方が変わってくると思います。私は日ごろ、旅館の接客・おもてなしの研修講師として仕事をいただくことが多々ありますが、研修の席に調理場スタッフや清掃スタッフがいらっしゃるのは過去数えるほどです。
 
 こちらから無理やり「調理場や清掃スタッフも参加させてください」と依頼することはしませんが、参加メンバーについてご相談いただくときには「可能な限り全部署のスタッフに参加していただくことをお勧めします」とお答えしていますし、視察に一緒に連れて行くのもお勧めしています。
 
 真の意味でおもてなしを提供するには、直接お客様と接するスタッフだけではなくて、調理場、清掃、営繕やその他のスタッフにも共通認識として持っておく必要があると考えています。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㉙―「外国人へのおもてなし」

Posted on 2018-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉙です。
「外国人へのおもてなし」

外国人観光客が多い観光地や宿にとっては、外国人観光客のマナーの悪さが問題になっているかもしれません。一方で、外国人観光客や日本在住の外国人にとっても、日本人のマナー違反に苦しむことは少なからずあるようです。

 今でこそ、マスク着用が普及して、風邪や体調の悪い人、花粉症の人がマスクをしていることも多いですが、何気なく出る咳やくしゃみの時に、口や鼻を手で覆わずにしてしまうというのが日本人だそうです。
 
 外国人は小さいころから咳やくしゃみをする時には、手やハンカチで口を覆うように育てられるそうで、この日本人の行為を非常に不快に思うそうです。
 
 また、鼻をかまずに、鼻水をすすって対処することも、日本人には多いようです。
 
 1度や2度で済めば問題ないのですが、何十回と繰り返し鼻をすすることがほとんどだそうで、その無限に続く鼻すすりの音が外国人にとっては煩わしく、とてつもなく不愉快に感じるそうです。
 
 また、通路を塞ぐ・譲らないというのも、日本人が集団で行動すると思われていることの一つです。
 
 2人で並んで歩くのはまだしも、3―4人が横一列に並んで道を歩くのが日本人だそうです。
 
 その集団に向かって(対向するかたちで)歩いていても、道を譲ってくれることはほとんどなく、結局建物の敷地に入って彼らに歩道を占拠されたまま、道を譲る羽目になるそうです。
 
 他人に無関心で厳しく無礼というのは、すべてに関わってくるものだと思います。
 
 お客様とスタッフの関係だったり、一度交友関係が生まれたりすれば、日本人は非常に礼儀正しい人種ではありますが、それがまったく関係性の無いあかの他人となると、途端に厳しく無礼になるということです。
 
 他人同士で目を合わせてあいさつをしたり、会話をするのは外国人にとって普通の事であるのに、日本人にはそれが異常な行為と見えたり、他人同士がぶつかると、途端に殺伐とした空気が流れることもあります。
 
 「マナーの違いも含めて、異文化に触れるとはこういうことを言うのだ」という考えもありますし、今回取り上げたことはある種の外国人の意見であって、必ずしも外国人全員がそう思っているかと言えば、そうではありません。
 
 ただ、おもてなしを提供する旅館業・観光業に就いている方にとって必要な視点は、日本のマナーはあくまでもジャパニーズスタンダード(日本の基準)であって、グローバルスタンダード(世界の基準)ではないことを常に認識しておく必要があります。
 
 相手の事を思って為すというのが、おもてなしの意味ですが、日本のマナーを当然と思うのではなく、相手の国々のマナーを意識して対応していく心掛けも持ちたいものです。

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『おもてなし接客術』㉘―「損をさせないおもてなし」

Posted on 2017-12-20

旬刊旅行新聞12月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉘です。
「損をさせないおもてなし」

 先日、接客研修した旅館様で、時間を割いて協議したのが「お客様に損をさせてはいけない」というテーマでした。
 
 例えば、お客様の到着順に優先的に夕食開始時刻を決める宿が多いかと思います。午後6時―午後7時といった人気の時間帯が埋まってしまい、お客様の希望の時間に添えない場合に、スタッフの言い方次第では「選べなくて損した」と思わせることもあります。
 
 一方「自分の希望は通らなかったけど、スタッフの勧める方を選んで得した」と思わせることも可能です。
 
 おもてなしスキルを上げることで、一見損なことでも損と感じさせない体制を整えるよう注力するのが今回の目的でした。
 
 この旅館は夕食時間を2部制にしており、1部は午後5時30分、2部は午後8時という時間設定です。一般的に人気な夕食開始時間は午後6時30分や午後7時ですので、この時間設定では、早すぎる時間か遅すぎる時間かのどちらかで、食事をスタートしてもらわなければなりません。
 
 当然、この2つの時間設定だと、午後5時30分に集中しすぐに枠がいっぱいになります。この状況下で新たな予約が入ると、必然的に午後8時スタートの枠でお客様にご了承いただかなくてはなりません。
 
 スタッフ自身も午後8時には引け目を感じるようで、「大変申し訳ないのですが、午後8時でお願いできませんでしょうか」というスタンスで話をしてしまいます。
 
 そうするとお客様は、“人気の”午後5時30分の予約を取れなかったことで「損をした気分」に陥るうえ、「少しでも早く対応してもらえないか」とスタッフに交渉をし始めることになり、結果、スタッフが困り果てる、という悪循環を生んでしまいます。
 
 この現状を改善しようと、言い回しを改めることにしました。まずは「お客様のご希望には添えない午後8時の食事開始となってしまいますが、実は午後8時の方がお勧めです」と、伝える。
 
 次に「ご到着後は、まずはお風呂に入っていただき、浴衣に着替えてから是非ラウンジをご利用ください。午後8時までは、お食事中のお客様がいらっしゃるので、大浴場もラウンジも空いています。運が良ければ貸切状態でご利用いただけるかもしれません」と、食事時間までの時間の過ごし方を提案しながら、メリットを挙げて午後8時がお勧めである理由を伝える。
 
 このように一見お客様に宿の都合を押し付けてしまう場面でも、「実は得なんです」という“言い回し”を“自信を持って”すれば、お客様はすんなりと受け入れてくださることも少なくないと思います。お客様の御要望に応えられずに一見損をさせてしまうような場面でも、得と感じさせる提案・表現をして顧客満足を維持・向上させてこそおもてなしです。

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『おもてなし接客術』㉗―「残念な接客」

Posted on 2017-10-16

旬刊旅行新聞10月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉗です。
「残念な接客」


 
先日、ひさびさに都内のレストランにフレンチを食べに行きましたが、設備と料理に接客が追い付いていないのではないか、と残念に思う経験をしました。料理長の経歴は華々しく、ミシュランの星が付くレストランです。ある料理評論家が料理も接客もべた褒めしていたので、とても楽しみでした。
 
 ホールスタッフは皆流れるような接客をしており、さすがだと感心しました。料理説明も、こちらが質問したくなるような食材や調理法は予め説明するなど、安定した対応を見せてもらいました。料理は器遣いや盛付もさることながら、味もとても美味しく満足の行くものでした。
 
 それにも関わらず何が残念だったかと言うと、おもてなしが欠けているということでした。
 
 会計の際に「お食事はいかがでしたか」と声を掛けられたので「美味しかったです」と言うと、「ありがとうございます」と返されたものの、その後の会話が続きません。
 
 たまらず「こちらのお店は何年位になるのですか」と質問してみると、少し考えて「7年目になります」と返ってきましたが、やはりその後が続かず、まったく盛り上がらない(つまらない)会話となってしまいました。
 
 初めから、こちらに興味が無く、楽しませようという意識が無いことが見え透いてしまいます。例えば「何か印象的なものはございましたか」と一言返せれば、少なくとも会話を続けることはできます。
 
 あるいは「こちらの開業は7年になりますが、それまで当店のシェフは〇〇で料理長を務めておりました」と、1つでもエピソードを話すだけで、お客様に質問した価値を感じさせることができ、満足度が高まるはずです。
 
 帰り際に「ただ今、シェフがごあいさつにまいります」との案内があり、コック服を来たシェフが現れました。
 
 「ありがとうございます」との声に、「美味しくいただきました」と御礼を言うと、シェフは再度「ありがとうございます」と返すだけ。この対応にもがっかりでした。これだけなら別に出てこなくても良いのでは、というのが率直な感想です。
 
 料理長にお目にかかれること自体は、光栄なことだと思うのですが、形式的にでも「どちらからお出でですか」など、お客様に関心を示す一言が掛けられれば、どれだけ印象が違うだろうと思います。
 
 冒頭でも説明したように、スタッフはみんな、淀みない接客ができており、不満があるかと聞かれればそうではありません。
 
 また、お店の内装はお洒落で綺麗でしたし、趣向を凝らした料理は、見た目にも味にもとても満足でした。
 
 一方で、せっかくこのようにレベルの高いものを提供できているのだから、接客もそれに合わせられたら、さらに良くなるだろうに、とお節介ながらも、残念に思ったできごとでした。

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『おもてなし接客術』㉖―「おもてなしの品質管理」

Posted on 2017-08-23

旬刊旅行新聞8月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉖です。
「おもてなしの品質管理」

おもてなし接客術26

おもてなし接客術26

 普及しているマーケティング用語に「PDCA」がありますが、「接客」もれっきとした商品です。マニュアルの作成や研修といった「P」や「D」も大切ですが、接客・おもてなしレベルを維持するには「C」で品質管理を行うことが重要です。
 
 〝作りっぱなしの商品〟にならないようにしましょう。過去に集中的な研修と接客マニュアル作成を担当した旅館で、再度研修の依頼を受けました。手前味噌で恐縮ですが、研修とマニュアル作成を担当してから、お客様の評価がぐんと良くなった旅館で、集中研修やマニュアル作成から4―5年経過した今でも研修の依頼があります。
 
 さて、今回初めて私の研修を受けるという方は若干1名。それ以外のメンバーは以前にも私の研修を受けたことがあるというベテランメンバーでした。ベテランとはいえ、社員は1人。ほかは全員パートです。
 
 口コミ評価や館内アンケートで、接客の評価は良かったものですから、さほど問題もないだろうと思って臨んだ研修でしたが、いざ始めてみると、なんとなく流れは踏襲できているものの、ところどころ抜け落ちてしまっている動作が見受けられました。また、ちょっとした質問をしてみると、途端にあたふたしたり、一気に崩壊してしまうような惨状でした。表面的には感じの良い接客ができているものの、中身が伴っていないのです。
 
 「このレベルの接客で、良くこんなに高い評価を貰えていますね」と苦言を吐いてしまう結果となってしまいました。
 
 研修を総括すると、行動の意義や目的が抜けている部分が多く、なんとなく小手先の接客技術に意識が向いていることがわかりました。
 
 「目的」と「手段」を混同してしまい、目的が無いまま手段に徹してしまっているような印象を受けました。なぜこのようなことが起こるかというと、スタッフが一つひとつの動作の意味合いをしっかり理解していないのです。
 
 単純に「マニュアルで決まっているから」という覚え方ですと、それ以上になろうとは思わないし、時間の経過とともに少しずつ動作が脱落していってしまうものです。
 
 スタッフの一つひとつの行動や言動で、お客様にどのような印象を与えることができるか、宿側にとってどのような効果やメリットがあるかを理解できていれば、このような事態にはならないはずです。
 
 表面的ではなく、中身を伴った接客・おもてなしを提供できてこそ安定的な評価を頂けるものです。
 
 お客様評価も大切ですが、宿として求めるレベルが十分達成できているかという視点での評価も忘れてはいけません。お客様評価が高いと言っても、是非定期的な点検をするよう心掛けていただきたいと思います。

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『おもてなし接客術』㉕―「お客様経験で磨くおもてなし」

Posted on 2017-06-13

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉕です。
「お客様経験で磨くおもてなし」

おもてなし接客術25

現在、旅館の料理提供のマニュアル作成の支援をしています。マニュアル作成にあたっては、準備物や動作確認が必要になるため、現場リーダーに、現状の接客の流れを確認すると、明らかにおかしい料理提供のルールが常態化していることがわかりました。

お客様が席に着いてドリンクオーダーを受けた直後に、御飯とデザート以外のすべての料理が一斉に並んでいたり、お客様が席に着いたタイミングで鉄板料理と鍋料理に着火をしているのです。数々の料理が一度に目の前に並べられると、1品1品としての料理の価値も下げてしまいますし、目の前の料理を食べることに一生懸命になってしまい、あまりお酒も進まないはずです。

そのリーダーは食事処でお客様として食事をした経験はないとのことでした。実際に一緒に食事をしたところ、「お客様は、こんな量のお料理をよくお召し上がりになりますね」とか、「先に料理が全て揃ってしまうと、後から来る楽しみがなくなってしまいますね」、「最初に、鉄板と鍋物の火は付けない方が良いですよね」など意見が出てきました。

さらに、「このタイミングでおしぼりが欲しいですね」、「やはり箸置きはあった方が良いですね」、「御飯は御櫃の方がありがたいですね」などの発見や意見が出てきて、現状の料理提供の仕方に問題意識を持っていただけました。

また、食事処の席の配置もおかしいことに気が付きました。この宿は観光のお客様も、ビジネスのお客様も宿泊していることから、食事処の椅子とテーブルの種類と配置は観光とビジネスとで明確に分けています。

ただ、食事開始時刻もまちまちで、品数も少なく比較的パッと召しあがるビジネスのお客様の方が食事会場の奥の方の席、一方で食事時間も決まり、品数も多く、ゆっくり召し上がる観光のお客様が会場手前に配置されていました。そこで、「手前側を観光のお客様にしてしまうと、ビジネスのお客様の出入りがあって落ち着かない上、会場奥の調理場近くに待機しているスタッフの目も届きにくいのでは」という問題提起をして、「ビジネスと観光の位置を変更してみては」と提案しました。実際の現場で確認すると、案の定変えた方が良いという結論にいたりました。

旅館の経営者は、スタッフから下の名前で呼ばれたり、敬語抜きで話すスタッフもいる程、従業員との距離が近く、諸々の権限も現場に預けるような方です。それなのに、今まで意見が出てこなかったのは、「社長が恐いからそんなこと思っても口にできない」という訳ではなく、思っていても口にする機会がなかっただけなのです。

日ごろ現場にいるスタッフにお客様経験をさせ、考えたり、感じたことを述べる機会を設けるだけでも現場はかなり改善できるはずです。

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『おもてなし接客術』㉔―「生産性向上には教育を」

Posted on 2017-04-16

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉔です。
「生産性向上には教育を」

おもてなし接客術24

2月に開催した旅館業経営者向けセミナーで、事例を中心に旅館の接客マニュアル作成の必要性について話をしたところ、仕事の依頼を多く頂きました。そこで、その内容の一部を紹介いたします。

旅館業界でも「生産性向上」が注目ワードになっていて、業務効率向上のためIT化や作業順序の見直しなどを徹底する動きが出ています。もちろん、その事も大切ではありますが、個人的にはIT化や業務見直しよりも、従業員の教育の方が先決であると考えています。

お客様との接客時間が長い旅館業でもっとも効率が悪いのは①接客の流れが確立していない②お客様からの質問に答えられない③お客様に満足してもらえない――ことだと考えています。接客の流れが確立していないということは、効率の良い動きをしている人もいればそうでない人もいるという状態です。

お客様の質問に答えられないということは、きちんとした知識を身に付けておけば30秒で回答できるものが、10分以上も時間がかかってしまうケースがあるということです。そして、お客様に満足してもらえないということは、リピーターにも繋げられていないということです。

接客の流れを確立し、質問にも即答できるスムーズな接客を提供できれば、接客においては、きっとお客様に満足してもらえるでしょう。

接客したお客様をリピーターや紹介客獲得に繋げられるのは、非常に生産性の高い行為だと言えますが、その反対は生産性の低い行為だということになります。従業員に効率の悪い3要素が揃ってしまうと、いくらIT化や業務効率化を推進したところで、生産性の向上は難しいものと考えています。

そこで提案したいのが、接客のマニュアルを作成するということです。一度きちんとした接客マニュアルを構築して、この3要素を網羅した上で、IT化などを推進すれば、明らかな生産性向上が実現できるでしょう。

旅館で「研修直後は皆頑張って教えられた通りのことをするんだけど、なかなか継続しなくて」という話は、研修を担当させていただく旅館で良くお寄せいただくご相談です。

実はその悩みを解決するのもこの接客マニュアルです。セミナーでご登壇いただいた南平台温泉ホテルでは、新入社員には、先輩に師事させるよりも何よりも先に、マニュアルを見せるようにしています。

そうすると、「新人さんはマニュアルを見てから現場に入るので、先輩である、私がマニュアルと違うことをしていると示しが付かない…。マニュアルに忠実に従わないといけない」という意識付けにもなっているようです。

生産性向上を実現するためにも、マニュアル作成をしてみてはいかがでしょうか。

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『おもてなし接客術』㉓―「到着前からのおもてなし」

Posted on 2017-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉓です。
「到着前からのおもてなし」

おもてなし接客術23

「今度、地元のタクシー会社を3社呼んで研修をします」という話を、支援させていただいている先から聞きました。理由を聞くと、地元タクシー会社の対応が悪すぎて、タクシーを利用するお客様の到着時のご機嫌が悪いことが多々あるからとのことです。恐らく荷物の扱い方や言葉遣いも酷いのでしょう。予約を詰めすぎて、お客様のお迎え時間にも間に合わないことも時々あるようです。

この施設は所在する県も異なる2館の宿を経営しているのですが、もう一方の旅館近くにあるタクシー会社では、このような事態にはならないようですので、タクシー会社全般ということではなく地域性も大きく影響していると思います。

私も過去に何度か、旅館組合からの依頼でタクシー会社向けの研修を担当したことがあります。

そのことから、観光地のタクシー運転手の接客対応を改善する必要性は常日頃感じることです。

タクシーを利用する宿泊客が多く、単価が高めで且つおもてなしに力を入れている宿ほど、タクシー会社を選定されています。

私の研修でもよく話をしますが、宿に到着時のお客様の精神状態は、その後の宿の評価に大きくかかわってきます。全く関係の無いことであっても、到着時の機嫌が悪ければ宿についても否定的な視点が働きやすくなり、粗探しをし始めます。到着時のお客様の感情をコントロールすることは、宿にとっても非常に大事なことなのです。

タクシーの話からは少し反れますが、先日視察した旅館では、最寄り駅からの送迎バスの中で、良い香りのする温かいおしぼりを提供し、車内ではヒーリングミュージック(癒しの曲)が流れていました。その他の対応を見ても、顧客の心理状態をよくコントロールされていると感じるとともに、じゃらん.netの口コミ評価4.9というのも頷けました。

タクシー会社に限らず、バス会社、鉄道の駅員など、宿泊前後の接点となる事業者のスタッフの対応に、日ごろ不満を感じている場合には、宿主導で接客研修会を開いてみてはいかがでしょう。多くの事業会社の経営者も、宿側からの提案を有難く思うはずです。宿側にとっても、宿泊前後のお客様の印象を良くすることは、メリットも大きいと思います。

タクシー会社を呼んで研修をする宿でも「(このことで)競合の旅館に泊まるお客様の評価も上げてしまうが、背に腹は代えられません」と話をしていましたが、逆に研修の成果が出て他の宿に泊まるお客様がそのタクシーに乗車した際、お客様に接客を褒められるかもしれません。

そのときの会話で「実は〇〇(宿名)に研修をしていただいたのです」という話になれば、良い営業にもなるはずです。

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『おもてなし接客術』㉒―「すべきことをしないのもおもてなし」

Posted on 2016-12-20

旬刊旅行新聞12月11・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉒です。
「すべきことをしないのもおもてなし」

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先日、ある旅館から「お客様のお見送りはしたいのですが、ご出発時にカーナビの設定をするお客様が多く、その設定を待っていると、逆に急かしてしまっているようで申し訳なく思ってしまいます。スマートなお見送りの仕方はないでしょうか」というご相談を頂きました。

私も旅館に泊まって出発する際、こういう場面に出くわすことが多くあります。見送りで女将や仲居さんを待たせてしまうのは申し訳ないので、前の日のチェックインの際に、翌日の目的地をカーナビで設定するようにしています。
もし前日に設定ができなかった場合は、「ナビを設定しますので、もう結構ですよ」と見送りを遠慮するのですが、「どうぞごゆっくり設定なさってください」と、結局待たれてしまいます。そんなときは、取り敢えず出発して、後で一旦車を止めて、ナビを設定しますので、ご相談される旅館側の心情もよく理解できます。

お見送りする側(旅館サイド)としては、純粋にお見送りがしたいと思っているはずで、その際に、例えお客様がカーナビの設定を始めても、まさか「早く行け」とは思っていないはずです。

一方で、見送られる側(お客様サイド)は、車の外で出発を待っているスタッフの姿を見ると、「仲居さんを待たせて出発にもたつくのは不格好だし、取り敢えず早く出発しないと」と、急かされるような気持ちになるわけです。

このように、見送られる側の配慮や心情を考慮すると、お客様のことを「思って、為す」ことを「おもてなし」と考えた時に、最後までお見送りをすることが必ずしも最善であるとは限りません。

実はこういった事情に対して、具体的な策を講じているお宿があります。そこではWebサイトやチェックインの際、お客様にお渡しするツールの中に、「私たちがお見送りをしようといつまでも側に立ってしまうと、お客様が気忙しく感じられるでしょうから、ご出発になるまでのお見送りを社員に推奨しておりません」と明記されています。それが、季粋の宿 紋屋の「お見送り」項目http://www.monya.co.jp/story5.htmlです。

他の旅館と比較すると、ややあっさりしているなという印象はありますが、宿側のコメントにある通り、落ち着いてカーナビやシートを設定することができて、むしろ「快適で気が利くな」と感じました。

今回、見送り時の悩みをご相談いただいたお宿には、お会計の際にフロントカウンターにこのような記載をすることを提案させていただきました。

「マニュアルにあることはリアルの接客の1割でしかない。あとの9割はスタッフ自身で考えて作っていかなければならない」。これはある旅館の女将さんの言葉ですが、『おもてなし接客』とはこのことなのです。

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『おもてなし接客術』㉑―「カスタマージャーニーマップ」

Posted on 2016-10-11

旬刊旅行新聞10月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉑です。
「カスタマージャーニーマップ」

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「お客さまの視点で考えよう」と言うのは簡単ですが、実際にお客様体験をしないと、なかなか分からいものです。たとえば、お客さま視点で物を考えようとするときに、スタッフである自分が接客している姿が見えなければ、本当にお客さま目線に立ったとは言えないわけです。

そこでお勧めしたいのが、カスタマージャーニーという考え方です。これは、お客さまの経験をストーリーで捉えるということです。お客さまが商品・サービスを購入・利用する際に、企業との間で発生するやりとりや、お客様が抱く疑問・期待等の感情、行動をプロセス化し、一連の流れとしてとらえることを指します。企業視点では見えにくいプロセスを、可視化してとらえることができ、課題の発見や部門間連携への意識を高め、結果として顧客満足へ繋がるという考え方です。

たとえば、宿側から見た「チェックイン~客室案内」のジャーニーマップは次の通りです。

1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)。
3.夕食時間のヒアリング。
4.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
5.挨拶「それではお部屋へご案内します」。このような感じです。

続いて宿泊客から見たジャーニーマップです。分かりやすいように、宿側と重複する部分には〇を付します。

〇1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.荷物を置ける場所の確認(荷物を持ったままだと書きづらい)。
3.疑問(予約の時に名前も住所も知らせたけど、なんでまた記入しないといけないのだろう)。
〇4.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)
5.疑問(大浴場にはどんなアメニティが置いてあるのだろう。タオルは持っていく必要があるのか。売店には試食が置いてあるのか)。
〇6.夕食時間のヒアリング。
7.疑問(すぐにビールが飲みたいけど、今注文できるのか)。
〇8.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
〇9.挨拶「それではお部屋へご案内します」。
10.質問・疑問(他にも確認したいことがあったけど、忘れちゃった。)。
11.お手洗いへ行く。

2つのジャーニーマップを比較してみると、旅館側のジャーニーマップは一方的で、お客様の心理状況を全く汲み取れていないように見えます。

随時お客さまが抱く疑問に対して、先回りをしてご案内をして差し上げると「痒いところまで手が届くサービス」となり、多くのお客さまの満足度が高まるのは言うまでもありません。

メインターゲットを定めて、カスタマージャーニーを描いてみてはいかがでしょうか。

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