連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㊴―「お客様に不満の種を作らせない」

Posted on 2019-10-20

旬刊旅行新聞10月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊴です。

「お客様に不満の種を作らせない」

お付き合い先の旅館に投稿されたクチコミの一部です。

 「どこの宿でもやっていることですが、車に乗って出発するまで、お見送りで待っていただくのも困りものです。発車前に荷物を整理したり、次の目的地までのナビをセットしたりと色々とやることはあるのですが、早く移動しないといけないような雰囲気なので、とりあえず出発してから、路肩に車を止めて色々と作業することになります」。

 旅館は「お客様のお見送りをしたい」という“気遣い”でしょうが、お客様はスタッフに“気を遣って”早く出発されたようです。

 双方が“気を遣った”結果が、お客様のマイナス評価を生むという残念な結果となってしまいました。

 何か不満に思うことがあれば、その場でスタッフに知らせてもらえれば、いくらでもその不満を解消する術があると旅館側は思うでしょう。お客様が「お見送りはもう結構です」と一声掛ければ、お互い気持ちの良いものになったはずです。

 しかし、これが「お客様」です。その場ですぐに不満を伝える方は、少数派かも知れません。そこで、お客様に少しでも不満の種を作らせないための速攻性のある接客テクニックを紹介します。どれも「お客様に興味・関心を持つ」ことが必要となるものです。

 1.不明点の確認無しに内線電話を案内しない。
 「何かご不明な点はございませんか」の一言無しに、「何かご不明な点がございましたらフロント○番までご連絡ください」と案内しているスタッフが実に多くいます。

 2.ワンパターンの観光案内をしない。
 客層や天候を考慮した提案“も”できていますか。いつ聞いても同じ有名観光地だけを案内する、ワンパターンの対応を良く耳にします。

 3.客層を見ない館内・客室案内をしない。
 ただでさえ長くなりがちな館内・客室案内を、客層を見て説明の仕方に工夫しましょう。
 1人旅にもかかわらずキッズスペースを紹介したり、体の不自由な方にフィットネスコーナーの案内をしたりしていませんか。

 4.お客様を見て見ぬふりをしない。
 お客様を素通りしていませんか。お客様の存在に気が付いたら挨拶や会釈はしてほしいです。

 5.お客様を「お客様」と呼び続けない。
 お客様にはお名前で呼んでほしい方とそうでない方の両方がいます。どちらのお客様にも納得していただくために、客室や個室の中などの閉鎖的な空間では、名前をお呼びし、他のお客様もいるオープンスペースでは「お客様」と呼ぶという対応ができると良いでしょう。

 お客様の不満の種を少しでも作らせないためにも、お客様の前でついついやってしまっていないかを確認してみてください。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㊳―「動画マニュアルで生産性向上を」

Posted on 2019-08-25

旬刊旅行新聞8月11日・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊳です。

「動画マニュアルで生産性向上を」

 

旅館の接客マニュアルを、動画で作成しようとする旅館が増えてきています。

 「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、紙に書かれたものを読んで理解するより、実際の動きを見てもらった方が教える側は伝えやすいし、学ぶ側も理解しやすいのは、皆さんご承知の通りです。


 私が、紙ベースの接客マニュアルの作成と定期的な研修も担当している旅館が、動画マニュアルを作成しました。


 これが非常に良くできていて、これからのスタッフ教育だけでなく、旅館経営に大いに役立つ構成となっています。動画では、いわゆる“仲居さん”が担当する場面が、すべて収められています。


 動画マニュアルの特徴は、お客様の動きやスタッフの接客の“流れ”があるため、自然と実際の接客場面に近い状況(応用編)を作り出すことができ、紙ベースのマニュアルでは補いきれない部分も動画ではカバーできることです。


 この旅館の動画が優れているのは、接客の動きだけではなく、座学などで教育するような内容も動画にまとめていることです。


 旅館のホームページや地図を用いながら、旅館の歴史や立地、東京、大阪など大都市からの距離や時間、宿泊客が訪れる周辺の観光地についてセミナー形式で説明しています。


 ほかにも、本来なら歩き回って行う館内ツアーも、動画を駆使して案内しています。旅館の規模にもよりますが、本来なら1―2時間も掛かってしまう館内ツアーです。


 説明したいことは数十分で済むのに、館内の移動時間に多く時間が取られてしまうのが悩みの種でしょう。それが、動画で編集できるため、ムダな移動時間を省いて説明に集中する研修に仕上げることができます。


 旅館の社員は3年勤めれば上等と言われています。人によっては数カ月で退職してしまうかもわからない。そうした社員に掛ける研修は、なるべく時間を掛けずに効率良く行うことが求められます。


 この動画マニュアルの内容はすべて研修しようとすると、丸1―2日かかると思いますが、動画では2時間半で済みます。


 新人スタッフとは直接コミュニケーションを取るべきとか、コミュニケーションが希薄になるのではと懸念する方もいらっしゃるかもしれません。


 決まりきった説明は動画で十分です。そこで余った時間を個人面談など通して個々人の分からないことや不安な点、考えなどを聞き出す方が、よほど有益だと思います。


 「生産性向上」や「働き方改革」にも直結する動画マニュアルの導入を、ぜひ検討されてみてはいかがでしょう。


 なお、このような動画マニュアルは、紙ベースの接客マニュアル無しに一足飛びに作るのは不可能ということは付け加えておきます。

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『おもてなし接客術』㊲ ―「清掃にこそおもてなしを」

Posted on 2019-06-17

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊲です。

「清掃にこそおもてなしを」

 宿のクチコミで一番厳しく評価されるのは、「清掃面」です。
 
 料理や接客の内容に関しては、お客様は「費用対効果」の視点で判断されます。
 
 そもそも個人の好みの差があるため、同じものを提供しても意見が分かれるのが普通です。
 
 しかし、清掃においては、宿泊料金が安かろうができていて当たり前ですので、「値段が安いからしょうがない」という心理にはなりません。
 
 また、個人の嗜好に影響されることはないので、清掃が行き届いた客室はAさんにも、Bさんにも評価は高くなるはずです。
 
 その意味では、「清掃面」が宿の評価を左右する、と言っても過言ではありません。
 
 私は現在、「旅館の客室清掃マニュアル」の作成支援もしています。もともとは、接客マニュアルの作成をしていた旅館から、「清掃のマニュアルも作ってほしい」と依頼があり、携わることになりました。
 
 私自身は、清掃についての特別な知識やスキルがあるわけではありませんので、あくまでお客様(=おもてなし)視点で、効率の良い業務の流れを構築するという観点から、マニュアル作成に関わっています。
 
 旅館の客室清掃は、新たなお客様を迎えるために使われた部屋を綺麗に掃除し、整理整頓することが目的ですが、ただ掃除と備品をセットさえすれば良いというわけではありません。限られた時間と人数で全部屋を仕上げることが命題です。
 
 ある程度、見た目や効率を重視せざるを得ないことは、どちらの宿にも当てはまることだと思います。
 
 通常、清掃時間は1部屋平均20―40分程で仕上げる旅館が多いと思います。本当は、すべての場所を清掃したいのですが、①毎日絶対にする②週に1度はする③月に1度はする――。という頻度を分けて行う必要があるので、その分類をしてから、業務の効率を考えて取り組む順序を決めていきます。
 
 整理整頓という視点では、物を置く場所やそろえる位置、並べる順序を「どうしたらお客様にとって心地良いか」、「どうしたら宿側の意図が伝わるか」などの視点で考え決定していきます。
 
 また、あくまで一例ですが、TVを付けた時のチャンネルは「NHK」に設定し、音量は「20」に調整する。調光できる照明の場合は、「全照」に設定しておくなど、「どうしたらお客様に不快に思われないか」などの視点で考え、基本設定を決めていきます。
 
 私の経験上「ただなんとなく」で決めてしまうと、そのルールは絶対に定着しません。
 
 きちんと「お客様にとって一番都合が良いから」との理由付けをしたルールは定着するものです。
 
 清掃マニュアル作りを通じて、接客係だけでなく、清掃員の方にも、おもてなしの心が必要だと改めて実感させられます。



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『おもてなし接客術』㊱―「接客とおもてなしの違い」

Posted on 2019-04-16

 ある日、会社の留守番電話にメッセージがありました。聞いてみると、企業名と用件は聞き取れたものの、肝心の名前を聞き取ることができません。


 取り急ぎその会社に電話をかけ、「観光文化研究所の井川と申します。先ほどこちらのお電話より〇×の件について留守番電話のメッセージを頂いたのですが、どなたか心当たりのある方はいらっしゃいますでしょうか」と問い合わせました。


 すると、電話口の担当者から「今わかるものがおりませんので、再度掛けなおしてもらえますか」と即答されてしまいました。
 なぜ確認せずに即答できるのかという疑問と、再度電話を掛けても、同じ対応をされては困ってしまうので、「再度電話を掛けてどうしたら良いですか」と正直に尋ねました。


 すると、自分の無茶苦茶な対応に気が付いて「もう一度御社名をお聞かせいただけますか」と聞かれたので、再度会社名を伝えました。ようやく、きちんと対応しようという相手の姿勢が見え始め、安心しました。


 その後「担当者は名乗っていませんでしたか」と言われました。「その部分だけ、どうしても聞き取れませんでした」と答えると、「確認いたしますので、少々お待ちください。保留音を流しても良いでしょうか」と応対してくださり、その後は問い合わせの方と直接話ができました。


 結果的には私の電話の目的は果たせたものの、この企業に対する私の印象は、残念なものであったのは言うまでもありません。


 残念なことは、電話口で初めに対応した「スタッフ」に対する印象ではありません。「企業」に対する印象ということを強調しておきます。


 今回の電話でのやりとりを振り返ると、スタッフの“接客”はしっかりしていたということです。いわゆる話し方や言葉遣いはとくに問題なく、むしろ良い位でした。


 それにもかかわらず「企業の印象を下げてしまった要因は何か」と考えると、相手のことを考えた対応や気の利いた対応が、欠落していたことでした。
 相手の気持ちを推測できれば、置かれた状況を把握しようとし、何を求めているのかを知ろうと考えるはずです。それを“面倒臭がる”から今回のような残念な対応になってしまいます。


 「基本」はできても、「応用」対応ができない。これが「おもてなし」を提供できるか、できないかの差です。顧客満足が得られるか否かは、やはり「おもてなし」が提供できるか、できないかに深くかかわります。


 電話対応は相手とのやり取りが周りから見えにくいため、不真面目なスタッフほど、手を抜きがちです。


 最近では、宿でも電話対応に録音機能を設け始めています。お客様とのトラブル防止が第一の目的であることが多いようですが、スタッフ教育に活用するのも一案です。

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『おもてなし接客術』㉟―「新入社員研修8つの心得」

Posted on 2019-02-18

 

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉟です。

「新入社員研修8つの心得」

新入社員を迎える4月が目前に迫り、新入社員研修をどうするか検討している宿も多いと思います。


 旅館のスタッフ研修を専門に行い、毎年新入社員研修も担当させていただく私から、各宿の新入社員研修で、是非取り組んでもらいたい8つの項目をお伝えします。


 1.宿の予約体験
 まず、実際のお客様と同じように、インターネット経由で自宿の予約を体験してもらいます。予約する時に、お客様がどのような情報を入力する必要があるかを理解するとともに、分かりづらい点があればそのことを報告してもらいます。

 2.宿の宿泊体験
 スタッフ研修をしていると、「自宿の会席料理を食べたことが無い、お風呂に入ったことが無い」という声をよく聞きます。これはあまりにも無責任で、スタッフ失格ですので早期に体験してもらいます。
 また、自宿に泊まったことのない人の視点は宿側にとっても貴重で改善につなげられることも多いので、気が付く点を報告してもらうと良いでしょう。

 3.旅館業界の動向
 旅館で働く以上、旅館業界の動向を把握しておくことが望ましいです。「全国に旅館が何軒あって、それが30年前と比較してどうなのか」や、「旅館が衰退していった原因は何なのか」など大まかなことは教えておくと良いでしょう。

 4.旅館の利益構造について
 利益について知ってもらい、会社の設備・備品を大切にする意識を持ってもらうとともに、会社が利益を上げることや、スタッフが給料をもらう大変さを理解してもらいます。

 5.宿の歴史、こだわり、コンセプト
 歴史のあるところは、前身や創業年、何代目かなどの沿革を伝えます。コンセプトなどは全スタッフで共有し、日常業務のなかでもその点を意識して行動してもらいます。

 6.地域の歴史・文化について
 地域の歴史文化について理解を深めてもらうことは、お客様をリピーターに結びつけたり、商品企画やサービスの幅を広げるうえでも役立ちます。

 7.基本接客・おもてなしについて
 旅館業は究極の接客業と言われるくらいですので、基本接客は早々に身に付けておく必要があります。また、おもてなしについての理解も深めてもらい、顧客満足が提供できるスタッフを目指してもらいます。

 8.各配属先の業務について
 いずれの部署でも、体系的にまとめたマニュアルをベースに業務の流れを把握してもらい、ロールプレイングや実践練習を繰り返します。
 

研修も接客だけではなく、業界やマーケティング(販売方法)、数字についての教育も行い、バランスの取れた視点を養うことをお薦めします。
 外部講師を招いての研修をご希望の方は、お問い合わせ下さい。

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