連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㊲ ―「清掃にこそおもてなしを」

Posted on 2019-06-17

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊲です。

「清掃にこそおもてなしを」

 宿のクチコミで一番厳しく評価されるのは、「清掃面」です。
 
 料理や接客の内容に関しては、お客様は「費用対効果」の視点で判断されます。
 
 そもそも個人の好みの差があるため、同じものを提供しても意見が分かれるのが普通です。
 
 しかし、清掃においては、宿泊料金が安かろうができていて当たり前ですので、「値段が安いからしょうがない」という心理にはなりません。
 
 また、個人の嗜好に影響されることはないので、清掃が行き届いた客室はAさんにも、Bさんにも評価は高くなるはずです。
 
 その意味では、「清掃面」が宿の評価を左右する、と言っても過言ではありません。
 
 私は現在、「旅館の客室清掃マニュアル」の作成支援もしています。もともとは、接客マニュアルの作成をしていた旅館から、「清掃のマニュアルも作ってほしい」と依頼があり、携わることになりました。
 
 私自身は、清掃についての特別な知識やスキルがあるわけではありませんので、あくまでお客様(=おもてなし)視点で、効率の良い業務の流れを構築するという観点から、マニュアル作成に関わっています。
 
 旅館の客室清掃は、新たなお客様を迎えるために使われた部屋を綺麗に掃除し、整理整頓することが目的ですが、ただ掃除と備品をセットさえすれば良いというわけではありません。限られた時間と人数で全部屋を仕上げることが命題です。
 
 ある程度、見た目や効率を重視せざるを得ないことは、どちらの宿にも当てはまることだと思います。
 
 通常、清掃時間は1部屋平均20―40分程で仕上げる旅館が多いと思います。本当は、すべての場所を清掃したいのですが、①毎日絶対にする②週に1度はする③月に1度はする――。という頻度を分けて行う必要があるので、その分類をしてから、業務の効率を考えて取り組む順序を決めていきます。
 
 整理整頓という視点では、物を置く場所やそろえる位置、並べる順序を「どうしたらお客様にとって心地良いか」、「どうしたら宿側の意図が伝わるか」などの視点で考え決定していきます。
 
 また、あくまで一例ですが、TVを付けた時のチャンネルは「NHK」に設定し、音量は「20」に調整する。調光できる照明の場合は、「全照」に設定しておくなど、「どうしたらお客様に不快に思われないか」などの視点で考え、基本設定を決めていきます。
 
 私の経験上「ただなんとなく」で決めてしまうと、そのルールは絶対に定着しません。
 
 きちんと「お客様にとって一番都合が良いから」との理由付けをしたルールは定着するものです。
 
 清掃マニュアル作りを通じて、接客係だけでなく、清掃員の方にも、おもてなしの心が必要だと改めて実感させられます。



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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㊱―「接客とおもてなしの違い」

Posted on 2019-04-16

 ある日、会社の留守番電話にメッセージがありました。聞いてみると、企業名と用件は聞き取れたものの、肝心の名前を聞き取ることができません。


 取り急ぎその会社に電話をかけ、「観光文化研究所の井川と申します。先ほどこちらのお電話より〇×の件について留守番電話のメッセージを頂いたのですが、どなたか心当たりのある方はいらっしゃいますでしょうか」と問い合わせました。


 すると、電話口の担当者から「今わかるものがおりませんので、再度掛けなおしてもらえますか」と即答されてしまいました。
 なぜ確認せずに即答できるのかという疑問と、再度電話を掛けても、同じ対応をされては困ってしまうので、「再度電話を掛けてどうしたら良いですか」と正直に尋ねました。


 すると、自分の無茶苦茶な対応に気が付いて「もう一度御社名をお聞かせいただけますか」と聞かれたので、再度会社名を伝えました。ようやく、きちんと対応しようという相手の姿勢が見え始め、安心しました。


 その後「担当者は名乗っていませんでしたか」と言われました。「その部分だけ、どうしても聞き取れませんでした」と答えると、「確認いたしますので、少々お待ちください。保留音を流しても良いでしょうか」と応対してくださり、その後は問い合わせの方と直接話ができました。


 結果的には私の電話の目的は果たせたものの、この企業に対する私の印象は、残念なものであったのは言うまでもありません。


 残念なことは、電話口で初めに対応した「スタッフ」に対する印象ではありません。「企業」に対する印象ということを強調しておきます。


 今回の電話でのやりとりを振り返ると、スタッフの“接客”はしっかりしていたということです。いわゆる話し方や言葉遣いはとくに問題なく、むしろ良い位でした。


 それにもかかわらず「企業の印象を下げてしまった要因は何か」と考えると、相手のことを考えた対応や気の利いた対応が、欠落していたことでした。
 相手の気持ちを推測できれば、置かれた状況を把握しようとし、何を求めているのかを知ろうと考えるはずです。それを“面倒臭がる”から今回のような残念な対応になってしまいます。


 「基本」はできても、「応用」対応ができない。これが「おもてなし」を提供できるか、できないかの差です。顧客満足が得られるか否かは、やはり「おもてなし」が提供できるか、できないかに深くかかわります。


 電話対応は相手とのやり取りが周りから見えにくいため、不真面目なスタッフほど、手を抜きがちです。


 最近では、宿でも電話対応に録音機能を設け始めています。お客様とのトラブル防止が第一の目的であることが多いようですが、スタッフ教育に活用するのも一案です。

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『おもてなし接客術』㉟―「新入社員研修8つの心得」

Posted on 2019-02-18

 

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉟です。

「新入社員研修8つの心得」

新入社員を迎える4月が目前に迫り、新入社員研修をどうするか検討している宿も多いと思います。


 旅館のスタッフ研修を専門に行い、毎年新入社員研修も担当させていただく私から、各宿の新入社員研修で、是非取り組んでもらいたい8つの項目をお伝えします。


 1.宿の予約体験
 まず、実際のお客様と同じように、インターネット経由で自宿の予約を体験してもらいます。予約する時に、お客様がどのような情報を入力する必要があるかを理解するとともに、分かりづらい点があればそのことを報告してもらいます。

 2.宿の宿泊体験
 スタッフ研修をしていると、「自宿の会席料理を食べたことが無い、お風呂に入ったことが無い」という声をよく聞きます。これはあまりにも無責任で、スタッフ失格ですので早期に体験してもらいます。
 また、自宿に泊まったことのない人の視点は宿側にとっても貴重で改善につなげられることも多いので、気が付く点を報告してもらうと良いでしょう。

 3.旅館業界の動向
 旅館で働く以上、旅館業界の動向を把握しておくことが望ましいです。「全国に旅館が何軒あって、それが30年前と比較してどうなのか」や、「旅館が衰退していった原因は何なのか」など大まかなことは教えておくと良いでしょう。

 4.旅館の利益構造について
 利益について知ってもらい、会社の設備・備品を大切にする意識を持ってもらうとともに、会社が利益を上げることや、スタッフが給料をもらう大変さを理解してもらいます。

 5.宿の歴史、こだわり、コンセプト
 歴史のあるところは、前身や創業年、何代目かなどの沿革を伝えます。コンセプトなどは全スタッフで共有し、日常業務のなかでもその点を意識して行動してもらいます。

 6.地域の歴史・文化について
 地域の歴史文化について理解を深めてもらうことは、お客様をリピーターに結びつけたり、商品企画やサービスの幅を広げるうえでも役立ちます。

 7.基本接客・おもてなしについて
 旅館業は究極の接客業と言われるくらいですので、基本接客は早々に身に付けておく必要があります。また、おもてなしについての理解も深めてもらい、顧客満足が提供できるスタッフを目指してもらいます。

 8.各配属先の業務について
 いずれの部署でも、体系的にまとめたマニュアルをベースに業務の流れを把握してもらい、ロールプレイングや実践練習を繰り返します。
 

研修も接客だけではなく、業界やマーケティング(販売方法)、数字についての教育も行い、バランスの取れた視点を養うことをお薦めします。
 外部講師を招いての研修をご希望の方は、お問い合わせ下さい。

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『おもてなし接客術』㉞―「観光地としてのおもてなし」

Posted on 2018-12-11

旬刊旅行新聞12月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉞です。

「観光地としてのおもてなし」

先日、小樽市で開催された「観光関連産業で求められる人材育成講座」内の一講座で、「道内・国内観光客に対する魅力の発信とおもてなし」というテーマで講演をさせていただきました。

講座の一部では、おもてなしについて講義し理解を深めてもらったうえで、滞在前・滞在中・滞在後という時系列に沿って、どのようなおもてなしが提供できるかを、ワークショップで議論してもらいました。

受講者からは、「小樽」という町を軸にさまざまな施策を考えて発表してもらいました。なかでも印象的だったのは、滞在後の「小樽市に対する評価を聞くアンケートを実施する」というものでした。

私は「旅館」の研修を通じて、滞在前・滞在中・滞在後にどのような「おもてなし」を提供できるかに試行錯誤していますが、「観光地」という視点では、深く考えたことがありませんでした。旅行をしていると、国や地方の行政単位でも「〇〇(国名や地域名)の人は、皆さん温かかった」という感想を耳にすることがあります。

やはり、その地域の印象がそのまま評価につながっており、旅行のし易さや魅力度向上につながっています。

旅の中継地点である飲食店や宿では、口コミを投稿できるサイトが普及し、常に評価の目に晒されています。

一方で、その中継地をつなぐ交通手段や観光案内所、地元商店の人々、さらに当該観光地のWebサイトや交通・観光案内の仕方(看板など)を含めた観光客視点の利便性などは、評価されても、それをダイレクトに主体者側が把握する仕組みは、整っていないように思います。

具体的には、「〇〇観光案内所のスタッフの対応が良かった/悪かった」や「〇〇温泉のWebサイトの作りが時代遅れで、スマホでの閲覧がしづらかった」というようなことです。

旅行中に色々と感動したり、不満に思うことはあっても、その感想や評価を当事者に伝える環境が整っていないのです。

SNS(交流サイト)で自身の行動や思いを積極的に発信している人は、感じたことをアップしているかもしれませんが、それが相手に伝わっているかは、また別の話です。

余程のことであれば、相手先に直接クレームを言う人もいるかもしれませんが、大体は仲間同士で愚痴を言って終わってしまうのがふつうです。

それが旅館であれば、予約サイトの口コミ投稿機能が発達しているため、お客様の些細な感想も(嫌でも)把握しやすい環境が整っているわけです。

お付き合い先の旅館でも、お客様の声から改善を積み重ねてレベルを、めきめきと上げているところは少なくありません。

そう考えると、「観光地」という視点ではまだまだ改善の余地があり、そこに目を向けることで発展が期待できるものと思います。

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『おもてなし接客術』㉝―「おもてなしも程々に」

Posted on 2018-10-11

旬刊旅行新聞9月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉝です。

「おもてなしも程々に」

支援先のゴルフ場で7、8月は前年対比マイナスという残念な結果となってしまいました。6月までは同比プラスと好調に推移してため、悔しさもひとしおです。マイナス要因は、昨年が冷夏でプレーヤーが例年よりも多く、今年は異常な酷暑でプレーヤーが少なかったことに尽きます。

 昨年8月の東京エリアの天気は、最高気温が31度以下の日は16日でしたが、今年はわずか6日しかなかったようです。ゴルフ場のように冷夏の方が繁盛する業種もある一方で、猛暑で繁盛する業種もあります。

ただ、あまりに極端だと、色々と不都合が出てきます。やはり何事も“程々が好ましい”という言葉が当てはまると思います。このことは言わずもがな「接客・おもてなし」についても当てはまります。

 顧客満足について考えると、「少しやりすぎかな」というくらいのことをしないと、お客様の印象に残らないという考え方があります。控え目にすると、お客様の印象に残らないうえに、控え目“過ぎる”と「こんなこともしないのか」とサービス不足とみなされ、クレームになってしまうのです。

 お客様が快適に思う「接客・おもてなし」の“程度”は、人によっても異なります。実にコントロールが難しいものの、お客様が深層心理で求めているのは、「(お客様個々人の)程度をわきまえた接客・おもてなし」にほかなりません。

 現在マニュアル作成の支援をしている旅館で、①お子様のお名前を聞き、滞在中はお名前を呼んで差し上げてはどうか②お子様にはウェルカムドリンクに大人と同じお茶ではなく、ジュースを提供して差し上げたらどうか――と、子供連れのお客様向けの対応を提案しました。

 旅館からの共感は得ることができましたが、①については、あまりにたくさんのお子さんの名前を呼んでしまって「耳障りだ」と逆効果になることがあるので、目安の上限回数を決めたい、ということになりました。

 ②については「子供扱いせずに、大人と同じにしてほしい」という意見(主にインバウンド客より)もありました。

 また、旅行中は“いい子”でいてもらうためにジュースをあげることが多く、親としては必要以上にあげたくないといった意見もあり、これまで通りで行くことになりました。

 あくまで一例ですが、こちらが喜んでもらいたいと思ってしたことが、お客様にとっては程度を超えて映ってしまう可能性があることは、心得ておかなければなりません。

 スタッフの配慮の食い違いを少しでも無くすために、お客様に質問をするなどのコミュニケーションをとることは大事なのですが、やはりこれも程々が求められます。

 つくづく旅館接客の複雑さや求められるレベルの高さを思い知らされます。

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