連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㊶―「クラブメッドに学ぶおもてなし」

Posted on 2020-02-15

旬刊旅行新聞2月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊶です。

「クラブメッドに学ぶおもてなし」

 先日、タイ(プーケット)のクラブメッドに滞在しました。クラブメッドは、近年、新興の宿泊施設で取り入れられることも多くなってきた「オールインクルーシブ」発祥の企業です。

 クラブメッドに滞在していると、どうしても日本旅館と比較してしまいますが、その違いはマトリクスで言うと対極の位置にあります。

 たとえば、利用者の滞在日数は旅館が主に1泊2食型なのに対し、クラブメッドは長期滞在型です。

 食事スタイルは、旅館では時間や内容が定められているのに対し、クラブメッドでは、時間も内容も自由です。

 アクティビティは、外に出掛けて楽しむ旅館に対し、クラブメッドでは敷地内で楽しむといった具合です。

 このように、旅館と対極のクラブメッドではありますが、そこから学べるおもてなしもあります。 

 具体的には、わかりやすい形で、こちらの情報を事前に頭に入れて、さまざまな対応を取ってくれます。滞在中のようすを気にかけてくれるという点でも、感心することがとても多かったです。

 たとえば、到着時に子供の名前をすぐに呼んでくださったのには驚きました。

 海外旅行ということで、家族全員の名前を事前にホテル側に知らせていたこともありますが、会ってすぐに名前を呼ばれたことで、子供たちも嬉しく安心したことと思います。

 また、食事中に「何か気になることが無いですか」と、こちらの反応を気にかけてくれ、食事を残したときには「口に合わなかったですか」とわざわざ聞いてくれました。

 また、食事中に私たちの席が空いていれば、スタッフが「座っても良いですか」と聞いて来て、スタッフと宿泊客が一緒に食事を楽しむスタイルを採用しています。

 その間に、コミュニケーションを取りながら滞在中の困り事を解消し、アクティビティやショー、イベントなどその後の過ごし方を提案してくれるというように、顧客満足度を上げています。

 このような対応は、明らかにこちらのことを“気にかけてくれている”ということが伝わります。

 日本では、お客様に直接聞くことをせずにようすを伺いながらスタッフ側で推測・判断することが多く、この「察する」とか「言わずもがな」という対応が、日本の接客のレベルの高さにもつながっています。

 ただその一方で、クラブメッドのようなあからさまでわかりやすい接客スタイルも、とくに外国人観光客や子連れのお客様の場合などは、時と場合によっては、効果的であると気づかされます。

 日本のやり方に固執するのではなく、海外リゾートで学んだ接客・おもてなしも、旅館をはじめとした接客の現場で効果的に取り入れたいと考えております。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』㊵―「おもてなし上級者のいるUSJ」

Posted on 2019-12-20

旬刊旅行新聞12月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊵です。

「おもてなし上級者のいるUSJ」

 開業18年目にして初めて、USJを訪れました。開業当初はトラブル続きで、ディズニーの2番煎じとも言われていましたが、いまやTDLを凌ぐ勢いのある人気テーマパークとなっています。

 USJ滞在中は、ついTDRと比較をしてしまいますが、その印象はUSJの方が、お客様を楽しませようとする気持ちが強い(強く伝わってくる)というものでした。

 TDRがゲストをゲスト扱いする招待型とするならば、USJはゲストも一緒に作り上げる参加型を意識しているようです。

 同じテーマパークでも、コンセプトがまったく異なるということはスタッフの対応を見ても明らかでした。

 私の経験からすると、会話のきっかけがゲスト発のTDRと、スタッフ発のUSJという違いが見えてきました。

 TDRのスタッフ「キャスト」は、以前から接客本のテーマとして取り上げられるなど話題性も高く、優秀とされています。

 一方で、USJのスタッフ「クルー」は、ようやく最近、テレビでその教育ぶりが取り上げられるようになってきたぐらいです。

 そのため、スタッフの対応などはTDRに比べて劣るのだろう、と勝手な思い込みをしていたのですが、良い意味で期待を裏切られました。

 最も感心したのは、ファストフードスタイルのレストランスタッフが、話術巧みに待ち時間を感じさせない工夫をしていたことでした。テーマパークと言えば「待ち時間」がつきもの。USJでもアトラクションはもちろん、食事をとるのも列に並んで待つのが当然でした。

 私もその行列に並び、ようやく自分の順番になり食事を注文すると、レストランの女性スタッフは、会計中にこちらから聞きもしないのに、間もなく始まる園内イベントのことを話し始めました。

 しかも、後ろに誰も並んでいないのならまだしも、ずらっと行列が続いているのも構わず、呑気に話をしてくるのです。

 私には価値のある話で助かりましたが、後ろに並ぶ人のことを考えると気が引ける思いがしました。そして話が一段落する頃に、丁度商品が提供され「いってらっしゃい」と送り出されたのです。

 絶妙のタイミングとはこのことです。これは、次の順番の人にも同じような対応をしていたのは言うまでもありません。

 ふつうゲストはレジに並ぶのに待たされ、注文が終わると再度商品口で待たされるという流れとなり、2回は待たされることになるわけです。ところが、ゲストと会話をして場をつなげば、レジ待ちの1回待てば良く、「待たされた」というマイナスの経験を1回に軽減できるというメリットがあります。

 1―2分の短時間で、このようなテクニックを駆使できるスタッフは、おもてなし上級者と言えます。

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『おもてなし接客術』㊴―「お客様に不満の種を作らせない」

Posted on 2019-10-20

旬刊旅行新聞10月11日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊴です。

「お客様に不満の種を作らせない」

お付き合い先の旅館に投稿されたクチコミの一部です。

 「どこの宿でもやっていることですが、車に乗って出発するまで、お見送りで待っていただくのも困りものです。発車前に荷物を整理したり、次の目的地までのナビをセットしたりと色々とやることはあるのですが、早く移動しないといけないような雰囲気なので、とりあえず出発してから、路肩に車を止めて色々と作業することになります」。

 旅館は「お客様のお見送りをしたい」という“気遣い”でしょうが、お客様はスタッフに“気を遣って”早く出発されたようです。

 双方が“気を遣った”結果が、お客様のマイナス評価を生むという残念な結果となってしまいました。

 何か不満に思うことがあれば、その場でスタッフに知らせてもらえれば、いくらでもその不満を解消する術があると旅館側は思うでしょう。お客様が「お見送りはもう結構です」と一声掛ければ、お互い気持ちの良いものになったはずです。

 しかし、これが「お客様」です。その場ですぐに不満を伝える方は、少数派かも知れません。そこで、お客様に少しでも不満の種を作らせないための速攻性のある接客テクニックを紹介します。どれも「お客様に興味・関心を持つ」ことが必要となるものです。

 1.不明点の確認無しに内線電話を案内しない。
 「何かご不明な点はございませんか」の一言無しに、「何かご不明な点がございましたらフロント○番までご連絡ください」と案内しているスタッフが実に多くいます。

 2.ワンパターンの観光案内をしない。
 客層や天候を考慮した提案“も”できていますか。いつ聞いても同じ有名観光地だけを案内する、ワンパターンの対応を良く耳にします。

 3.客層を見ない館内・客室案内をしない。
 ただでさえ長くなりがちな館内・客室案内を、客層を見て説明の仕方に工夫しましょう。
 1人旅にもかかわらずキッズスペースを紹介したり、体の不自由な方にフィットネスコーナーの案内をしたりしていませんか。

 4.お客様を見て見ぬふりをしない。
 お客様を素通りしていませんか。お客様の存在に気が付いたら挨拶や会釈はしてほしいです。

 5.お客様を「お客様」と呼び続けない。
 お客様にはお名前で呼んでほしい方とそうでない方の両方がいます。どちらのお客様にも納得していただくために、客室や個室の中などの閉鎖的な空間では、名前をお呼びし、他のお客様もいるオープンスペースでは「お客様」と呼ぶという対応ができると良いでしょう。

 お客様の不満の種を少しでも作らせないためにも、お客様の前でついついやってしまっていないかを確認してみてください。

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『おもてなし接客術』㊳―「動画マニュアルで生産性向上を」

Posted on 2019-08-25

旬刊旅行新聞8月11日・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊳です。

「動画マニュアルで生産性向上を」

 

旅館の接客マニュアルを、動画で作成しようとする旅館が増えてきています。

 「百聞は一見に如かず」ということわざの通り、紙に書かれたものを読んで理解するより、実際の動きを見てもらった方が教える側は伝えやすいし、学ぶ側も理解しやすいのは、皆さんご承知の通りです。


 私が、紙ベースの接客マニュアルの作成と定期的な研修も担当している旅館が、動画マニュアルを作成しました。


 これが非常に良くできていて、これからのスタッフ教育だけでなく、旅館経営に大いに役立つ構成となっています。動画では、いわゆる“仲居さん”が担当する場面が、すべて収められています。


 動画マニュアルの特徴は、お客様の動きやスタッフの接客の“流れ”があるため、自然と実際の接客場面に近い状況(応用編)を作り出すことができ、紙ベースのマニュアルでは補いきれない部分も動画ではカバーできることです。


 この旅館の動画が優れているのは、接客の動きだけではなく、座学などで教育するような内容も動画にまとめていることです。


 旅館のホームページや地図を用いながら、旅館の歴史や立地、東京、大阪など大都市からの距離や時間、宿泊客が訪れる周辺の観光地についてセミナー形式で説明しています。


 ほかにも、本来なら歩き回って行う館内ツアーも、動画を駆使して案内しています。旅館の規模にもよりますが、本来なら1―2時間も掛かってしまう館内ツアーです。


 説明したいことは数十分で済むのに、館内の移動時間に多く時間が取られてしまうのが悩みの種でしょう。それが、動画で編集できるため、ムダな移動時間を省いて説明に集中する研修に仕上げることができます。


 旅館の社員は3年勤めれば上等と言われています。人によっては数カ月で退職してしまうかもわからない。そうした社員に掛ける研修は、なるべく時間を掛けずに効率良く行うことが求められます。


 この動画マニュアルの内容はすべて研修しようとすると、丸1―2日かかると思いますが、動画では2時間半で済みます。


 新人スタッフとは直接コミュニケーションを取るべきとか、コミュニケーションが希薄になるのではと懸念する方もいらっしゃるかもしれません。


 決まりきった説明は動画で十分です。そこで余った時間を個人面談など通して個々人の分からないことや不安な点、考えなどを聞き出す方が、よほど有益だと思います。


 「生産性向上」や「働き方改革」にも直結する動画マニュアルの導入を、ぜひ検討されてみてはいかがでしょう。


 なお、このような動画マニュアルは、紙ベースの接客マニュアル無しに一足飛びに作るのは不可能ということは付け加えておきます。

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『おもてなし接客術』㊲ ―「清掃にこそおもてなしを」

Posted on 2019-06-17

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㊲です。

「清掃にこそおもてなしを」

 宿のクチコミで一番厳しく評価されるのは、「清掃面」です。
 
 料理や接客の内容に関しては、お客様は「費用対効果」の視点で判断されます。
 
 そもそも個人の好みの差があるため、同じものを提供しても意見が分かれるのが普通です。
 
 しかし、清掃においては、宿泊料金が安かろうができていて当たり前ですので、「値段が安いからしょうがない」という心理にはなりません。
 
 また、個人の嗜好に影響されることはないので、清掃が行き届いた客室はAさんにも、Bさんにも評価は高くなるはずです。
 
 その意味では、「清掃面」が宿の評価を左右する、と言っても過言ではありません。
 
 私は現在、「旅館の客室清掃マニュアル」の作成支援もしています。もともとは、接客マニュアルの作成をしていた旅館から、「清掃のマニュアルも作ってほしい」と依頼があり、携わることになりました。
 
 私自身は、清掃についての特別な知識やスキルがあるわけではありませんので、あくまでお客様(=おもてなし)視点で、効率の良い業務の流れを構築するという観点から、マニュアル作成に関わっています。
 
 旅館の客室清掃は、新たなお客様を迎えるために使われた部屋を綺麗に掃除し、整理整頓することが目的ですが、ただ掃除と備品をセットさえすれば良いというわけではありません。限られた時間と人数で全部屋を仕上げることが命題です。
 
 ある程度、見た目や効率を重視せざるを得ないことは、どちらの宿にも当てはまることだと思います。
 
 通常、清掃時間は1部屋平均20―40分程で仕上げる旅館が多いと思います。本当は、すべての場所を清掃したいのですが、①毎日絶対にする②週に1度はする③月に1度はする――。という頻度を分けて行う必要があるので、その分類をしてから、業務の効率を考えて取り組む順序を決めていきます。
 
 整理整頓という視点では、物を置く場所やそろえる位置、並べる順序を「どうしたらお客様にとって心地良いか」、「どうしたら宿側の意図が伝わるか」などの視点で考え決定していきます。
 
 また、あくまで一例ですが、TVを付けた時のチャンネルは「NHK」に設定し、音量は「20」に調整する。調光できる照明の場合は、「全照」に設定しておくなど、「どうしたらお客様に不快に思われないか」などの視点で考え、基本設定を決めていきます。
 
 私の経験上「ただなんとなく」で決めてしまうと、そのルールは絶対に定着しません。
 
 きちんと「お客様にとって一番都合が良いから」との理由付けをしたルールは定着するものです。
 
 清掃マニュアル作りを通じて、接客係だけでなく、清掃員の方にも、おもてなしの心が必要だと改めて実感させられます。



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