連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㉚―接客外スタッフも“おもてなし”の心を

Posted on 2018-04-13

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉚です。
「接客外スタッフも“おもてなし”の心を」

 当日の人数変更や追加料理、お客様からのリクエスト、誕生日の演出などに旅館の料理長が良い顔をしない、という話はよく聞きます。

 予約やフロント、仲居スタッフが「お客様から受けた注文や要望を調理場に通しづらい」とか、「注文を通しても返事をしてもらえない」などという話を耳にすることがあります。昔ながらの旅館を中心に、まだまだ調理場が実権を握っていて、従業員ひいては経営者までもが調理場の顔色を伺いながら仕事をしていることも少なくありません。このような状態だと、接客スタッフは積極的に追加料理を売りづらくなって、売上増につながらないだけでなく、お客様に提供する料理にもマイナスの影響が出ると思います。
 
 現に、接客中のお客様との会話の中で、今日が誕生日という情報をキャッチした仲居さんが、調理場にバースデーデザートの提供がしたいと相談すると、渋々了承してくれたものの、出てきたものは冷凍のカットケーキをただ並べただけというお粗末さだったそうです。仲居さんは、お客様に提供するのもためらわれた、ということでした。
 
 他方では、視察などで旅館に泊まると、客室のテレビを付けた際にボリュームが大音量だったり、ドライヤーのコンセントを差し込んだ瞬間に強風が出て驚くことがあります。前の人が使った状態のままだと分かりガッカリするのです。
 
 非常に細かいことなので、その配慮に気づかないお客様もいますし、気がついても何とも思わないお客様も多くいらっしゃると思います。ただ、こういった場面に出くわすと、清掃スタッフにもおもてなしについて考えたり、理解を深めてもらいたいとつくづく願うばかりです。
 
 調理場スタッフにしろ、清掃スタッフにしろ、従業員の心がけとしては「このひと手間でお客様の滞在の価値を高めることができるのだ」という意識を持って仕事にあたってもらいたいものです。その意識を持っているのとそうでないのとでは、仕事の仕方が変わってくると思います。私は日ごろ、旅館の接客・おもてなしの研修講師として仕事をいただくことが多々ありますが、研修の席に調理場スタッフや清掃スタッフがいらっしゃるのは過去数えるほどです。
 
 こちらから無理やり「調理場や清掃スタッフも参加させてください」と依頼することはしませんが、参加メンバーについてご相談いただくときには「可能な限り全部署のスタッフに参加していただくことをお勧めします」とお答えしていますし、視察に一緒に連れて行くのもお勧めしています。
 
 真の意味でおもてなしを提供するには、直接お客様と接するスタッフだけではなくて、調理場、清掃、営繕やその他のスタッフにも共通認識として持っておく必要があると考えています。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㉙―「外国人へのおもてなし」

Posted on 2018-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉙です。
「外国人へのおもてなし」

外国人観光客が多い観光地や宿にとっては、外国人観光客のマナーの悪さが問題になっているかもしれません。一方で、外国人観光客や日本在住の外国人にとっても、日本人のマナー違反に苦しむことは少なからずあるようです。

 今でこそ、マスク着用が普及して、風邪や体調の悪い人、花粉症の人がマスクをしていることも多いですが、何気なく出る咳やくしゃみの時に、口や鼻を手で覆わずにしてしまうというのが日本人だそうです。
 
 外国人は小さいころから咳やくしゃみをする時には、手やハンカチで口を覆うように育てられるそうで、この日本人の行為を非常に不快に思うそうです。
 
 また、鼻をかまずに、鼻水をすすって対処することも、日本人には多いようです。
 
 1度や2度で済めば問題ないのですが、何十回と繰り返し鼻をすすることがほとんどだそうで、その無限に続く鼻すすりの音が外国人にとっては煩わしく、とてつもなく不愉快に感じるそうです。
 
 また、通路を塞ぐ・譲らないというのも、日本人が集団で行動すると思われていることの一つです。
 
 2人で並んで歩くのはまだしも、3―4人が横一列に並んで道を歩くのが日本人だそうです。
 
 その集団に向かって(対向するかたちで)歩いていても、道を譲ってくれることはほとんどなく、結局建物の敷地に入って彼らに歩道を占拠されたまま、道を譲る羽目になるそうです。
 
 他人に無関心で厳しく無礼というのは、すべてに関わってくるものだと思います。
 
 お客様とスタッフの関係だったり、一度交友関係が生まれたりすれば、日本人は非常に礼儀正しい人種ではありますが、それがまったく関係性の無いあかの他人となると、途端に厳しく無礼になるということです。
 
 他人同士で目を合わせてあいさつをしたり、会話をするのは外国人にとって普通の事であるのに、日本人にはそれが異常な行為と見えたり、他人同士がぶつかると、途端に殺伐とした空気が流れることもあります。
 
 「マナーの違いも含めて、異文化に触れるとはこういうことを言うのだ」という考えもありますし、今回取り上げたことはある種の外国人の意見であって、必ずしも外国人全員がそう思っているかと言えば、そうではありません。
 
 ただ、おもてなしを提供する旅館業・観光業に就いている方にとって必要な視点は、日本のマナーはあくまでもジャパニーズスタンダード(日本の基準)であって、グローバルスタンダード(世界の基準)ではないことを常に認識しておく必要があります。
 
 相手の事を思って為すというのが、おもてなしの意味ですが、日本のマナーを当然と思うのではなく、相手の国々のマナーを意識して対応していく心掛けも持ちたいものです。

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『おもてなし接客術』㉘―「損をさせないおもてなし」

Posted on 2017-12-20

旬刊旅行新聞12月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉘です。
「損をさせないおもてなし」

 先日、接客研修した旅館様で、時間を割いて協議したのが「お客様に損をさせてはいけない」というテーマでした。
 
 例えば、お客様の到着順に優先的に夕食開始時刻を決める宿が多いかと思います。午後6時―午後7時といった人気の時間帯が埋まってしまい、お客様の希望の時間に添えない場合に、スタッフの言い方次第では「選べなくて損した」と思わせることもあります。
 
 一方「自分の希望は通らなかったけど、スタッフの勧める方を選んで得した」と思わせることも可能です。
 
 おもてなしスキルを上げることで、一見損なことでも損と感じさせない体制を整えるよう注力するのが今回の目的でした。
 
 この旅館は夕食時間を2部制にしており、1部は午後5時30分、2部は午後8時という時間設定です。一般的に人気な夕食開始時間は午後6時30分や午後7時ですので、この時間設定では、早すぎる時間か遅すぎる時間かのどちらかで、食事をスタートしてもらわなければなりません。
 
 当然、この2つの時間設定だと、午後5時30分に集中しすぐに枠がいっぱいになります。この状況下で新たな予約が入ると、必然的に午後8時スタートの枠でお客様にご了承いただかなくてはなりません。
 
 スタッフ自身も午後8時には引け目を感じるようで、「大変申し訳ないのですが、午後8時でお願いできませんでしょうか」というスタンスで話をしてしまいます。
 
 そうするとお客様は、“人気の”午後5時30分の予約を取れなかったことで「損をした気分」に陥るうえ、「少しでも早く対応してもらえないか」とスタッフに交渉をし始めることになり、結果、スタッフが困り果てる、という悪循環を生んでしまいます。
 
 この現状を改善しようと、言い回しを改めることにしました。まずは「お客様のご希望には添えない午後8時の食事開始となってしまいますが、実は午後8時の方がお勧めです」と、伝える。
 
 次に「ご到着後は、まずはお風呂に入っていただき、浴衣に着替えてから是非ラウンジをご利用ください。午後8時までは、お食事中のお客様がいらっしゃるので、大浴場もラウンジも空いています。運が良ければ貸切状態でご利用いただけるかもしれません」と、食事時間までの時間の過ごし方を提案しながら、メリットを挙げて午後8時がお勧めである理由を伝える。
 
 このように一見お客様に宿の都合を押し付けてしまう場面でも、「実は得なんです」という“言い回し”を“自信を持って”すれば、お客様はすんなりと受け入れてくださることも少なくないと思います。お客様の御要望に応えられずに一見損をさせてしまうような場面でも、得と感じさせる提案・表現をして顧客満足を維持・向上させてこそおもてなしです。

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『おもてなし接客術』㉗―「残念な接客」

Posted on 2017-10-16

旬刊旅行新聞10月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉗です。
「残念な接客」


 
先日、ひさびさに都内のレストランにフレンチを食べに行きましたが、設備と料理に接客が追い付いていないのではないか、と残念に思う経験をしました。料理長の経歴は華々しく、ミシュランの星が付くレストランです。ある料理評論家が料理も接客もべた褒めしていたので、とても楽しみでした。
 
 ホールスタッフは皆流れるような接客をしており、さすがだと感心しました。料理説明も、こちらが質問したくなるような食材や調理法は予め説明するなど、安定した対応を見せてもらいました。料理は器遣いや盛付もさることながら、味もとても美味しく満足の行くものでした。
 
 それにも関わらず何が残念だったかと言うと、おもてなしが欠けているということでした。
 
 会計の際に「お食事はいかがでしたか」と声を掛けられたので「美味しかったです」と言うと、「ありがとうございます」と返されたものの、その後の会話が続きません。
 
 たまらず「こちらのお店は何年位になるのですか」と質問してみると、少し考えて「7年目になります」と返ってきましたが、やはりその後が続かず、まったく盛り上がらない(つまらない)会話となってしまいました。
 
 初めから、こちらに興味が無く、楽しませようという意識が無いことが見え透いてしまいます。例えば「何か印象的なものはございましたか」と一言返せれば、少なくとも会話を続けることはできます。
 
 あるいは「こちらの開業は7年になりますが、それまで当店のシェフは〇〇で料理長を務めておりました」と、1つでもエピソードを話すだけで、お客様に質問した価値を感じさせることができ、満足度が高まるはずです。
 
 帰り際に「ただ今、シェフがごあいさつにまいります」との案内があり、コック服を来たシェフが現れました。
 
 「ありがとうございます」との声に、「美味しくいただきました」と御礼を言うと、シェフは再度「ありがとうございます」と返すだけ。この対応にもがっかりでした。これだけなら別に出てこなくても良いのでは、というのが率直な感想です。
 
 料理長にお目にかかれること自体は、光栄なことだと思うのですが、形式的にでも「どちらからお出でですか」など、お客様に関心を示す一言が掛けられれば、どれだけ印象が違うだろうと思います。
 
 冒頭でも説明したように、スタッフはみんな、淀みない接客ができており、不満があるかと聞かれればそうではありません。
 
 また、お店の内装はお洒落で綺麗でしたし、趣向を凝らした料理は、見た目にも味にもとても満足でした。
 
 一方で、せっかくこのようにレベルの高いものを提供できているのだから、接客もそれに合わせられたら、さらに良くなるだろうに、とお節介ながらも、残念に思ったできごとでした。

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『おもてなし接客術』㉖―「おもてなしの品質管理」

Posted on 2017-08-23

旬刊旅行新聞8月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉖です。
「おもてなしの品質管理」

おもてなし接客術26

おもてなし接客術26

 普及しているマーケティング用語に「PDCA」がありますが、「接客」もれっきとした商品です。マニュアルの作成や研修といった「P」や「D」も大切ですが、接客・おもてなしレベルを維持するには「C」で品質管理を行うことが重要です。
 
 〝作りっぱなしの商品〟にならないようにしましょう。過去に集中的な研修と接客マニュアル作成を担当した旅館で、再度研修の依頼を受けました。手前味噌で恐縮ですが、研修とマニュアル作成を担当してから、お客様の評価がぐんと良くなった旅館で、集中研修やマニュアル作成から4―5年経過した今でも研修の依頼があります。
 
 さて、今回初めて私の研修を受けるという方は若干1名。それ以外のメンバーは以前にも私の研修を受けたことがあるというベテランメンバーでした。ベテランとはいえ、社員は1人。ほかは全員パートです。
 
 口コミ評価や館内アンケートで、接客の評価は良かったものですから、さほど問題もないだろうと思って臨んだ研修でしたが、いざ始めてみると、なんとなく流れは踏襲できているものの、ところどころ抜け落ちてしまっている動作が見受けられました。また、ちょっとした質問をしてみると、途端にあたふたしたり、一気に崩壊してしまうような惨状でした。表面的には感じの良い接客ができているものの、中身が伴っていないのです。
 
 「このレベルの接客で、良くこんなに高い評価を貰えていますね」と苦言を吐いてしまう結果となってしまいました。
 
 研修を総括すると、行動の意義や目的が抜けている部分が多く、なんとなく小手先の接客技術に意識が向いていることがわかりました。
 
 「目的」と「手段」を混同してしまい、目的が無いまま手段に徹してしまっているような印象を受けました。なぜこのようなことが起こるかというと、スタッフが一つひとつの動作の意味合いをしっかり理解していないのです。
 
 単純に「マニュアルで決まっているから」という覚え方ですと、それ以上になろうとは思わないし、時間の経過とともに少しずつ動作が脱落していってしまうものです。
 
 スタッフの一つひとつの行動や言動で、お客様にどのような印象を与えることができるか、宿側にとってどのような効果やメリットがあるかを理解できていれば、このような事態にはならないはずです。
 
 表面的ではなく、中身を伴った接客・おもてなしを提供できてこそ安定的な評価を頂けるものです。
 
 お客様評価も大切ですが、宿として求めるレベルが十分達成できているかという視点での評価も忘れてはいけません。お客様評価が高いと言っても、是非定期的な点検をするよう心掛けていただきたいと思います。

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