連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㉕―「お客様経験で磨くおもてなし」

Posted on 2017-06-13

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉕です。
「お客様経験で磨くおもてなし」

おもてなし接客術25

現在、旅館の料理提供のマニュアル作成の支援をしています。マニュアル作成にあたっては、準備物や動作確認が必要になるため、現場リーダーに、現状の接客の流れを確認すると、明らかにおかしい料理提供のルールが常態化していることがわかりました。

お客様が席に着いてドリンクオーダーを受けた直後に、御飯とデザート以外のすべての料理が一斉に並んでいたり、お客様が席に着いたタイミングで鉄板料理と鍋料理に着火をしているのです。数々の料理が一度に目の前に並べられると、1品1品としての料理の価値も下げてしまいますし、目の前の料理を食べることに一生懸命になってしまい、あまりお酒も進まないはずです。

そのリーダーは食事処でお客様として食事をした経験はないとのことでした。実際に一緒に食事をしたところ、「お客様は、こんな量のお料理をよくお召し上がりになりますね」とか、「先に料理が全て揃ってしまうと、後から来る楽しみがなくなってしまいますね」、「最初に、鉄板と鍋物の火は付けない方が良いですよね」など意見が出てきました。

さらに、「このタイミングでおしぼりが欲しいですね」、「やはり箸置きはあった方が良いですね」、「御飯は御櫃の方がありがたいですね」などの発見や意見が出てきて、現状の料理提供の仕方に問題意識を持っていただけました。

また、食事処の席の配置もおかしいことに気が付きました。この宿は観光のお客様も、ビジネスのお客様も宿泊していることから、食事処の椅子とテーブルの種類と配置は観光とビジネスとで明確に分けています。

ただ、食事開始時刻もまちまちで、品数も少なく比較的パッと召しあがるビジネスのお客様の方が食事会場の奥の方の席、一方で食事時間も決まり、品数も多く、ゆっくり召し上がる観光のお客様が会場手前に配置されていました。そこで、「手前側を観光のお客様にしてしまうと、ビジネスのお客様の出入りがあって落ち着かない上、会場奥の調理場近くに待機しているスタッフの目も届きにくいのでは」という問題提起をして、「ビジネスと観光の位置を変更してみては」と提案しました。実際の現場で確認すると、案の定変えた方が良いという結論にいたりました。

旅館の経営者は、スタッフから下の名前で呼ばれたり、敬語抜きで話すスタッフもいる程、従業員との距離が近く、諸々の権限も現場に預けるような方です。それなのに、今まで意見が出てこなかったのは、「社長が恐いからそんなこと思っても口にできない」という訳ではなく、思っていても口にする機会がなかっただけなのです。

日ごろ現場にいるスタッフにお客様経験をさせ、考えたり、感じたことを述べる機会を設けるだけでも現場はかなり改善できるはずです。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』㉔―「生産性向上には教育を」

Posted on 2017-04-16

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉔です。
「生産性向上には教育を」

おもてなし接客術24

2月に開催した旅館業経営者向けセミナーで、事例を中心に旅館の接客マニュアル作成の必要性について話をしたところ、仕事の依頼を多く頂きました。そこで、その内容の一部を紹介いたします。

旅館業界でも「生産性向上」が注目ワードになっていて、業務効率向上のためIT化や作業順序の見直しなどを徹底する動きが出ています。もちろん、その事も大切ではありますが、個人的にはIT化や業務見直しよりも、従業員の教育の方が先決であると考えています。

お客様との接客時間が長い旅館業でもっとも効率が悪いのは①接客の流れが確立していない②お客様からの質問に答えられない③お客様に満足してもらえない――ことだと考えています。接客の流れが確立していないということは、効率の良い動きをしている人もいればそうでない人もいるという状態です。

お客様の質問に答えられないということは、きちんとした知識を身に付けておけば30秒で回答できるものが、10分以上も時間がかかってしまうケースがあるということです。そして、お客様に満足してもらえないということは、リピーターにも繋げられていないということです。

接客の流れを確立し、質問にも即答できるスムーズな接客を提供できれば、接客においては、きっとお客様に満足してもらえるでしょう。

接客したお客様をリピーターや紹介客獲得に繋げられるのは、非常に生産性の高い行為だと言えますが、その反対は生産性の低い行為だということになります。従業員に効率の悪い3要素が揃ってしまうと、いくらIT化や業務効率化を推進したところで、生産性の向上は難しいものと考えています。

そこで提案したいのが、接客のマニュアルを作成するということです。一度きちんとした接客マニュアルを構築して、この3要素を網羅した上で、IT化などを推進すれば、明らかな生産性向上が実現できるでしょう。

旅館で「研修直後は皆頑張って教えられた通りのことをするんだけど、なかなか継続しなくて」という話は、研修を担当させていただく旅館で良くお寄せいただくご相談です。

実はその悩みを解決するのもこの接客マニュアルです。セミナーでご登壇いただいた南平台温泉ホテルでは、新入社員には、先輩に師事させるよりも何よりも先に、マニュアルを見せるようにしています。

そうすると、「新人さんはマニュアルを見てから現場に入るので、先輩である、私がマニュアルと違うことをしていると示しが付かない…。マニュアルに忠実に従わないといけない」という意識付けにもなっているようです。

生産性向上を実現するためにも、マニュアル作成をしてみてはいかがでしょうか。

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『おもてなし接客術』㉓―「到着前からのおもてなし」

Posted on 2017-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉓です。
「到着前からのおもてなし」

おもてなし接客術23

「今度、地元のタクシー会社を3社呼んで研修をします」という話を、支援させていただいている先から聞きました。理由を聞くと、地元タクシー会社の対応が悪すぎて、タクシーを利用するお客様の到着時のご機嫌が悪いことが多々あるからとのことです。恐らく荷物の扱い方や言葉遣いも酷いのでしょう。予約を詰めすぎて、お客様のお迎え時間にも間に合わないことも時々あるようです。

この施設は所在する県も異なる2館の宿を経営しているのですが、もう一方の旅館近くにあるタクシー会社では、このような事態にはならないようですので、タクシー会社全般ということではなく地域性も大きく影響していると思います。

私も過去に何度か、旅館組合からの依頼でタクシー会社向けの研修を担当したことがあります。

そのことから、観光地のタクシー運転手の接客対応を改善する必要性は常日頃感じることです。

タクシーを利用する宿泊客が多く、単価が高めで且つおもてなしに力を入れている宿ほど、タクシー会社を選定されています。

私の研修でもよく話をしますが、宿に到着時のお客様の精神状態は、その後の宿の評価に大きくかかわってきます。全く関係の無いことであっても、到着時の機嫌が悪ければ宿についても否定的な視点が働きやすくなり、粗探しをし始めます。到着時のお客様の感情をコントロールすることは、宿にとっても非常に大事なことなのです。

タクシーの話からは少し反れますが、先日視察した旅館では、最寄り駅からの送迎バスの中で、良い香りのする温かいおしぼりを提供し、車内ではヒーリングミュージック(癒しの曲)が流れていました。その他の対応を見ても、顧客の心理状態をよくコントロールされていると感じるとともに、じゃらん.netの口コミ評価4.9というのも頷けました。

タクシー会社に限らず、バス会社、鉄道の駅員など、宿泊前後の接点となる事業者のスタッフの対応に、日ごろ不満を感じている場合には、宿主導で接客研修会を開いてみてはいかがでしょう。多くの事業会社の経営者も、宿側からの提案を有難く思うはずです。宿側にとっても、宿泊前後のお客様の印象を良くすることは、メリットも大きいと思います。

タクシー会社を呼んで研修をする宿でも「(このことで)競合の旅館に泊まるお客様の評価も上げてしまうが、背に腹は代えられません」と話をしていましたが、逆に研修の成果が出て他の宿に泊まるお客様がそのタクシーに乗車した際、お客様に接客を褒められるかもしれません。

そのときの会話で「実は〇〇(宿名)に研修をしていただいたのです」という話になれば、良い営業にもなるはずです。

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『おもてなし接客術』㉒―「すべきことをしないのもおもてなし」

Posted on 2016-12-20

旬刊旅行新聞12月11・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉒です。
「すべきことをしないのもおもてなし」

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先日、ある旅館から「お客様のお見送りはしたいのですが、ご出発時にカーナビの設定をするお客様が多く、その設定を待っていると、逆に急かしてしまっているようで申し訳なく思ってしまいます。スマートなお見送りの仕方はないでしょうか」というご相談を頂きました。

私も旅館に泊まって出発する際、こういう場面に出くわすことが多くあります。見送りで女将や仲居さんを待たせてしまうのは申し訳ないので、前の日のチェックインの際に、翌日の目的地をカーナビで設定するようにしています。
もし前日に設定ができなかった場合は、「ナビを設定しますので、もう結構ですよ」と見送りを遠慮するのですが、「どうぞごゆっくり設定なさってください」と、結局待たれてしまいます。そんなときは、取り敢えず出発して、後で一旦車を止めて、ナビを設定しますので、ご相談される旅館側の心情もよく理解できます。

お見送りする側(旅館サイド)としては、純粋にお見送りがしたいと思っているはずで、その際に、例えお客様がカーナビの設定を始めても、まさか「早く行け」とは思っていないはずです。

一方で、見送られる側(お客様サイド)は、車の外で出発を待っているスタッフの姿を見ると、「仲居さんを待たせて出発にもたつくのは不格好だし、取り敢えず早く出発しないと」と、急かされるような気持ちになるわけです。

このように、見送られる側の配慮や心情を考慮すると、お客様のことを「思って、為す」ことを「おもてなし」と考えた時に、最後までお見送りをすることが必ずしも最善であるとは限りません。

実はこういった事情に対して、具体的な策を講じているお宿があります。そこではWebサイトやチェックインの際、お客様にお渡しするツールの中に、「私たちがお見送りをしようといつまでも側に立ってしまうと、お客様が気忙しく感じられるでしょうから、ご出発になるまでのお見送りを社員に推奨しておりません」と明記されています。それが、季粋の宿 紋屋の「お見送り」項目http://www.monya.co.jp/story5.htmlです。

他の旅館と比較すると、ややあっさりしているなという印象はありますが、宿側のコメントにある通り、落ち着いてカーナビやシートを設定することができて、むしろ「快適で気が利くな」と感じました。

今回、見送り時の悩みをご相談いただいたお宿には、お会計の際にフロントカウンターにこのような記載をすることを提案させていただきました。

「マニュアルにあることはリアルの接客の1割でしかない。あとの9割はスタッフ自身で考えて作っていかなければならない」。これはある旅館の女将さんの言葉ですが、『おもてなし接客』とはこのことなのです。

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『おもてなし接客術』㉑―「カスタマージャーニーマップ」

Posted on 2016-10-11

旬刊旅行新聞10月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉑です。
「カスタマージャーニーマップ」

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「お客さまの視点で考えよう」と言うのは簡単ですが、実際にお客様体験をしないと、なかなか分からいものです。たとえば、お客さま視点で物を考えようとするときに、スタッフである自分が接客している姿が見えなければ、本当にお客さま目線に立ったとは言えないわけです。

そこでお勧めしたいのが、カスタマージャーニーという考え方です。これは、お客さまの経験をストーリーで捉えるということです。お客さまが商品・サービスを購入・利用する際に、企業との間で発生するやりとりや、お客様が抱く疑問・期待等の感情、行動をプロセス化し、一連の流れとしてとらえることを指します。企業視点では見えにくいプロセスを、可視化してとらえることができ、課題の発見や部門間連携への意識を高め、結果として顧客満足へ繋がるという考え方です。

たとえば、宿側から見た「チェックイン~客室案内」のジャーニーマップは次の通りです。

1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)。
3.夕食時間のヒアリング。
4.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
5.挨拶「それではお部屋へご案内します」。このような感じです。

続いて宿泊客から見たジャーニーマップです。分かりやすいように、宿側と重複する部分には〇を付します。

〇1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.荷物を置ける場所の確認(荷物を持ったままだと書きづらい)。
3.疑問(予約の時に名前も住所も知らせたけど、なんでまた記入しないといけないのだろう)。
〇4.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)
5.疑問(大浴場にはどんなアメニティが置いてあるのだろう。タオルは持っていく必要があるのか。売店には試食が置いてあるのか)。
〇6.夕食時間のヒアリング。
7.疑問(すぐにビールが飲みたいけど、今注文できるのか)。
〇8.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
〇9.挨拶「それではお部屋へご案内します」。
10.質問・疑問(他にも確認したいことがあったけど、忘れちゃった。)。
11.お手洗いへ行く。

2つのジャーニーマップを比較してみると、旅館側のジャーニーマップは一方的で、お客様の心理状況を全く汲み取れていないように見えます。

随時お客さまが抱く疑問に対して、先回りをしてご案内をして差し上げると「痒いところまで手が届くサービス」となり、多くのお客さまの満足度が高まるのは言うまでもありません。

メインターゲットを定めて、カスタマージャーニーを描いてみてはいかがでしょうか。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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