連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』㉓―「到着前からのおもてなし」

Posted on 2017-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉓です。
「到着前からのおもてなし」

おもてなし接客術23

「今度、地元のタクシー会社を3社呼んで研修をします」という話を、支援させていただいている先から聞きました。理由を聞くと、地元タクシー会社の対応が悪すぎて、タクシーを利用するお客様の到着時のご機嫌が悪いことが多々あるからとのことです。恐らく荷物の扱い方や言葉遣いも酷いのでしょう。予約を詰めすぎて、お客様のお迎え時間にも間に合わないことも時々あるようです。

この施設は所在する県も異なる2館の宿を経営しているのですが、もう一方の旅館近くにあるタクシー会社では、このような事態にはならないようですので、タクシー会社全般ということではなく地域性も大きく影響していると思います。

私も過去に何度か、旅館組合からの依頼でタクシー会社向けの研修を担当したことがあります。

そのことから、観光地のタクシー運転手の接客対応を改善する必要性は常日頃感じることです。

タクシーを利用する宿泊客が多く、単価が高めで且つおもてなしに力を入れている宿ほど、タクシー会社を選定されています。

私の研修でもよく話をしますが、宿に到着時のお客様の精神状態は、その後の宿の評価に大きくかかわってきます。全く関係の無いことであっても、到着時の機嫌が悪ければ宿についても否定的な視点が働きやすくなり、粗探しをし始めます。到着時のお客様の感情をコントロールすることは、宿にとっても非常に大事なことなのです。

タクシーの話からは少し反れますが、先日視察した旅館では、最寄り駅からの送迎バスの中で、良い香りのする温かいおしぼりを提供し、車内ではヒーリングミュージック(癒しの曲)が流れていました。その他の対応を見ても、顧客の心理状態をよくコントロールされていると感じるとともに、じゃらん.netの口コミ評価4.9というのも頷けました。

タクシー会社に限らず、バス会社、鉄道の駅員など、宿泊前後の接点となる事業者のスタッフの対応に、日ごろ不満を感じている場合には、宿主導で接客研修会を開いてみてはいかがでしょう。多くの事業会社の経営者も、宿側からの提案を有難く思うはずです。宿側にとっても、宿泊前後のお客様の印象を良くすることは、メリットも大きいと思います。

タクシー会社を呼んで研修をする宿でも「(このことで)競合の旅館に泊まるお客様の評価も上げてしまうが、背に腹は代えられません」と話をしていましたが、逆に研修の成果が出て他の宿に泊まるお客様がそのタクシーに乗車した際、お客様に接客を褒められるかもしれません。

そのときの会話で「実は〇〇(宿名)に研修をしていただいたのです」という話になれば、良い営業にもなるはずです。

******************************************************************************
株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。
*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。
*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』㉒―「すべきことをしないのもおもてなし」

Posted on 2016-12-20

旬刊旅行新聞12月11・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉒です。
「すべきことをしないのもおもてなし」

%e3%81%8a%e3%82%82%e3%81%a6%e3%81%aa%e3%81%97%e6%8e%a5%e5%ae%a2%e8%a1%9322

先日、ある旅館から「お客様のお見送りはしたいのですが、ご出発時にカーナビの設定をするお客様が多く、その設定を待っていると、逆に急かしてしまっているようで申し訳なく思ってしまいます。スマートなお見送りの仕方はないでしょうか」というご相談を頂きました。

私も旅館に泊まって出発する際、こういう場面に出くわすことが多くあります。見送りで女将や仲居さんを待たせてしまうのは申し訳ないので、前の日のチェックインの際に、翌日の目的地をカーナビで設定するようにしています。
もし前日に設定ができなかった場合は、「ナビを設定しますので、もう結構ですよ」と見送りを遠慮するのですが、「どうぞごゆっくり設定なさってください」と、結局待たれてしまいます。そんなときは、取り敢えず出発して、後で一旦車を止めて、ナビを設定しますので、ご相談される旅館側の心情もよく理解できます。

お見送りする側(旅館サイド)としては、純粋にお見送りがしたいと思っているはずで、その際に、例えお客様がカーナビの設定を始めても、まさか「早く行け」とは思っていないはずです。

一方で、見送られる側(お客様サイド)は、車の外で出発を待っているスタッフの姿を見ると、「仲居さんを待たせて出発にもたつくのは不格好だし、取り敢えず早く出発しないと」と、急かされるような気持ちになるわけです。

このように、見送られる側の配慮や心情を考慮すると、お客様のことを「思って、為す」ことを「おもてなし」と考えた時に、最後までお見送りをすることが必ずしも最善であるとは限りません。

実はこういった事情に対して、具体的な策を講じているお宿があります。そこではWebサイトやチェックインの際、お客様にお渡しするツールの中に、「私たちがお見送りをしようといつまでも側に立ってしまうと、お客様が気忙しく感じられるでしょうから、ご出発になるまでのお見送りを社員に推奨しておりません」と明記されています。それが、季粋の宿 紋屋の「お見送り」項目http://www.monya.co.jp/story5.htmlです。

他の旅館と比較すると、ややあっさりしているなという印象はありますが、宿側のコメントにある通り、落ち着いてカーナビやシートを設定することができて、むしろ「快適で気が利くな」と感じました。

今回、見送り時の悩みをご相談いただいたお宿には、お会計の際にフロントカウンターにこのような記載をすることを提案させていただきました。

「マニュアルにあることはリアルの接客の1割でしかない。あとの9割はスタッフ自身で考えて作っていかなければならない」。これはある旅館の女将さんの言葉ですが、『おもてなし接客』とはこのことなのです。

******************************************************************************
株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。
*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。
*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』㉑―「カスタマージャーニーマップ」

Posted on 2016-10-11

旬刊旅行新聞10月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』㉑です。
「カスタマージャーニーマップ」

%e3%81%8a%e3%82%82%e3%81%a6%e3%81%aa%e3%81%97%e6%8e%a5%e5%ae%a2%e8%a1%9321

「お客さまの視点で考えよう」と言うのは簡単ですが、実際にお客様体験をしないと、なかなか分からいものです。たとえば、お客さま視点で物を考えようとするときに、スタッフである自分が接客している姿が見えなければ、本当にお客さま目線に立ったとは言えないわけです。

そこでお勧めしたいのが、カスタマージャーニーという考え方です。これは、お客さまの経験をストーリーで捉えるということです。お客さまが商品・サービスを購入・利用する際に、企業との間で発生するやりとりや、お客様が抱く疑問・期待等の感情、行動をプロセス化し、一連の流れとしてとらえることを指します。企業視点では見えにくいプロセスを、可視化してとらえることができ、課題の発見や部門間連携への意識を高め、結果として顧客満足へ繋がるという考え方です。

たとえば、宿側から見た「チェックイン~客室案内」のジャーニーマップは次の通りです。

1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)。
3.夕食時間のヒアリング。
4.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
5.挨拶「それではお部屋へご案内します」。このような感じです。

続いて宿泊客から見たジャーニーマップです。分かりやすいように、宿側と重複する部分には〇を付します。

〇1.挨拶+宿帳の記入「いらっしゃいませ。こちらへのご記入をお願いいたします」。
2.荷物を置ける場所の確認(荷物を持ったままだと書きづらい)。
3.疑問(予約の時に名前も住所も知らせたけど、なんでまた記入しないといけないのだろう)。
〇4.館内の説明(大浴場の場所・入浴可能時間、売店の営業時間)
5.疑問(大浴場にはどんなアメニティが置いてあるのだろう。タオルは持っていく必要があるのか。売店には試食が置いてあるのか)。
〇6.夕食時間のヒアリング。
7.疑問(すぐにビールが飲みたいけど、今注文できるのか)。
〇8.アレルギー等食べられないものがないかについての確認。
〇9.挨拶「それではお部屋へご案内します」。
10.質問・疑問(他にも確認したいことがあったけど、忘れちゃった。)。
11.お手洗いへ行く。

2つのジャーニーマップを比較してみると、旅館側のジャーニーマップは一方的で、お客様の心理状況を全く汲み取れていないように見えます。

随時お客さまが抱く疑問に対して、先回りをしてご案内をして差し上げると「痒いところまで手が届くサービス」となり、多くのお客さまの満足度が高まるのは言うまでもありません。

メインターゲットを定めて、カスタマージャーニーを描いてみてはいかがでしょうか。

******************************************************************************
株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。
*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。
*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』⑳―「クレームを未然に防ぐ」

Posted on 2016-08-21

旬刊旅行新聞8月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑳です。
「クレームを未然に防ぐ」

おもてなし接客術⑳

お客様のことを“思って”“為す”おもてなし接客には、お客様を喜ばせるだけではなく、時にはお客様の感情のコントロールが必要となる場合もあります。旅館が良かれと思ってしていることが、お客様に伝わらないと思ったことはありませんか。

例えば、女将の挨拶。
「女将の挨拶があってこそ旅館の醍醐味」と考えるお客様もいれば、宿泊先ではプライベートな時間を大切にしたい」もしくは「寛ぐのが目的」などの理由で、「女将の挨拶は不要」と考える方もいます。 両方の意見を持ったお客様が同じ旅館に泊まるので、女将が挨拶をしてもクレームになるし、挨拶をしなくてもクレームになるわけです。

チェックイン時間前の宿の状態については、電気を消して真っ暗にしていると「営業時間前なのだから暗くて当然。省エネ(環境)に配慮できている旅館」と評価される一方で、「お客様が到着するかもしれないのにもかかわらず、真っ暗にしているなんて信じられない」と酷評するお客様もいます。

この、2つの考え方を持ったお客様が1つの旅館に泊まられるので、何をしてもクレームになるということです。接客においてはこの点を肝に銘じておかなければなりません。

お客様の中には「旅館はこうあるべきだ」という強い固定観念を持って、たまたま宿泊した旅館に押し付ける方もいますが、“あまり”それに振り回されず、お客様の意向に迎合せずに、宿の考えを主張することは宿の独自性を出すという意味でも、大事なことだと私は考えています。

クレームを頂くことに対して、開き直っても良いというつもりは毛頭ありませんが、常識的な範囲内での宿のスタンスから生じる、ある程度のクレームはしょうがないということです。

それでは、このように両極端の評価を下すお客様たちに、どのような対策が取れるでしょうか。これには接客中に宿のスタンスをきちんと説明して、“クレームを軽減する”ことをお勧めしています。

ポイントは理由を説明して前置きをしておく。ある意味では【言い訳】をしておくということです。

例えば、女将が挨拶に伺うことを基本としている旅館では、「女将がお客様一人ひとりとご挨拶がしたいと申しておりまして、お食事の際に少しお邪魔してもよろしいでしょうか」と事前にお伺いする。

反対に、女将が挨拶に伺わないことを基本としている旅館では「ご滞在中はお客様に寛いでいただくことを大事に考えておりますので、女将の挨拶は控えさせていただきます」と、ご理解をいただく。

このように理由と前置きがあれば、多くのお客様は納得してくれなくても理解はしてくれるかもしれません。

お客様の一部に、クレームになりそうと考えられる側面があれば、このように予めお客様の感情のコントロールをしておくことも大事です。

******************************************************************************
株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。
*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。
*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』⑲―「おもてなしと+αの情報」

Posted on 2016-06-11

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑲です。
「おもてなしと+αの情報」

おもてなし接客術⑲.jp

「アンサー&プラス、プラス、プラス、プラス」。これはネイティブの知人がよく言うキーワードです。会話を続けるための練習では、YES or NOで回答できることに対して、YES/NOで終わりにするのではなく、理由づけをしたり、例えを挙げたり、自分の意見を述べたりしようとアドバイスをもらうことがあります。

実は、このことがおもてなしにも当てはまります。お客様からの質問に対し、ただ回答するのではなく、+アルファの情報提供ができてこそ、お客様のことを「思って」+「為す」おもてなしと言うことができます。

例えば、「この温泉街には旅館が何軒ありますか」という質問に対しては、「○○軒の旅館があります」とだけ答えるのは当たり前のレベルです。

そこに「土産物屋は○○軒、飲食店は○○軒ほどございます」など補足情報を伝えられれば、お客様はより温泉街の詳しいようすが掴め、「明日の昼食におすすめの飲食店はありますか」など、会話の幅を広げることができます。

また「“そばがき”って何ですか」という質問には、「そば粉を水で練ったものです」+「練る作業は結構な力仕事です。食感はフワフワして、よく『山芋を使っているのですか』と聞かれますが、そば粉と水以外は一切使っておりません」などの話ができれば、お客様も得した気分になるはずです。

ポイントはお客様に「質問して良かった」「得した」と思っていただく(思わせる)対応をすることです。+アルファの情報も、個々のお客様にとって有益でないものや、有益なものもあり“くどい”説明をするとクレームの対象となってしまいます。

お客様の要求度合を探りながら情報提供する、といった高い接客技術が要求されるので、私の研修では、基本的な対応が十分できている旅館にこのレベルの対応を求めるようにしています。

今よりもワンランク上を目指したいという旅館は、質問に対して+アルファの情報提供をするといった取り組みをしてみてはいかがでしょうか?

先日の研修では、入社1カ月足らずにもかかわらず、+アルファの情報提供がしっかりできている超優秀な仲居さんがいました。実は先述の括弧書きのやりとりは、彼女の事例を紹介したものです。

旅館で働いた経験も無い彼女が、なぜこのようなことができるかというと、日ごろの努力の賜物でした。

わからないことを自ら質問するのはもちろんですが、そばがきについて臨場感たっぷりの説明ができたのは、調理場に実際に入って料理人さんが作っているようすを見て勉強しているためでした。

彼女の仕事に対する姿勢に感心するとともに、スタッフの成長には旅館の風通しの良い職場環境が欠かせないと実感させられます。

******************************************************************************
株式会社観光文化研究所 井川今日子

*観光文化研究所公式HPはこちら。
*ブログでは書けないDEEPな内容!?メルマガ登録はこちらから。
*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

2018年12月
« 10月    
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

アーカイブ

サイト内検索