連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』⑬―おもてなしは宿の外でも

Posted on 2015-06-11

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑬です。
「おもてなしは宿の外でも」

おもてなし接客術⑬

宿で働く皆様は、滞在中のお客様にいかに喜んで、満足していただけるかを常に考えていると思いますが、宿の中のことばかりに囚われすぎてはいませんか。お客様の宿の評価を良くする要素は宿の外にも転がっています。

お客様が宿の評価をするときは、滞在前後の経験も含めて総合的に判断するものです。宿の設備やスタッフ、清掃面など、宿内部のことをチェックするのはもちろんですが、宿に余程の魅力がある場合を除いては、お客様は周辺環境を含めてリピーターになるかどうかを決めます。いくら宿が良くても、滞在前後に良い思い出を作れなければ「宿は良かったけど、周りが退屈だから2度目は無いよね」という判断を下し、良い思い出を作れれば「宿も良かったし、周りにも面白いスポットが沢山あるからまた来よう! 誰かに紹介しよう!」と考えてくれるものです。

以前訪れたことのある宿のロビーには、十数種類の切り口で宿周辺の店や観光スポットを紹介する用紙がパンフレットラックに用意されていました。具体的には、「キッズ向け観光情報――冬ver.」「お勧めの夜の過ごし方」「カフェ巡り」「ランチ」「居酒屋」「雨の日の過ごし方」「デート」「ゆっくりのんびりおススメの過ごし方」「お店巡りのお手伝いマップ」「お散歩MAP」など。もちろんすべて宿の手作りで、形状はA4用紙に白黒印刷されたシンプルなものです。

こう書くと、周辺の施設が充実している宿のように思えるかもしれませんが、決してそうではありません。むしろ宿の周りに何も無いといった表現の方が適当だと思います。そのようななかで、これだけ多くの過ごし方を提案する姿勢からは、お客様に旅行の良い思い出を作っていただきたいという宿の気持ちが伝わってくるものです。また、各用紙には、作成日時が記載されており、すべての用紙がここ3カ月以内に更新されていたことからは、常に最新の情報をお客様に提供しようとする気遣いが感じられました。

多くの宿泊客がそれを手に取って部屋に向かっていましたし、私も手に取ったことで滞在をより充実させることができました。この宿の過ごし方の提案が無ければ、乳牛と間近に触れ合ったり、特別な海の絶景や満天の星空を眺めたりすることもなく旅を終えていたでしょう。恐らく「周りに何も無くて退屈だった」という評価しかできなかったと思います。お客様が退屈しないようさまざまな過ごし方を提案するという、宿のおもてなしがお客様の滞在時評価を好転させることに成功した取り組みです。

お客様へのおもてなし。もちろん宿の中での受け入れ態勢を整えることが第一優先ですが、宿内部のことに終始するのではなく、少し視野を広げてみると新たな取り組みが見つかるかもしれません。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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『おもてなし接客術』⑫―曖昧な質問にも的確に

Posted on 2015-04-11

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑫です。
「曖昧な質問にも的確に」

おもてなし接客術⑫

「お客様からのご質問」=「お客様から与えていただいた接客の機会」です。その折角の機会を一方的で的外れな回答で台無しにしていませんか?

あるお宿様での研修で「おすすめを聞かれた場合の対応の仕方」について指導をさせていただきました。ロールプレイングのなかで、お客様役の私が「お土産を買いたいのですが、何かおすすめはありますか」と質問すると、スタッフ役の支配人は宿のオリジナルコスメ(化粧品や美容液等)や紅茶をすすめてきました。自社製品を販売しようという姿勢は悪いことではないのですが、私の質問の意図としては「地元の銘菓などを紹介してほしかった」ので、的外れな対応として減点としました。

支配人へのフィードバックの際には、お客様からの漠然とした質問にはそのまま漠然と答えようとせずに、お客様の特徴を見たりヒアリングを重ねてお客様の好みを探ったりしたうえで、なるべくお客様のニーズにあった適切なものをおすすめするようアドバイスをしました。「お土産」と一言にいっても「食品」も「伝統工芸品」も当てはまります。食品をイメージしているお客様に伝統工芸品をすすめるのは相応しい対応とはいえません。さらにいえば「食品」のなかにはお菓子も地酒もおかず類も含まれるので、お客様が何をイメージしているのかを限定してからおすすめしないとやはり見当違いな対応となってしまいます。

従って、お客様に先述のような漠然とした質問をされた場合には、①「地元の銘菓などをお探しでしょうか?」②「評判の地酒があるのですが、お酒は飲まれますか?」③「どのようなタイプのお土産をお探しですか?食品ですとか伝統工芸品ですとか……」④「電車でお越しなのであまりお荷物にならないお土産がよろしいですよね?」――などとお客様の特徴やニーズを踏まえておすすめすることこそが“おもてなし”と私は考えています。

ヒアリングの際にも、やはり漠然とした質問とならないよう注意が必要です。例えば③の質問の仕方が「どのようなタイプのお土産をお探しですか?」と、具体例が無いままですと、あまり良い質問の仕方とはいえません。回答しづらくストレスに感じるお客様もいらっしゃるかもしれません。好みや要望にある程度の方向性を持って質問されるお客様がほとんどだとは思いますが、なかには方向性がまったく無く、本当に漠然とした回答を求めているお客様もいらっしゃると思います。そのようなお客様にはお客様の特徴のみを踏まえたうえで、一番のおすすめを紹介すれば良いでしょう。

お客様(のご質問)に興味・関心を持ってさえいれば、自然と皆さんの方からヒアリングが進むはずです。お客様が期待する回答を的確に提供できるスタッフは、お客様評価も高いものです。

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『おもてなし接客術』⑪―期待を超えるおもてなしを

Posted on 2015-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑩です。
「期待を超えるおもてなしを」
 

 
顧客満足には、期待と事実との比較がともなうものです。期待よりも事実が優れば顧客満足に、反対に期待よりも事実が劣ればクレームにつながります。皆さんのところへ来られるお客様は必ず期待を持っています。期待が無いお客様はそもそも皆さんの商品・サービスを利用しようとは思わず、他店を利用するものだからです。 
 
期待を持てない店にお客様は来ないので、販促物のクオリティを上げたり、予約対応のメールや電話のおもてなしを強化したりするなど、お客様の期待値を上げる取り組みは必要です。しかしながら、期待値を無駄に上げてしまっては、返ってお客様をがっかりさせてしまうことがあります。
 
先日、3つ星レストランで食事をする機会がありました。人気店なので事前に電話で予約をしたところ、記念日での食事がどうか聞かれたので、「誕生日祝いを兼ねての食事です」と答えました。すると「花束やケーキのご用意もできますけれどもいかがなさいますか?」と聞かれたため「検討しておきます」と返事をして電話を終えました。食事の2日前になってお店から予約確認の連絡が入り、花束やケーキの手配についても再度確認があったため、「結構です」と手配不要の旨を伝えました。当初の予約時の情報がきちんと引き継がれていることがわかり、安心・信頼のできる対応でした。
 
過去の経験からすると記念日である旨を伝えたからには花束やケーキの手配は頼まずとも、スタッフからお祝いの言葉を掛けられたり、デザートのプレートに「HappyBirthday」の文字を入れていただいたりすることが多かったので、こちらのお店でもきっと何かあるかもしれないと期待しながら食事の時間を迎えました。しかしながら、そのような類のおもてなしは一切なく、後味の悪いものでした。予約時の情報伝達はきちんとされていただけに、非常に残念でした。
 
実はこちらのお店にはコールセンターがあります。恐らく、電話口と店舗で接客するスタッフが完全に分かれていて、店舗側には食事の目的などこちらの情報は、一切伝わっていなかったのだと思います。コールセンターの方は、お客様が記念日かどうかよりも、記念日を祝うためのグッズが必要かどうかの方が重要なのでしょう。
 
記念日か聞かれた以上、お客様は何かしらのサービスがあるかもしれないと期待するのが普通です。聞かれなければ生まれなかった、いわば店側が押し付けた期待にもかかわらず、それに応えることができなかったのです。コストをかけずとも、気遣いでできることもあるはずです。 お客様が皆さんのお店や皆さん自身に対して、あるいは皆さんの行動・言動を受けて何を期待しているのかをしっかりと想定し、それ以上のおもてなしをすることで顧客満足につなげてください。

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『おもてなし接客術』⑩―おもてなしは従業員満足から

Posted on 2014-12-11

旬刊旅行新聞12月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑩です。
「おもてなしは従業員満足から」

 


 
脳科学者の茂木健一郎さんは「何らかの行動によって脳が『喜び』を感じたときにドーパミンは分泌され、人間に『快感・快楽』をもたらす。脳はその快感をもたらした行動をよく覚えていて、また同じようにその快感を再現しようとする。そしてその快感をもたらした行動を繰り返すうちに、上達していく。これが『学習』のメカニズムである」と仰っています。

 
このメカニズムを接客にも当てはめようと思うと、従業員満足が非常に重要であることがわかります。「従業員満足」は経営者の努力次第と思うかもしれませんが、そればかりではありません。スタッフ自ら自分自身を満足させようと行動することが従業員満足だと考えています。

 
先日、クライアント旅館に次のような口コミが投稿されました。「何より従業員の方々がとても親切!子供の浴衣が少し小さめだけどとくに替えなくてもいいかなと思っていたら、従業員の方が『あら?少し小さかったかな?もう少し大きいものもあるので今持ってきてみますね!』と声をかけてくれました。また利用してみたいです」。この時に担当していたスタッフは、自分で考えて行動したことがお客様に評価されたことに対して非常に喜んでおり、その後の成長にも目を見張るものがあります。これこそが従業員満足です。逆説的ですが、お客様に評価されて自分が満足するためにはどのようなことができるかを考えながら接客することが、結果的に顧客満足につながるのです。

 
それでは今よりもお客様に評価されるためにはどうしたら良いでしょうか。それは、接客の質と量を高めることです。接客の質を上げることはこれまでのコラムでも繰り返し伝えているので、今回は量を増やすことに注目したいと思います。

 
旅館では縦割業務が常識ですが、係にとらわれず横断的に仕事をすることで接客の量を増やすことができます。例えば、予約スタッフが客室清掃や客室案内、料理の盛り付けをします。これまでお客様とのやり取りは電話とメールだけだったとすると、接客場面が圧倒的に増えることになります。前回コラムで「電話対応は商品やサービスそのものではなく、『問い合わせ』や『手配』である場合が多く、お客様評価の対象となりにくい」とお伝えした通り、そもそもお客様から評価を得にくいのが予約係です。自分が清掃した客室に案内したときに「綺麗なお部屋!」と感激されたり、自分の盛り付けた料理を提供したときに「素敵な盛り付け」と褒められたりすれば、その予約係は満足し、また喜んでいただける接客をしようと思うはずです。

 
おもてなし強化において、顧客満足への取り組みと併せて、従業員満足も意識してみてはいかがでしょうか。一見遠回りなようですが、意外と近道かもしれません。

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『おもてなし接客術』⑨―電話でのおもてなし

Posted on 2014-10-11

旬刊旅行新聞10月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑨です。
「電話でのおもてなし」



パッケージ旅行や航空券、宿泊等の旅行商品も、インターネット販売が主流になってきていますが、電話での問い合わせや予約比率は依然として高いのではないでしょうか。お客様はネットでははっきり分からず不安な点を、電話確認して安心してから商品を購入したいと思っています。
 
このようなお客様からの問い合わせに対して皆さんはきちんとした回答や説明ができていますでしょうか?
 
私の研修講師としての経験はもちろんのこと、お客としての経験を踏まえてみても、多くのスタッフが自社の商品をよく理解していないまま電話対応をしているようです。
 
これまでに実際に体験した旅館での対応事例を挙げると、ネットで販売されている「スタンダードプラン」と「グレードアッププラン」の違いを質問すると、「料理の品数が違います」との回答で、具体的な食材を聞くと即答できずに保留をされてしまったり。また、旅館までの交通案内の説明を受けた際に、「○○駅からバスにお乗りください」と言うので、○○駅の何口(南口や北口など)に降りたら良いか質問すると、「ええと……」と困り果ててしまわれたことがありました。
 
これではあまりにも自社や商品に対する興味・関心が見えませんし、旅館のスタッフとして責任が無さ過ぎます。何よりこのような情けない対応しかできないスタッフに当たってしまったお客様が可哀想です。
 
前回の本コラム「第一印象とその後の評価」では、第一印象がその後の評価に与える影響は非常に大きいとお伝えしました。電話こそお客様との初めての接点であることが多く、失敗が許されない場面です。また冒頭でもお伝えした通り、お客様は不安を取り除きたいがために電話してきているのであって、そこでの対応さえも不安に感じられれば、他へ逃げてしまうのが常です。かく言う私も過去に泊まろうとしていた宿の電話対応が気に入らず、別の宿を手配した経験があります。
 
このように、電話対応は、改善しないデメリットが大きいにもかかわらず、あまり重視されないという現実があります。現に、弊社への研修依頼のご相談内容を見ても、料理提供や客室案内、チェックイン&アウト対応などの研修と比較して、電話対応の研修案件は少ない傾向です。
理由は明確で、電話は商品やサービスそのものではなく、商品やサービスに関する「問い合わせ」や「手配」である場合が多く、クチコミやアンケートの評価の対象となりにくいためです。
 
お客様に指摘される機会が圧倒的に少ないので、自分たちで問題意識を持って見直さない限り、なかなか改善しようと思われないようです。皆さんや自社のスタッフが正しい知識を持ち、お客様の期待に応えられる電話対応ができているか、いま一度確認してみることをおすすめします

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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