連載コラム~おもてなし接客術~

『おもてなし接客術』⑲―「おもてなしと+αの情報」

Posted on 2016-06-11

旬刊旅行新聞6月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑲です。
「おもてなしと+αの情報」

おもてなし接客術⑲.jp

「アンサー&プラス、プラス、プラス、プラス」。これはネイティブの知人がよく言うキーワードです。会話を続けるための練習では、YES or NOで回答できることに対して、YES/NOで終わりにするのではなく、理由づけをしたり、例えを挙げたり、自分の意見を述べたりしようとアドバイスをもらうことがあります。

実は、このことがおもてなしにも当てはまります。お客様からの質問に対し、ただ回答するのではなく、+アルファの情報提供ができてこそ、お客様のことを「思って」+「為す」おもてなしと言うことができます。

例えば、「この温泉街には旅館が何軒ありますか」という質問に対しては、「○○軒の旅館があります」とだけ答えるのは当たり前のレベルです。

そこに「土産物屋は○○軒、飲食店は○○軒ほどございます」など補足情報を伝えられれば、お客様はより温泉街の詳しいようすが掴め、「明日の昼食におすすめの飲食店はありますか」など、会話の幅を広げることができます。

また「“そばがき”って何ですか」という質問には、「そば粉を水で練ったものです」+「練る作業は結構な力仕事です。食感はフワフワして、よく『山芋を使っているのですか』と聞かれますが、そば粉と水以外は一切使っておりません」などの話ができれば、お客様も得した気分になるはずです。

ポイントはお客様に「質問して良かった」「得した」と思っていただく(思わせる)対応をすることです。+アルファの情報も、個々のお客様にとって有益でないものや、有益なものもあり“くどい”説明をするとクレームの対象となってしまいます。

お客様の要求度合を探りながら情報提供する、といった高い接客技術が要求されるので、私の研修では、基本的な対応が十分できている旅館にこのレベルの対応を求めるようにしています。

今よりもワンランク上を目指したいという旅館は、質問に対して+アルファの情報提供をするといった取り組みをしてみてはいかがでしょうか?

先日の研修では、入社1カ月足らずにもかかわらず、+アルファの情報提供がしっかりできている超優秀な仲居さんがいました。実は先述の括弧書きのやりとりは、彼女の事例を紹介したものです。

旅館で働いた経験も無い彼女が、なぜこのようなことができるかというと、日ごろの努力の賜物でした。

わからないことを自ら質問するのはもちろんですが、そばがきについて臨場感たっぷりの説明ができたのは、調理場に実際に入って料理人さんが作っているようすを見て勉強しているためでした。

彼女の仕事に対する姿勢に感心するとともに、スタッフの成長には旅館の風通しの良い職場環境が欠かせないと実感させられます。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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*おもてなし接客本、出版しました!「ちょっとした心づかいでこんなに変わる! おもてなし接客術」

『おもてなし接客術』⑱―「旅館の新入社員研修」

Posted on 2016-04-11

旬刊旅行新聞4月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑱です。
「旅館の新入社員研修」

おもてなし接客術⑱.jp

4月に新入社員研修を実施する旅館も多いと思います。そこで、旅館経営者・幹部の皆様に、新入社員研修に盛り込んでもらいたい内容について触れてまいります。ポイントは、モチベーションを高めること。研修内容次第では新入社員の定着率にも差が出てくるかもしれません。

まず、代表あいさつは必須です。ほかの研修内容は私で代役できますが、これはできません。代表自らが、新入社員に向かって、歓迎の気持ちや宿に対する思い入れ、今後のビジョンを伝え、目標や方向性を共有します。
新入社員にもわかりやすい言葉や表現を心掛けてください。

新入社員の歓迎会は言葉の通り、新入社員を「歓迎」することで、職場での存在意義をえます。そして、既存スタッフとの親睦を通じて、職場のコミュニケーションを円滑にします。別の狙いは、宴の席での振る舞い方で、個々人の適性を見ます。積極的にあいさつ回りをするかとか、先輩への配慮ができるかなどの行動観察をすれば、その後の配属先の参考になります。“ありのままの姿”が見えるよう、なるべく多く時間を取って、盛大に祝ってください。

また、旅館で働くことを改めて認識してもらうため、旅館業と他の業界・業種との違いや旅館で働くこと、仲居の仕事などについて整理をして話をします。

「遣り甲斐」、「だれにでも務まる仕事ではない」、「豊富な知識と高い接客能力が必要とされている」という点、誇りを持って働くべき仕事だということを強調してください。

現状はさておき、なるべく本来のあるべき姿や、お客様が旅館に求めていることに焦点を当てると良いと思います。

お客様体験も必要です。自分の働く旅館の大浴場に入ったことや料理を食べたこと、客室に泊まったことが無いというスタッフが驚くほど多いです。この状態のまま、お客様に説明・提案することは不可能です。

必ず一度は、お客様として宿に泊まってもらう機会を作ってください。旅館に染まる前の真っ白な状態である新入社員の時期に宿泊体験をさせ、気付いた点、気になる点を指摘してもらうという意味でも大事なことです。

一方で、従業員に入浴を許可している旅館は、脱衣場や大浴場でのマナ―の指導が必須です。いまや「各人の常識に任せる」は通用しなくなってきています。

実例を挙げると、先程まで食事や布団の世話をしてくれていたスタッフと大浴場で顔を合わせても、あいさつのひとつもない。浴場を出るときに風呂桶や椅子の整理をしない、脱衣場のドライヤーを占領しているなど、これらの一つひとつを注意しなければならないようです。お客様は宿泊料を払って入っているお風呂だということを、強く認識させる必要があります。

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『おもてなし接客術』⑰-タクシー運転手のおもてなし

Posted on 2016-02-11

旬刊旅行新聞2月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑰です。
「タクシー運転手のおもてなし」

おもてなし接客術⑰.jp

先日、長野県の松本城周辺でタクシーに乗りました。バスで移動もできましたが、迷った末にタクシーを選ぶことにしました。金額にするとバスが200円、タクシーが2500円と約12倍の開きがありましたが、そのことで料金差に価値を感じさせてくれる、タクシー運転手さんとの嬉しい出会いがありました。

何に価値を感じたかというと、とにかく物知りという点でした。タクシーの運転手さんなので、松本市内の地理はもちろんですが、歴史に対する知識が豊富で面白いのです。おかげで松本に対する興味が深まりました。

車を走らせながら、「この地区は昔○○だったので今の地名に由来しているのです」とか、「昔はここがお城の外堀だったのですが、今はこの一部だけ残っています。外堀復元の工事がはじまるので、また風景がガラリと変わると思います」。

また、「松本城は烏城と呼ばれていますが、地元では烏城と呼ぶ人はいません」、「いまはお城と聞けば松本城のような城を思い浮かべますが、昔は一軒家に塀があればそのお家はお城だったのですよ」などと、地元の人ならではの案内をしてくれました。

こちらの質問にも的確に回答していただき、乗車中に退屈することはありませんでした。今度松本でタクシーに乗る機会があれば、この運転手さんを指名したいと思うほどです。

このタクシー会社は、観光タクシーのサービスも提供されています。私が乗車したタクシーの運転手さんは、知識も豊富で話術も見事でしたので、おそらく観光タクシーも受け持たれているのだと思います。

運転手さんのおかげで、もっと松本を知りたい、観光したいと思うようになりましたので、もう一度足を運びたくなるのは必然です。

観光地のタクシー運転手のあるべき姿を見た気がします。この経験から、同じことを旅館のスタッフにも求めたいと思っています。

“特定の旅館に泊まりたいからその地域を訪れる”お客様はもちろんいらっしゃいますが、それよりも“特定の地域を訪れたいからその地域の旅館に泊まる”というお客様の方が圧倒的に多いと思います。いくら旅館の料理や施設、接客が良くても、そもそも地域の魅力が無ければ、お客様はなかなか再来してくださいません。

その穴埋めができるのは、やはりスタッフの接客力ではないでしょうか。今回の運転手さんのように、地域の魅力を伝えられるよう、歴史・文化などの知識を身に付けてお客様の地域に対する関心を高めることができれば、今まで以上にリピーターを増やすことができるはずです。

今後の接客研修では、リピーターを増やすための仕組みづくりとして、地域の魅力を伝えられる能力にもスポットを当ててみようと考えています。

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『おもてなし接客術』⑯-おもてなしは自分磨きから

Posted on 2015-12-11

旬刊旅行新聞12月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑯です。
「おもてなしは自分磨きから」

おもてなし接客術⑯

おもてなし接客術⑯

先日旅館の求人ページ作成の仕事で、スタッフの皆さんにインタビューをしました。予約、フロント、仲居、調理場、売店などあらゆる部署のスタッフの方とお話をさせていただき、キャリアステップや先輩の声といったコンテンツを作成しています。お客様評価が非常に高く、リピーターも多い旅館様ですので当然かも知れませんが、仲居さんの会話スキルの高さに圧倒されました。さすがは、お客様と接する時間が長い部署だけあって、相当鍛えられているなといった印象を受けました。

こちらの意図を汲み取り、聞きたいことを先回りして話してくださる、そう感じる場面が多く、会話のキャッチボールがスムーズにできていることを実感しました。話をさせていただいてとても気持ちが良かったです。

このように心地良い気分にさせてくれる仲居さんたちが、普段どんな取り組みをしているかというと、『自分磨き』でした。とくにリピーターのお客様から指名が入る仲居さんは、並々ならぬ努力をしています。

最新の地域情報誌を常にバッグのなかに入れて持ち歩いていたり、旅番組を欠かさずチェックしていたり、担当するお客様がお住まいの観光地や特産品、ニュースについても調べるのが日課となっていました。

知識や情報を持っていないとお客様との会話が盛り上がれず、まさに会話のキャッチボールができないということを認識しており、なるべく話題を共有できるよう意識しているとのことでした。

このことは私の研修でも触れています。お客様とのコミュニケーションを、宿からの案内事項を伝えることやお客様の質問に答えること、と勘違いしているケースが多いためです。本来コミュニケーションとは、相互的なものであって、興味があるが故に成り立つものです。

そもそもお客様は皆さんの旅館に興味があるから泊りに行くのです。皆さんもお客様に興味を持つことで、初めてコミュニケーションを取ることができるのです。

自分の担当するお客様に興味を持って下調べすることこそ、相手のことを思って為すおもてなし接客です。

今回のインタビューを通じて改めて仲居という職業のレベルの高さと、遣り甲斐を感じています。個人的には、仲居業=究極のおもてなし業の1つと考えており、接客を極めたい方にとっては最高の職業だと考えています。

ただ、「おもてなし」がこれだけ取り上げられ、日本文化が見直されているにもかかわらず、仲居を目指す人たちが増えず、仲居のイメージがいつまでたっても良くならないのは非常に残念でなりません。外国人に価値を見出されて日本人が再認識するという日本の観光地で起きている現象が、仲居という職業にも当てはまればと期待する今日この頃です。

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『おもてなし接客術』⑮-おもてなしはタイミングが命

Posted on 2015-10-11

旬刊旅行新聞10月11日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑮です。
「おもてなしはタイミングが命」

おもてなし接客術⑮

先日、かねてより行きたかった寿司店「銀座久兵衛」さんに行きました。味もさることながら、最も印象的だったのは“板前さんの”おもてなしレベルの高さでした。久兵衛さんの接客の最前線は、板前さんです。注文を聞くのも飲み物への配慮もすべて板前さんが担当します。

私が足を運んだときも、カウンター内で寿司を握りながら常にお客様の動きに目を光らせていました。ちょっとした動きも見逃さずに、即座に仲居さんに指示を出していました。タイミングを逃さずに指示が出せるのは、寿司屋ならではの「符牒(ふちょう)」の為せる技です。符牒を活用して絶妙なタイミングでの接客が提供されていました。

私がはじめに冷たいお茶を注文して、その残りが少なくなってきたときに「温かいお茶と冷たいお茶とどちらになさいますか?」と聞かれたので、今度は温かいお茶を注文しました。お茶が手元に届いた後も、まだ熱そうで、少し蒸し暑かったので冷たいお茶を飲んでいると、板前さんが咄嗟に「冷たいお茶もお持ちしましょうか?」と声を掛けてくださり、何て気が利くのだろうと感心しました。その後すぐに符牒を使って仲居さんに指示を出し、間もなくして冷茶が運ばれてきました。

また、山葵焼酎を口にした隣の席の男性客が少しむせたところ、即座に仲居さんに水を持ってくるように符牒を使って指示する場面もありました。お客様のようすをしっかり観察しているが故に取れる行動です。私に冷茶を出すように指示するのも、隣の男性客にお水を出すように指示するのも、目の前で大きな声で言っていましたが、「○番に座っているお客さんに水1つ持ってきて」というストレートな表現とは違い、とても粋に聞こえます。

このような細かな気配りを寿司を握りながらできることに感心すると共に、その絶妙なタイミングには感服してしまいました。私の冷茶も、恐らく隣の男性に出されたお水も、少しでもタイミングが遅ければ「いえ、結構です」と答えていたと思います。久兵衛さんで符牒を使うのは、接客の内容だけでなく、タイミングも重視しているからこそでしょう。

久兵衛さんが多くのお客様に愛される理由が実感でき、改めて百聞は一見に如かずだと感じた経験でした。

私の定義する「思って為す」というおもてなしという面において究極を見た気がします。質だけでなく、タイミングにおいても改善を重ねて顧客満足度向上につなげていきたいものです。

※符牒…同業者内、仲間内でのみ通用する言葉、また売買の場や顧客が近くにいる現場などで使われる独特な言葉のこと。接客や作業をしているときに、符牒を使用することによって客に知られずに必要なコミュニケーションを行える。

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