連載コラム~おもてなし接客術~

おもてなし接客術⑤―おもてなしは部門間連携で

Posted on 2014-02-21

旬刊旅行新聞2月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』⑤です。
「おもてなしは部門間連携で」



先日、ある旅館の研修でグループワークを担当させていただきました。客室スタッフ(仲居)から予約、調理場、フロント、売店に至るまで、あらゆる部署から総勢80人近くのスタッフが、限られた時間のなかで、あるテーマについてグループごとに議論し、発表してもらうというものです。
 
テーマは「○○(旅館名)としてどうあるべきか」。壮大で漠然とした難しいテーマではあるものの、各自・各グループが真剣に考え抜き、素晴らしい発表を目の当たりにすることができました。
 
この際、キーワードになったのが「部門間の連携」。各グループで思い描くあるべき旅館の姿は異なるものの、「それを実現するためには?」というアプローチ手法として、ほとんどのグループが「部門間の連携」を挙げていました。
 
具体的には、顧客情報の伝達や知識の共有、頼み事の仕方など。顧客情報の伝達は、お客様に満足いただけるよう、予約からチェックアウトに至るまで淀みなくお客様の情報を部門間で共有していくということ。知識の共有については、料理や周辺観光についてなど、お客様が求める知識を付けておくということ。頼みごとの仕方は、物事を頼む際の言い回しを考えるというもの。「これやっておいて!」ではなく、「忙しいなか悪いけど、これをやっておいてもらえますか?」と言われた方が、気持ちよくスムーズに仕事ができ、結果お客様に迷惑をかけずに済むといった意見がでました。
 
このように「部門間の連携」と言っても、お客様に直接的に関わるものと間接的に関わるものとがあり、「なるほどなぁ」と、興味深く発表を聞いておりました。
 
お客様と直に接する部門を考えると、小売業の場合は会計スタッフだけということも少なくありませんが、旅館の場合は、予約スタッフから送迎スタッフ、フロントスタッフ、客室スタッフ(仲居)……と大勢のスタッフが関わっています。これだけ多くのスタッフが関わってお客様をお迎えする訳ですから、顧客満足を獲得するのは容易くないことが良くわかります。まさに「部門間の連携」無くしては、顧客満足は獲得できないのが旅館の接客です。
 
このことは旅行会社にも当てはまります。旅行は予約から移動、観光、滞在が一連の流れになっているので、予約の窓口となる旅行会社と航空・鉄道・バス会社、観光施設、ホテル・旅館が連携することで、はじめて1組のお客様をおもてなしすることができます。
 
旅行の利便性を高めて、旅行市場を活性化させるためにも、各会社間とお客様の情報がきちんと共有できているか、お客様に正確な情報が提供できているか、頼み方に配慮があるかなど、お客様をもてなす体制が整っているかを今一度チェックしていただきたいと思います。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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おもてなし接客術④―おもてなしの鮮度を保つ

Posted on 2014-01-21

旬刊旅行新聞1月21日に掲載されたコラム『おもてなし接客術』④です。
「おもてなしの鮮度を保つ」



旅館の仲居さん向けに研修をしていると、周辺の観光地について質問されたときにどこをお勧めしたらよいかわからないとの質問を多く受けます。
 
とくに、何度もお越しのリピーターの方からのご質問に困るそうです。その土地を初めて訪れるお客様には、いわゆる王道の観光地を紹介すれば良いのですが、何度もお越しになるお客様にはそういう訳にはいきません。
地域の話題のお店の紹介や、広域エリアの観光地の案内が求められます。
 
旅館に泊まるお客様のなかには、旅行中に行く観光地や食事場所、お土産を買う店についても調べて来る方もいます。また、なかには旅番組を見て思い立ち、番組で紹介されたのと同じルートを辿る方もいらっしゃいます。このように、旅館周辺の最新情報を得てから泊まりに来るお客様も多くいらっしゃるわけです。
 
そんななか、お客様が仲居さんに番組で紹介された観光地や、雑誌で取り上げられた話題の店について質問したときに、「最近TVも雑誌も見ませんので……」などと答えてしまってはお客様はがっかりしてしまいます。
 
仲居さんに限らず、旅館のスタッフは本来、お客様よりも周辺の最新情報に詳しくあるべきです。旅番組で地域が取り上げられる場合は、どの店の何が取り上げられたかを調べたり、地域のニュースや観光協会のWebサイトをチェックしたりして、最新情報をアップロードしてお客様に対応することこそおもてなしです。
 
先日私が覆面調査をした旅館の送迎スタッフは、道すがら「ここは最近○○(TV番組名)で○○さん(タレント名)が紹介して話題になったお店ですよ」とか「ここのプリンは○○(大手通販サイト)のスイーツ部門でランキング1位になったんです。女性のお客様に大変人気で、とても美味しいんですよ」と案内してくれました。とても良く勉強しているなと感心したのを覚えています。
 
朝礼などを実施している旅館さんは、そのときに地域の最新情報を皆で共有するのも良いかもしれません。
 
さらに言えばメディアで紹介された情報だけではなく、自分で行ってみた感想が添えられると良いでしょう。
近くに居るためいつでも行けると思うのが原因なのか、意外と近隣の観光地に行ったり、話題のお店の料理を食べたりしたことが無く、実際に足を運んだお客様の言葉を借りながら案内しているスタッフが多いようです。
「百聞は一見に如かず」。なるべく1度は足を運んだり、口にしたりして自分の言葉で具体的な案内ができるようにするのも大事なことです。
 
おもてなしも商品と同じように改良を重ねながら鮮度を保つことが求められます。日ごろから情報収集に励み、いつでも新鮮なおもてなしが提供できるよう心掛けていただきたいと思います。

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おもてなし接客術③-おもてなしは文面にも現る

Posted on 2013-12-11

旬刊旅行新聞12月11日・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』③です。
「おもてなしは文面にも現る」



「おもてなし」と聞くと、お茶(茶道)の世界を連想される方も少なくないかもしれません。茶の湯では、来客をもてなす「お茶事」というものがあり、お茶を楽しむための食事いわゆる懐石料理とお茶を客人に提供します。お茶事には客人をもてなす要素が随所に見られます。

客人を迎える側である亭主は、準備が整ったことを伝えるために、出入り口の戸を少し開けて手がかりを残します。客人が中に入って良いのかどうか迷わないように合図をしているのです。

これぞおもてなしです。客人に料理と茶でもてなすだけでなく、「なるべく気を遣わせないように」、というところにまで配慮がなされています。やはりおもてなしの精神は茶の湯から来ている部分が大きいようです。
 
さて、おもてなしというと目の前にいるお客様にするものと思われがちですが、このようにお客様が直接見えないところでもおもてなしは成立します。
 
クライアントの旅館では、お客様に送るハガキDM一枚一枚に女将と若女将が直筆メッセージを添えています。内容は「ご来館、お待ち申し上げております」といった類のもので、これといって特別なものではありません。ところが、直筆メッセージを添えずに送っていたころに比べると、反響が見違える程違うといいます。「こんなDMを貰ったのは初めてで、嬉しかったから泊まりに来ました」とおっしゃるお客様もいらっしゃったそうです。
 
毎日のように色々なお店から届くDMのなかで、いかに埋もれずに目にとめてもらえるか、そしてDMを受け取るお客様の立場に立って、どのようなDMを貰ったら嬉しいだろうと考えた末に至ったのが直筆のメッセージを添えるというおもてなしの実践でした。
 
別のエピソードですが、先日家族旅行で泊まる宿の手配をしたときのことです。予約後間もなくすると、宿から1通のメールが届きました。もちろん予約システムの自動返信メールとは別のものです。なんだろうと思って開いてみると、通り一遍のあいさつや定型文ではなく、私たち家族に向けた完全オリジナルのメッセージが書かれていたのです。旅行時期に合わせて「荷物の移動が多い年末ですので、事前に荷物を送られる場合は余裕を持っていただければと思います」といったものや、子供の食事について「普段好んで召し上がるものはございますか?」など。宿泊客一人ひとりにこのようなメールを送る宿側のお客様に対する姿勢を思うと、「旅行の計画を変えてでもここに泊まりたい!」と思わせる対応で、旅の滞在地が目的地に変わった瞬間でした。
 
接客中だけでなく、メールや電話、DMといったお客様とのコミュニケーションツールにも、おもてなしの要素を取り入れてお客様を虜にしてみてはいかがでしょうか。

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おもてなし接客術②-おもてなしとは備えること

Posted on 2013-11-21

旬刊旅行新聞11月21日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』②です。
「おもてなしとは備えること」

おもてなし接客術②

先日、間もなく1歳になる娘を連れて、都内にあるホテルのレストランに行きました。
レストランには事前に電話で、0歳児連れでも問題無いということを確認したうえで
予約を入れていました。

しかし、席に案内されるとベビーチェアはおろか、ソファー席もあるにもかかわらず
普通の椅子テーブル席に案内されました。

途中、お手洗いに行こうと思い席を立ちましたが、ホテル内は広く、
8㌔近くある子供を抱っこしながらの移動は一苦労。
なるべく無駄な動きをしないで済むように、自分で探すよりも聞いた方が早いと判断し、
出入り口近くにいたレストランの女性スタッフに聞くことにしました。

「ベビーチェアの付いた個室のあるお手洗いに行きたいのですが」と声をかけると、
そのスタッフは近くにいた上司のような風格の男性スタッフに、近くのお手洗いの場所を示しながら
「あちらのお手洗いってベビーチェアは付いていましたっけ?」と質問。
その男性スタッフも把握していないようで、「見に行ってみて」と指示を出しました。

その後、こちらに「ただいま確認いたしますので少々お待ち下さい」と、一言残して
そのままお手洗いに確認に行ってしまいました。

このとき、こちらは子供を抱っこしながら立ったままの状態です。
しばらくすると、そのスタッフが戻ってきて「あちらのお手洗いにございました。ご案内いたします」と
先導してくださいました。

老舗の一流ホテルのため期待が大きかったこともあるかもしれませんが、
まさかこのような対応を受けるとは思いませんでした。
0歳児が来ることは事前に分かっていたにもかかわらず、席への配慮もなければ、
ベビーチェアのあるお手洗いの場所すら確認していないのです。
挙句の果てには、お客様を立たせたまま待たせる対応には開いた口も塞がりませんでした。

もちろんお客は私だけではないですし特別扱いしてほしいというつもりはないのですが、
お客様のことを“思って為す”「おもてなし」はまったくできていないと評価せざるを得ません。

これだけ特徴的な客が来ても何も準備をできないのであれば、
一般的なお客様へのおもてなしなんて到底できていないのでしょう。

事前に0歳児連れのお客様がいらっしゃることが分かれば、「ベビーチェアは必要か」
「椅子席よりもソファー席の方が良いか」「オムツが変えられるお手洗いはどこか」など、
要望や質問を想定し、スタッフ全員で対応できるようそのときに備えることこそが「おもてなし」です。

このホテルは多くの外国人も迎えている有名ホテル。
「日本といえばおもてなしの国」が定着しつつある今日、このホテルの接客が日本のおもてなしと
認識されて良いものかと警鐘を鳴らしたい気持ちで一杯です。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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