連載コラム~おもてなし接客術~

おもてなし接客術③-おもてなしは文面にも現る

Posted on 2013-12-11

旬刊旅行新聞12月11日・21日合併号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』③です。
「おもてなしは文面にも現る」



「おもてなし」と聞くと、お茶(茶道)の世界を連想される方も少なくないかもしれません。茶の湯では、来客をもてなす「お茶事」というものがあり、お茶を楽しむための食事いわゆる懐石料理とお茶を客人に提供します。お茶事には客人をもてなす要素が随所に見られます。

客人を迎える側である亭主は、準備が整ったことを伝えるために、出入り口の戸を少し開けて手がかりを残します。客人が中に入って良いのかどうか迷わないように合図をしているのです。

これぞおもてなしです。客人に料理と茶でもてなすだけでなく、「なるべく気を遣わせないように」、というところにまで配慮がなされています。やはりおもてなしの精神は茶の湯から来ている部分が大きいようです。
 
さて、おもてなしというと目の前にいるお客様にするものと思われがちですが、このようにお客様が直接見えないところでもおもてなしは成立します。
 
クライアントの旅館では、お客様に送るハガキDM一枚一枚に女将と若女将が直筆メッセージを添えています。内容は「ご来館、お待ち申し上げております」といった類のもので、これといって特別なものではありません。ところが、直筆メッセージを添えずに送っていたころに比べると、反響が見違える程違うといいます。「こんなDMを貰ったのは初めてで、嬉しかったから泊まりに来ました」とおっしゃるお客様もいらっしゃったそうです。
 
毎日のように色々なお店から届くDMのなかで、いかに埋もれずに目にとめてもらえるか、そしてDMを受け取るお客様の立場に立って、どのようなDMを貰ったら嬉しいだろうと考えた末に至ったのが直筆のメッセージを添えるというおもてなしの実践でした。
 
別のエピソードですが、先日家族旅行で泊まる宿の手配をしたときのことです。予約後間もなくすると、宿から1通のメールが届きました。もちろん予約システムの自動返信メールとは別のものです。なんだろうと思って開いてみると、通り一遍のあいさつや定型文ではなく、私たち家族に向けた完全オリジナルのメッセージが書かれていたのです。旅行時期に合わせて「荷物の移動が多い年末ですので、事前に荷物を送られる場合は余裕を持っていただければと思います」といったものや、子供の食事について「普段好んで召し上がるものはございますか?」など。宿泊客一人ひとりにこのようなメールを送る宿側のお客様に対する姿勢を思うと、「旅行の計画を変えてでもここに泊まりたい!」と思わせる対応で、旅の滞在地が目的地に変わった瞬間でした。
 
接客中だけでなく、メールや電話、DMといったお客様とのコミュニケーションツールにも、おもてなしの要素を取り入れてお客様を虜にしてみてはいかがでしょうか。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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おもてなし接客術②-おもてなしとは備えること

Posted on 2013-11-21

旬刊旅行新聞11月21日号に掲載されたコラム『おもてなし接客術』②です。
「おもてなしとは備えること」

おもてなし接客術②

先日、間もなく1歳になる娘を連れて、都内にあるホテルのレストランに行きました。
レストランには事前に電話で、0歳児連れでも問題無いということを確認したうえで
予約を入れていました。

しかし、席に案内されるとベビーチェアはおろか、ソファー席もあるにもかかわらず
普通の椅子テーブル席に案内されました。

途中、お手洗いに行こうと思い席を立ちましたが、ホテル内は広く、
8㌔近くある子供を抱っこしながらの移動は一苦労。
なるべく無駄な動きをしないで済むように、自分で探すよりも聞いた方が早いと判断し、
出入り口近くにいたレストランの女性スタッフに聞くことにしました。

「ベビーチェアの付いた個室のあるお手洗いに行きたいのですが」と声をかけると、
そのスタッフは近くにいた上司のような風格の男性スタッフに、近くのお手洗いの場所を示しながら
「あちらのお手洗いってベビーチェアは付いていましたっけ?」と質問。
その男性スタッフも把握していないようで、「見に行ってみて」と指示を出しました。

その後、こちらに「ただいま確認いたしますので少々お待ち下さい」と、一言残して
そのままお手洗いに確認に行ってしまいました。

このとき、こちらは子供を抱っこしながら立ったままの状態です。
しばらくすると、そのスタッフが戻ってきて「あちらのお手洗いにございました。ご案内いたします」と
先導してくださいました。

老舗の一流ホテルのため期待が大きかったこともあるかもしれませんが、
まさかこのような対応を受けるとは思いませんでした。
0歳児が来ることは事前に分かっていたにもかかわらず、席への配慮もなければ、
ベビーチェアのあるお手洗いの場所すら確認していないのです。
挙句の果てには、お客様を立たせたまま待たせる対応には開いた口も塞がりませんでした。

もちろんお客は私だけではないですし特別扱いしてほしいというつもりはないのですが、
お客様のことを“思って為す”「おもてなし」はまったくできていないと評価せざるを得ません。

これだけ特徴的な客が来ても何も準備をできないのであれば、
一般的なお客様へのおもてなしなんて到底できていないのでしょう。

事前に0歳児連れのお客様がいらっしゃることが分かれば、「ベビーチェアは必要か」
「椅子席よりもソファー席の方が良いか」「オムツが変えられるお手洗いはどこか」など、
要望や質問を想定し、スタッフ全員で対応できるようそのときに備えることこそが「おもてなし」です。

このホテルは多くの外国人も迎えている有名ホテル。
「日本といえばおもてなしの国」が定着しつつある今日、このホテルの接客が日本のおもてなしと
認識されて良いものかと警鐘を鳴らしたい気持ちで一杯です。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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