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接客の良し悪しを判断するのは、コミュニケーションの出来・不出来

Posted on 2021-07-06

3月に新入社員研修を担当した旅館様で、3ヶ月後のフォロー研修を行いました。

研修をするにあたって、新入社員の皆さんに約3ヶ月間現場で働いてみての感想や課題等をヒアリングする事前アンケートを行ったところ、全員が全員、コミュニケーションに苦手意識があることが判りました。

具体的には、「話が続かない」、「話を盛り上げることができない」、「緊張してしまう」といった内容でした。

最近コミュニケーションの上達を謳った書籍が多数発刊されている理由が解る気がしました。

そこで今回の研修では、下記のような構成にしました。
1.社会人としての心構え
2.前回研修の振り返り
3.接客中のコミュニケーションについて理解する
4.コミュニケーションの実践
5.グループワーク
6.ロールプレイング研修

まずは、『スタッフ側から見る接客の良し悪し』と、『お客様から見る接客の良し悪し』のギャップを埋めるところから始めます。

特に新入社員の方は、詰まることなく案内ができたかとか、言葉遣い等を間違えなかったかとか、お客様をお待たせすることなく料理が提供できたか等、いかにスムーズ対応ができたかどうかに意識が行ってしまいがちですが、お客様側からすると、スムーズな対応は出来て当たり前。完璧にできたところで、当然マイナス評価にはならないけれども、プラスの評価にもならないものです。

お客様側からすると、接客の良し悪しを判断するにあたっては、気持ちの良い会話ができたかどうかの方が重要です。担当スタッフが基本接客や立ち居振る舞いが完璧にできているかというよりも、そのスタッフといかにコミュニケ―ション(会話)を楽しめたかにあります。

コミュニケーション上手になる為にはコツがあり、やり方さえ分かってしまえば比較的直ぐに結果が現れます。

現に、今回の研修にご参加いただいた新入社員の皆さんは、1日目は会話を組み立てるのに時間が掛かりいかにも苦手な様子でしたが、実践練習やロールプレイングを繰り返すうちに、みるみるうちに会話が上達していきました。
2日目の研修最後の仕上げの実践練習は、こちらから提示したテーマに沿って2分間会話を途切れさせずに続けるという課題を与えたものでしたが、2分が経過したことを伝えるタイマーの音が鳴っても、どのペアも会話を止めないくらいの盛り上がりで、非常に上達した様子が見られました。

コミュニケーションには受信側と発信側があり、旅館のスタッフはこの両方のスキルを上達させる必要があります。

少しだけ簡単に紹介すると、

まずは、【受信側】のポイントは、
1.お客様がとにかく気持ち良く話ができる環境を整える
2.お客様に興味・関心を見せる
3.受信するだけでなく発信もすること

次に、【発信側】のポイントは、
1.価値のある情報提供をする
2.お客様が喜ぶ情報か判断する
3.質問を良く理解し、正確な回答をすること

特に気を付けたい点を2つだけ紹介すると、
【受信側】の“3.受信するだけでなく発信もすること”は、受信だけで終わってしまうと、会話を拒否しているのと変わらないという点です。

例えば、お客様に「売店は何時から営業していますか?」と聞かれて、スタッフが「〇時からです」とだけ返すと、そこで会話が終わってしまい『この人は私と会話をしたくないのかな?』とさえ思われてしまいます。
これを「〇時からです」+「只今のお勧め商品は〇〇ですので、是非!」等と
受信に発信を付け加えると、話が途切ることなく続けることができます。

次に【発信側】の“3.質問を良く理解し、正確な回答をすること”は、質問を歪めて回答をしていないか?という点です。

例えば、お客様に「おすすめのお店はどこですか?」と聞かれているにも関わらず「当館から一番近いのは・・・」と質問を正しく受け止められていない方が結構います。「当館のおすすめは・・・」とお客様が欲しい情報を伝える様に意識することが必要です。

他にも、
・コミュニケーションを取りたがらないお客様の特徴
・コミュニケーションが盛り上がり過ぎた時に、会話を一旦終わらせる一言
・共通点が無い時にでも会話を続けられるコツ
等についても紹介しました。

こちらで紹介したのはごく一部ですが、このようにコミュニケーションを上達させるテクニックは沢山あります。

しかしながら、結局は知識・情報が無いと会話は弾まないというのが大前提にあります。テクニックを知っていても会話を続けるための知識や情報が無ければ、会話を広げることができません。
(反対に、知識や情報を沢山持っていれば会話の守備範囲が広くなり、自ら会話を展開したくなるものです。)

従って今回の研修では、コミュニケーションのテクニックと併せて知識と情報を習得する重要性も併せて紹介し、実践練習の中でも身に付けて頂きました。コミュニケーションの上達には、この点を肝に銘じた上で行うことが大切です。

お客様が接客の良し悪しを判断するのは、コミュニケーションの出来・不出来が大きく関わります。
コミュニケーション能力を磨いて接客評価を上げてみてはいかがでしょうか。

 

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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ワクチン接種後の旅行は、『安近短』から『高遠長』へ

Posted on 2021-06-22

高齢者の優先接種に続き、旅館業界でも職域接種の話を耳にするようになり、いよいよ身近にワクチン接種者済者がいる環境になりました。

先週は、高齢者が20名程集まって、屋外でマスクを着用したままグラウンドゴルフを楽しむ光景を目の当たりにして、徐々にかつての日常が戻りつつあることを実感しました。
恐らく皆さん1回目のワクチン接種が終えられたからのことでしょう。
※こちらのグラウンドゴルフを提供するご支援先の宿では、「このところ、 屋外で愉しめるグラウンドゴルフの予約の動きが良くなっています」と仰っ ていました。

今回の新型コロナウイルスが私達の生活をガラリと変えたように、今回のワクチン接種も私達の生活をガラリと元に戻してくれると期待されています。

例えば、マスクが不要になったり、大人数での会合やアルコールを含む飲食がOKになったり。
宿泊施設側の立場では、検温やアクリル板の設置、接客中の手袋が不要になったり、ビュッフェの再開等が挙げられます。

とはいえ、ワクチン接種の時期には個人差があり、ワクチンを接種したからと言ってすぐに元の生活に戻れるわけではありません。

一部のワクチン接種済者がマスクを外して旅館に泊まりに来て、ワクチン接種済か未接種かに関わらず、マスク着用主義者と揉めるのでは・・・?という場面が容易に想像でき、いまから懸念をしています。
その点、近所のスーパーでは動きが早く、「ワクチン接種済の方も引き続きマスクの着用をお願いいたします」というアナウンスを流していて感心しました。

ワクチン接種が進み、18歳以上の72%が少なくとも1回のワクチン接種を終えているという米・カリフォルニア州では、「新型コロナ関連の規制がほぼすべて撤廃され、経済活動が全面的に再開。ワクチン接種済者は、屋内でマスクをしなくて良い」。
というニュースがありましたが、日本で正式にマスク不要が告知されるのはい
つ頃になるのでしょうか。日に日にマスクが暑苦しく感じるここ最近の陽気で
は、待ち遠しくて堪りません。

さて、感染者拡大でGoToトラベルキャンペーンが一時停止してからというもの『安近短』の旅行需要が定着していますが、ワクチン接種が進むと『高遠長』の需要が一気に伸びることが予想されます。

■『安⇒高』へ
まずは『安⇒高』へのシフトですが、第一には旅行補助が再開し、1人あたりの消費単価が上がるという点です。

いまは地域によって域内の補助が出たり出なかったりとバラつきがありますが、ワクチン接種が順調に進んでまた全国一斉のGoToトラベルキャンペーンがスタートすれば、旅行にかけるお金が一気に増えます。

従来のルールに即して言えば、GoToトラベル事業は地域独自のものよりも補助額が大きくなる傾向にありますし、上限はあるものの宿泊料金に比例した補助が受けられるため、通常よりも高単価のプランが選ばれ易くなります。
各宿で不良在庫化している地域共通クーポンも再度使えるようになるでしょうから、ドリンクや売店等の付帯売上が増えることも期待できます。

宿泊中のお酒提供に制限がかかった地域も少なくなかったため、晴れて旅行が“解禁”された後の旅行では特にお酒が進むのではないでしょうか。

従って、売店やお酒のラインナップを充実させるのはいまから考えておきたいところです。

また、感染拡大予防のための制限や自粛も無くなるでしょうから、テーマパークやアミューズメント、アクティビティ系の観光施設も通常営業をするようになります。
宿泊とチケット料金をセットにしたプランも選ばれやすくなりますので、改めて商品企画をすることをお勧めします。

『安⇒高』へのシフトは、1組当たりの消費単価にも当てはまります。
コロナが始まってからというもの、高齢者への感染を危惧して帰省をしていない子や孫が大勢いて、ワクチン接種が済んだら今すぐにでも会いに行きたいという人は少なくありません。
感染のリスクが少なくなると、自ずと3世代旅行の大幅な需要増が期待できますので、3世代向けの商品企画も企画しておくのも良いでしょう。

■『近⇒遠』へ
次に、『近⇒遠』へのシフトですが、これまでは感染予防の為にマイカーで行けるところにしか旅行に行かないという旅行者が非常に多かったと思いますが、徐々に新幹線や飛行機を使った旅行に回帰し、旅行先の範囲が広がっていきます。

それもあっていまは多くの宿で、県内・隣接県向けの施策を中心に行っていることと思いますが、今後は徐々に宿泊客の発地が広域化していくことを視野に入れる必要があります。
具体的には、コロナがはじまってから狭域に留めていた広告やDMの送付先を、広域にすることです。

特に東京・大阪といった大都市圏では、緊急事態宣言がなかなか解除されず、
GoToトラベルの恩恵を最小限にしか受けられなかったり、これまで虐げられて
来ましたから、今度は東京・大阪在住の方を“ひいき”する商品企画も視野に
入れると良いかも知れません。

■『短⇒長』へ
最後に、『短⇒長』のシフトですが、先述のように目的地(旅行先)が離れれば離れる程旅行日数も伸びる傾向にあります。

また、これまでは「リフレッシュの為に1泊位なら許されるでしょう」という後ろめたい気持ちで旅行に出ていた人も、各種宣言が解除されれば、誰にとやかく言われる(という心理になる)ことも無くなり、2泊・3泊と滞在日数が増えていくはずです。

特に観光スポットが周辺にある宿では、1つの宿に連泊して観光に出かける人が多くなることが予想されます。
その際に、連泊向けの宿泊プランを用意しておくことも宿選びの1つのフックになるでしょう。


ワクチン接種が進んで行く中での旅行需要の回復が見込める時期には、上記のような『高遠長』を見据えた販売戦略に舵を切ることが求められます。

このように、近い将来、宿泊客が戻ってくることが前提で話ができるのは嬉しいものです。

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株式会社観光文化研究所 井川今日子

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ワクチン接種の高齢者からGotoキャンペーンの適用を!

Posted on 2021-06-07

先週伺っていたご支援先で、「ワクチン接種を受けたから…と宿泊予約を入れてくださる高齢者の方が増えました」という嬉しいニュースに触れました。

ここ数週間で新型コロナウイルスのワクチンの供給量が大幅に増え、各地で集団接種や大規模接種会場の創設が進み、65歳以上(=高齢者)の接種率が加速度的に増えています。

日本経済新聞の特設サイト
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/#firstIntakeStatusOfElderlyPeopleMap
によると、6月3日時点での国内のワクチン接種人数は1164万人で、全人口比の9.3%になりました。

高齢者に限って言えば、対象者3549万人のうち18.5%(656万人)が少なくとも1回の接種を完了しています。

地域別の高齢者接種割合を見ると、最も進んでいるのは和歌山県で32.6%、最も遅れているのは栃木県で11.7%という状況です。(恐らくは人口に対するワクチン接種のできる医療従事者の数の差が出ているのでしょう。)
なお、東京都は20.7%と5人に1人は接種ができているようです。

現時点で未接種の高齢者は2893万人いることになります。
また、現時点での1日あたりの接種回収は53万回ですので、いまの接種ペースで全高齢者が少なくとも1回目の接種を完了しようとすると、あと55日はかかる計算になり、ちょうど7月末頃になる見通しです。
(※高齢者に先行して接種が進んでいる医療従事者(480万人)の接種状況は、1回接種が99.7%、2回接種が69%ということですから、そちら側にもワクチン接種回数がいくことを考えると、高齢者が接種完了する時期は数日間遅くなることが考えられます。)

ところで、最近のニュースで、
「ハワイ州、ワクチン接種率7割超えで渡航制限撤廃へ PCR検査なく渡航可能に」
https://www.traicy.com/posts/20210605211131/
というものがありました。
ハワイ州知事が「ワクチン接種率が70%を超えた場合に渡航制限を撤廃する見通しを示した」というものです。

ハワイで新たに確認されている新型コロナウイルスの症例のうち99%が、ワクチン未接種者だというのですから、ワクチンの効果は絶大と言って良いのでしょう。

ちなみに同州では接種を促すために「ハワイアン航空の100万マイル」や、「高級車の1年間リース」、「ピザ1年食べ放題」等の賞品が当たるユニークな宝くじキャンペーンを始めたという事ですから、あまり接種をしたがらない州民が一定数いると推測できます。
現時点での日本では、高齢者に対してのみ接種予約を受付ており、接種したくても予約が取れないという状況ですが、仮に今後接種率が鈍化した地域等が出ればこのようなキャンペーンを打ち出すのも良い取り組みかも知れません。

さて、このハワイ州のワクチン接種率が7割を超えた時点で渡航制限を撤廃するという指標に則れば、日本もワクチン接種率が7割を超えた時点でGoToトラベル等の消費喚起策を再開しても良いことになります。
(ここではハワイ州と日本の人口差は敢えて度外視します)

日本の人口が1億2500万人ですから、その7割の8750万人が接種完了する時期を試算すると…
対象者は、8750万人から既に接種完了している1164万人を引いて7586万人となります。
この数字をいま現在の1日あたりの接種回数53万回で割ると143日後=約5ヶ月後と試算でき、11月頃には全国民の7割が少なくとも1回の接種を終えていることになります。

“接種率”を2回の接種と定義すると、途中の計算式は端折りますが、300日後=約10か月後となり、2022年3月頃には全国民の7割が2回の接種を終えているという計算になります。

(※あくまで計算上のペースで、ワクチン接種を拒む国民が一定数いることを踏まえると理想と現実には開きが出ることが予想されます)

上記を踏まえると、早くて11月、遅くても来年の3月頃には全ての都道府県で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、都道府県市区町村の行政レベルを越えた全国的な旅行補助制度、Gotoトラベルキャンペーンが再び活発になっているのでは?という予測が立ちます。

しかしながら、特に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けていて、域内の旅行補助が出ていないエリアではそんな頃まで待っていられないというのが本音だと思います。

そこで、日本では高齢者のワクチン接種が進んでいる為、地域にこだわらず、まずはワクチン接種をした65歳以上を対象にGoToトラベルを再開させるべきだと考えています。

厚生労働省のQ&A
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0069.html#:~:text=%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E5%BE%8C%E3%80%81%E6%8E%A5%E7%A8%AE%E3%82%92%E5%8F%97%E3%81%91,%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
によれば、

―――
Q.ワクチン接種の証明書は発行されますか。

A.接種後、接種を受けた日付・場所と接種したワクチンの情報が記載された 接種済証が発行されます。
 接種を受けた後、接種を受けた日付・場所と接種したワクチンの情報が記載 された接種済証が発行されます。この接種済証を見れば、いつ、どこで、ど のワクチンを接種したのかが分かります。
―――

という記載があり、紙ベースか何かの「ワクチンパスポート」が発行されているはずですので、接種歴の有無はこちらを証明書にすれば事足ります。

これまでも観光業界にとって、
高齢者は、
 ・時間がある
 ・平日に旅行をしてくれる
 ・マーケットボリュームがある
 ・旅慣れている
 ・お金がある
という5大特典を持った有難い客層でしたので、この客層が戻ってきてくれるだけでも業界にとって目に見える形で恩恵が現れます。

今後は行政区分に囚われず、年齢及びワクチン接種の有無を条件に、GoToトラベルをはじめ、イート、イベント等のGotoキャンペーンの補助を受けられるような柔軟な制度構築が、段階的かつ確実な経済回復を進めて行く上で重要な手段ではないでしょうか。

 

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~お客様評価を上げる近道~ 滞在中の顧客評価の収集

Posted on 2021-05-24


先般、宿泊先を選ぶ際に、絞り込んだ候補が2~3軒ありましたが、最終的にはクチコミの評価点や内容で泊まる宿を決めました。
その結果がどうであったかさておき、宿泊予約の際、宿のクチコミ評価が最後の一押しになるのは今も昔も変わりません。

恐らくは全ての宿が顧客評価を上げることに関心を持っていて、関心が高いからこそ、私の接客研修講師の依頼も絶えないのだろうと思います。

この顧客評価ですが、“滞在後”だけではなく、“滞在中”にも評価してもらうことができれば、最終的な評価を上げることができると考えています。

というのも、以前私の知人がとある宿に滞在している時に、リアルタイムで宿の感想を知らせてくれるということがありました。良い点も悪い点もあるのですが、良い点はともかく、悪い点はその場で宿に言えば「すぐに解消されるのに」という類のものばかりでした。
そのことを宿に伝えたかを聞いても、「特に聞かれもしなかったし、わざわざ言うのも面倒臭いし、言ったところで得することが無いから別に言わない」という回答があるのみでした。

部外者(私)の方がざっくばらんに意見を言えるし、クレーマーと思われるのが嫌という心理状況も働いているのだと思います。

滞在中の不満点がその場で解消されれば、お客様の満足度の下げ幅は最低限に留められるのですが、それができないが為に不満指数はどんどん大きくなり、顧客評価が最低にまで下がってしまいます。
そのタイミングで滞在後のアンケート評価を依頼されるので、自ずと評価点は下がるのは言うまでもありません。

滞在後だけではなく、滞在中にもアンケートが収集できると、宿側が即座に対処でき、お客様も今以上の満足度が得られるはずです。
接客が全て終わった滞在後のアンケートだけではなく、接客中にもアンケートをとれる様な仕組みを取り入れられれば、お客様は今以上の満足度が得られるものと考えられます。

とはいえ、滞在中にせっかくゆっくりなさっているお客様の目の前にアンケート用紙とペンを持っていき、「今までのご滞在に関するアンケートにご協力お願いいたします」というのは非現実的で全くお勧めしません。

それではどのように滞在中にお客様評価(特に不満点)を集めることができるでしょうか。
それはやはり接客を通して確認していく他ありません。

そもそもは不満を抱かせないようにすることが大事ですが、それがなかなか徹底できないのが現実だと思います。これは宿側の問題だけではなく、お客様の考え方や嗜好も大きく影響するためです。
しかしながら、接客トレーニングをしたり、オペレーションの見直しをするなどして不満を抱かせないようにする体制づくりが先決です。

それ以上に着目したいのが、「お客様が意見を言いやすい環境を整えられているか?」という点です。

お客様が不満を感じた時、例えば、特典にワンドリンクの記載があったのにワンドリンクが出てこない時のお客様の対応として、以下3つに分類できると考えます。

①すぐに言う(10%)
②どうなっているのだろう?と少し様子を見てから言う(30%)
③何も言わずに、提供されなかったという結果を迎えてから、滞在後にアンケートやクチコミに書く人(60%)

各属性の割合は私の感覚によるものですが、サイレントクレーマーの話に言及すれば、苦情を言う顧客の割合は僅か4%で、残りの96%の人は苦情を言わないという法則もあるので、②と③の比率はもっと高いかも知れません。

言わずもがなですが、①から③の順に満足度は低くなっていく傾向にあります。不満が解消されない時間が長ければ長い程、不満指数は上がっていきます。
この②+③の90%の人たちの不満をその場で吸い上げれば、不満指数を下げ満足度を下げないようにできるはずです。

ここで、皆さんの(宿のスタッフの)接客を振り返っていただきたいのですが、
1.宿や料理の説明を一通りして終わる ⇒ ×
2.宿や料理の説明を一通りして、不明点が無いか確認する ⇒ △
3.宿や料理の説明を一通りして、不明点が無いか確認する、都度感想を聞く⇒〇

3.の対応ができて初めて、お客様が意見を言いやすい環境が整えられていると言えます。
私の知人が言ったように、お客様は「聞かれなければ言わない」のが普通です。

例えば、旅館の夕食のタイミングでお客様に
「お部屋ではお寛ぎいただけましたか?至らない点はございませんでしたで しょうか?」
「お風呂は入られましたか?お湯加減いかがでしたか?」
等とスタッフ側から聞けば、お客様が意見・不満を言い易い環境を作ることができます。
対して、ただ料理のことだけを説明しているスタッフに、お客様が自ら部屋や風呂の意見・不満を述べるのは相当ハードルが高いでしょう。

多少の会話のテクニックが求められるものの、このように接客中にお客様の意見・不満を吸い上げやすい仕組み作りをすれば顧客評価を収集することができます。

しかしながら、収集だけでは不十分です。
大切なのはお客様から頂いた意見・不満を即座に対応する体制まで整えてこそ、価値が生まれ、顧客評価向上という成果に結び付けることができます。

意見・不満に即座に対応する体制が整わないのであれば、今まで通り事後アンケートだけにしていた方がまだマシです。
なぜなら、不満を言ったお客様はもちろん即座に対応いただけることを期待しています。
それがチェックアウトの時間になっても善処されなければ、当初の不満に加えて「わざわざ不満を伝えたのに無視された」という不満も加わり、不満指数は倍増してしまい、かえって顧客評価が悪くなります。

また、お客様の不満を吸い上げるのと併せて、既に頂いた(過去の)クレームを活用しながら不満を未然に防ぐ取り組みも効果的です。

例えば「貸切風呂の温度が熱すぎて入れなかった」とクレームがあった場合、その後貸切風呂をご利用になるお客様には、「ご利用の際には是非一度浴衣のまま浴槽の温度をご確認頂けますでしょうか。熱い・ぬるい等がありましたらお知らせください。直ぐに調整に伺います」と声を掛けるといった具合です。

このように既存のクレームを活用した声掛けひとつでも、お客様が意見を言い易い環境を整えることができ、不満を未然に防ぐことに繋がります。

滞在中の顧客評価の収集こそが、最終的なお客様評価を上げる近道となります。

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緊急事態宣言等、お客様都合だけではないキャンセル料の徴収について

Posted on 2021-05-11

連休前に3回目の緊急事態宣言が発令され、それに伴う予約の鈍化やキャンセル被害も少なくなかったと思います。

その際に、「緊急事態宣言が出たから…」「まん延防止措置が出たから…」という理由でキャンセルをするお客様も多かったのではないでしょうか。

年末年始と違い、今回は国がキャンセル料を補填するという動きは無かったのですから、規定のキャンセル料をお支払い頂くのが然るべき対応ですが「このような時期だから仕方無い」と鼻からキャンセル料の徴収を諦めている宿泊施設が多いのが実情です。

このように宿泊施設によってキャンセル料を取る・取らないのバラつきがあるのは、以前より懸念している問題です。
お客様側に「A旅館では取られなかったのに、おたくのB旅館では取るのか?信じられない!」という、キャンセル料を支払わない言い訳の材料になってしまう為です。
しかしながら、例えばA旅館の企業方針や企業努力と言われてしまえばそれまでですので、第三者がとやかく言える問題ではない面でもあります。

少し話は反れますが、コロナ以前にもキャンセル料徴収の問題で、身内の不幸や怪我・病気を理由に「当然キャンセル料は支払わなくて良いですよね?」という姿勢を示された時は、多くの航空会社や旅行会社がそうしているように、死亡診断書や医師による診断書のコピーを提出頂くことを条件とする必要があると考えています。

死亡診断書や医師による診断書のコピーを提出頂いて、初めてキャンセル料の免除や一定期間内の日付の変更を提示するべきです。
本当に身内の不幸や怪我・病気を理由としたキャンセルである場合は、当該書類を提出するのは容易いでしょうし、それを面倒と思うようであれば、そもそもキャンセル料を支払う姿勢を見せるでしょう。

そうでないと、本当かどうかも判断できない中でキャンセル料を免除してしまうこととなり「身内の不幸とでも言っておけばキャンセル料を払わなくて済むだろう」という悪質な客の思う壺になってしまいます。

航空会社や旅行会社と比較すると、宿泊施設の対応は“緩い”ため、利用者に甘く見られてしまっても仕方が無い状況を作り出してしまっています。

話を戻すと、同じ条件下でも宿泊施設ごとにキャンセル料の支払いが必要か不要かというのは各企業の方針ですのでこれ以上とやかく言うつもりはありません。
それ以上に問題視し無ければならないのは、同じ宿泊施設であるにも関わらず、対応するスタッフによって結果が異なるという状況を生んでしまっていないかという点です。
とにかくお客様と揉めるのが嫌、というスタッフが勝手にキャンセル料を免除してしまってキャンセル料取り損ねるという事態も生んでしまいます。

お客様都合のキャンセルであれば、どのスタッフが対応しても基本的には宿が定めたキャンセル料を請求するだけなので問題ないですが、お客様都合だけではないキャンセルの場合は正規のキャンセル料を請求するべきかどうか毎回悩むのではないでしょうか。

例えば、緊急事態宣言を理由に宿泊前日にキャンセルを希望するお客様に対し、スタッフAさんが対応すると、キャンセル料を全額免除になる一方で、スタッフBさんが対応すると、キャンセル料が一部免除となる。スタッフCさんが対応すると、キャンセル料を全額徴収される。

こういった状況が一番まずいのは言うまでもありません。
電話口にどのスタッフがでるかでお客様の負担が決まる一種のロシアンルーレット状態になってしまいます。

また、キャンセル料を徴収するかどうかは、“お客様に払う姿勢があるかどうか”によって決めるという心理戦や感情論を伴うことが多いというのも実情です。

キャンセル料が発生している期間のキャンセルの連絡があった場合、お客様側から「キャンセル料の支払いはどのようにしたらよいですか?」と言われると、
・宿側で良い(旅館に対して好意的な)お客様
 ⇒是非来てもらって、リピーターになってもらいたい!
と判断して、「今回は結構ですのでまた是非日を改めていらしてください」という会話になるといいます。

反対に、「キャンセルの理由を延々と説明して、こんな理由なんだからキャンセル料は取るはずないですよね?」というスタンスの方には、
・宿側で好ましくない(旅館に対して敵対的な)お客様
 ⇒来てもらってもトラブルになる可能性が高く、来てもらわなくても結構!
と判断して、なんとしてもキャンセル料を徴収しようという姿勢で臨みます。

個人的には、このようなお客様の姿勢次第で対応を変えるというのは1つの策戦であって、大いに結構だと考えております。

とはいえまずは、緊急事態宣言のようなお客様都合だけでない場合のキャンセルに対して、まずはどのような初期対応を取るのかを社内でルール決めすることが大切です。
キャンセル理由はお客様によって微妙に異なりますので、最終的には支配人や経営陣の判断を仰ぐことになるかと思いますが、キャンセルの連絡があったときの第一声を揃えておくことに意味があります。

「かしこまりました。それでは事情が事情ですので今回のキャンセル料につき ましては特別に免除とさせていただきます」
にするのか
「かしこまりました。大変申し訳ないのですが、キャンセル料は規定通りご請 求申し上げます。ただし、そのキャンセル料は預かり金の格好とし、宿泊日 から半年間の有効期限で、次回ご利用の際のご宿泊料金に充当させていただ きます」
にするのかという点です。

新規かリピーターのお客様かで対応を変えるのも大いにありだと思います。

余談ですが、カップル利用が多いケースでは、「一緒に行こうと思っていた相手と破局してしまったため行けなくなりました。その場合でもキャンセル料を取られますか?」と食い下がるお客様もいると聞きます。
当然キャンセル料は取るにしろ、どのような声掛けをするべきかという文言は決めておいて損はないと思います。

このように想定されるルールを決めておくと対応するスタッフも判断が楽になりますし、スタッフの勝手な判断や失礼な対応を未然に防ぐことに繋がります。

コロナ以前のように安心して旅行ができる体制が整うにはまだしばらく時間が掛かりそうですので、キャンセル対応の見直し・ルール化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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